Webブランド戦略、Webコミュニケーションの役割を考える(2)
2003.07.18
Webブランディングのメリット、ブランド構築のためのWebサイトの指針
「誰もいない森で木が倒れました。音はしたでしょうか?」 人は自分の興味のない情報に対して意識はしません。消費者はそれぞれ基盤となる知識ベースも異なれば、興味や関心を抱く対象も異なるでしょう。他のメディアでは困難であっても、パーソナライズした情報の発信が可能なWebサイトであれば、それぞれ違った知識ベースをもつ人たちに対して各々が興味を抱くコミュニケーションを提供することが可能です。このことがブランディングにおいて、Webサイトでのコミュニケーションを中軸に据えるメリットです。WebブランディングにおけるWebサイトの役割は、他のコミュニケーションとのシナジー効果も利用しながら、いろんな人々がそれぞれ異なる道筋を通った場合でも、いずれもブランドへとたどり着く連想のネットワークを構築することです。言うなれば、消費者の頭の中に構築したいブランド連想のネットワークのいくつかの形を、あらかじめWebサイトという情報アーキテクチャーとして構築しておくのです。
また、ブランド論の第一人者であるデービッド・A・アーカーは、Webサイトを有効なブランド構築ツールとして活用するためのガイドラインとして、以下の5つをあげています(『ブランド・リーダーシップ 「見えない企業資産」の構築』、ダイヤモンド社)。
- 肯定的な経験をつくり出す
利用が容易であること/訪れるべき理由として、有益な価値が提供されていること/Webの特性を活かしたインタラクティブで、パーソナル化されており、タイムリーであること - ブランドを反映し、支援する
ブランドの世界を反映し、ブランド連想を構築する情報の提供を容易に行なえること - 他のコミュニケーション・プログラムとのシナジー効果を生み出す
複数のメディアを通じてのコミュニケーションにシナジー効果を生み出し、ブランド・メッセージを統合する手段として非常に有効 - ロイヤルティの高い顧客のための拠点を提供する
ロイヤルティの高い顧客グループとの関係を支援し、育んでいく場の提供 - サブブランド化された強力コンテンツによって差別化する
Webサイト自体がサブ・ブランドの役割を果たし、便益、機能、サービス、ブランド要素を開発すること
Webブランディング実行までの基本的な流れ
とは言え、Webサイトだけの個別のコミュニケーションを考えたのではブランディングはうまくいきません。あくまで中長期的な視点に立ったブランド戦略の中で、統合的なブランド・コミュニケーションを設計、実行するということが、今回のWebブランディングの主旨です。Webブランディング実行までの流れをまとめると図のようになります。
Webブランディング実行までの流れ
〜ブランド・アイデンティティの策定からコミュニケーションの実行まで〜(GIF画像、22KB)
顧客の期待を知り、顧客の期待を超える
それでは、実際のWebブランディングを行なうにあたって何から始めればいいのでしょうか? 基本的には上図で示したとおり、顧客を中心に現状のブランド知識(ブランドの認知、ブランドへの期待、ブランドに見出している価値など)を把握することから始めるべきです。その際、伝統的なマーケティング調査(アンケート、インタビューなど)を行なうこともひとつの手です。ただ、それはすでにある程度の認知を得ているブランドの場合には有効ですが、ブランドが市場で認知を確立できていないような場合には賢明なやり方であるとはいえません。その場合、むしろ、調査対象は社内や関係者に限って、まずは「仮説としてのブランド・アイデンティティ」(=ブランドのあるべき姿)を策定した上で、その効果を検証する目的で実際にコミュニケーションを実行することも有効かと考えます。まずは先に顧客にこちらの手の内を知ってもらって、それに対する反応を見るわけです。評価の視点がひとつに定まれば、現実と理想とする姿のギャップを測ることは比較的容易なことです。私たちが日ごろ、問題解決のための思考プロセスとして活用しているシックシグマのDMAIC手法でも、最初にあるのは定義すること(Define)と測定すること(Measure)です。巨額な広告費を検証につかうことは不可能でも、Webでなら検証を目的とした投資を行なうにしてもコストははるかに小さく抑えられるでしょう。最初から無作為に大きく始めてしまうのではなく、手探りの感覚を持ちながらまずは小さな一歩を踏み出すことが得策なのです。
何より重要なことは、いち早く顧客の期待を知ることです。しかし、ブランドを供給する側のアクションがなければ、顧客の期待など存在するはずもありません。中長期的なブランド戦略の根幹を成すブランド・アイデンティティを策定するとなると、どこから手をつけていいのかわからず及び腰になり、結局、いつまでたっても何もはじめられないということもあるかと思います。ですが、行動できないのは、問題を必要以上に大きく捉え、肝心なところを押さえられていないからです。行動を起こすためには、まずできることから効果的にはじめることが重要だと私は考えます。ポイントは、可能なら何をやってもいいというのではなく、明確な効果が得られるところからはじめることです。目的を明確にした計画のもとで、きちんと効果検証とコントロールを行なえば、たいていのことは前に進むはずです。ブランディングにおいて重要な「顧客の期待を知り、顧客の期待を超える」ということは、実は「卵が先かニワトリが先か」といった問題だったりします。であれば、どちらが先かと答えの出ない問いを続けるより、まずは卵を産んでみることです。はじめに産む卵として、Webコミュニケーションは非常に適したものです。そこに集まる小さな声や足跡のひとつひとつを大切にして、顧客の期待を想像することこそが、本格的なブランド構築活動の始まりとなるでしょう。
さあ、さっそくWebブランディングを始めてみませんか?
