アクセシビリティ、学校で教わったことがありますか?

アクセシビリティ・エンジニア 小出

6月も終わりに近づき、新卒入社の方々もだいぶ社会人として慣れてきたころでしょうか。 当アクセシビリティ部にも待望の新しいメンバーを迎え、新しい体制で第1四半期を終わろうとしています。 ランチの折、ダイレクトに新メンバーに「うちに配属って聞いてどうだった?」と聞いてみたところ、 「アクセシビリティ部ってどんな業務をやっているかイメージがあまりわかなかった」 「同期で業務の話をすることもあるけれども、説明が難しい」 「(WCAGやHTML仕様書が難解で)何を言っているんだろうと思うことがある」 と思わず頷くコメントが返ってきました。 新卒向け研修で、アクセシビリティについての説明や入門編的演習が行われているのですが、やはり今までにほとんどなじみがなかったので、戸惑いのほうがまだまだ大きいとも言っていました。

説明が難しい、というのは私も常々思うところです。 「誰もが使いたいときに等しく使える」のが自然だよね、というシンプルな話ではあるのですが、概念や規格内容を誤解なく正確に伝えることはとても難しいのです。 平易な表現を使ってみたり、いろいろ噛み砕いて説明しますが、言葉として通じても「リアルな体験」ではないのでどこかぽわんとした受け止め方で終わってしまう、肝心な概念のまわりをうろうろしていてなかなか実像が掴めない、相手の方がそんな印象を持たれていることが多いように感じています。 新メンバーは「そもそも『アクセシビリティ』という言葉を知っていたひとがあまり...」とも言っていて、Web業界を志望する若い方たちからも認知度が高くないという現実が窺い知れます。

確かに、「よいサイト」を作るために必須とされる内容で語られるものは、コーディングやデザインといった技術やセンスについてが中心です。 どのくらいアクセシビリティに関する講義は行われているのでしょう? 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の改正(平成23年施行)で大学などのシラバスの公開が事実上義務化されていますので、比較的よくある名称を使ってたいへんざっくりと検索をかけてみると、次のような結果が返ってきます。

  • ウェブデザイン シラバス(約 55,100 件)
  • ウェブデザイン シラバス アクセシビリティ(約 1,190 件) 完全一致は約210件です。

  • Webデザイン演習 シラバス(約 147,000 件)

  • Webデザイン演習 シラバス アクセシビリティ(約 2,240 件) 完全一致は約170件です。

ううん。唸りますね。少し範囲を広げてみます。

  • 情報 シラバス アクセシビリティ(約 9,710 件) 完全一致は約130件です。

これは本当にただの検索数でしかありませんのでなんの根拠にもなっていませんが、それでも予想より少ない数が返ってきたことに驚きました。学部やコースが違ったり必修単位かどうか、そもそも現在開講されているかなども考えると、Webを学ぶ中でアクセシビリティを知る機会はかなり限定的といえる現状のようです。

一方で、九州大学で高年次基幹教育「アクセシビリティマネジメント研究」や、八洲学園大学での「情報アクセシビリティとバリアフリーデザイン」の公開講座など、多方面と連携を取りより広い視野でアクセシビリティを学ぶ動きが徐々に増えていると感じられます。

今までは社会人に向けてばかりアクセシビリティの普及を考えてきましたが、教育の場での動きにも注視していきたいと思います。