海外Webトレンド「BC Thinking」日本語版
英国企業サイトのコンサル会社Bowen Craggs & Co.の許諾を得て、同社Webサイトの「Our Thinking」から抜粋し、グローバルWebサイト事例に関する記事を翻訳してお届けします。
ミツエーリンクスではBowen Craggs社と提携し「グローバルWebサイトベストプラクティス調査」サービスもご提供しています。
デジタル年次報告書の公開における最新ベストプラクティス
特別な編集コンテンツから、CEOの発言をまとめた動画まで。本体の企業サイトと統合するべきかどうかという問題はいったん脇に置き、デジタル年次報告書の革新ともいえる、最良の事例を4つご紹介します。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年9月21日に公開された記事「The latest best practice in presenting digital annual reports」の日本語訳です)
近年、企業はデジタル版の年次報告書について、投資家向けカテゴリーに統合したり、別の特設サイトを構築したりと、ますます多くの時間と費用をかけるケースが増えています。Bowen Craggsでは原則として、相乗効果が期待できることから、可能な限り年次報告書を本体サイトに統合することを勧めています。しかし、本体サイトでは実現できないような、目を引くビジュアルや雑誌のような雰囲気を、別サイトであれば表現できる、というメリットを享受できる企業もあります。この記事では、掲載場所に関わらず、投資家向けに優れたデジタル年次報告書コンテンツにフォーカスします。
以下は、特別な編集コンテンツ、CEOの発言をまとめた動画など、年次報告書を革新する4つの好例です。
bp
イギリスのエネルギー大手bpは、「投資家カテゴリー」と年次報告書を緊密に統合しています。「戦略」「ビジネスモデル」「役員報酬」「主要ダウンロード」の4つのカテゴリーに分け、報告書のメインエリアではインフォグラフィックと抽出した統計データを使って強調しています。すべての情報を集中することで、情報の断片化を抑え、訪問者が読みやすくて理解しやすいようにしています。また、報告書のPDF部分やサイト内にある関連資料への、戦略的なリンクも設置しています。
BASF
ドイツの化学大手BASFは、年次報告書を専用サイトで提示することを選択しました。そして、印象的なビジュアル要素を使用したり、「コーポレートガバナンス」「財務諸表」などのカテゴリーを含めたりしています。雑誌のような雰囲気のトップページで「輝かしい会社概要」を提示し、取締役会長の動画メッセージを含む、印象的なコンテンツを際立たせています。年次報告書の専用サイトにある唯一の欠点は、本体サイトからの分断です。分断により、本体サイトの会社概要にある重要な情報に直接アクセスできません (「コーポレートガバナンス」への明確なリンクはあります)。
Hugo Boss
ドイツのファッション・ブランドHugo Bossは、専用サイトで魅力的な年次報告書を公開しています。そこで新たに「Powerful Stories」というカテゴリーを設けているのですが、これは年次報告書を基にした、コンテンツの革新的な生成方法です。「Powerful Stories」を構成する「Powerful Brands」から「Powerful People」までの4つのサブカテゴリーでは、印象的なループ動画や写真(特に従業員の場合)を用いたストーリーを展開しています。このようにクリエイティブな方法で、さらなるインサイトと関連する年次報告書の「章」へのリンクを提供しています。
P&G
アメリカの日用品大手P&Gの年次報告書はユーザビリティに優れていて、本体サイトの主要なラベルや企業情報は、訪問者がレポートを読みながら参照できるようにしています。特に優れているのは、レポートから重要な統計情報を動的で読みやすい方法で引き出した、インフォグラフィックです。優れたHTML情報と「Our Impact」カテゴリーを照らし合わせることができるため、サステナビリティ・アナリストにとって役立つことでしょう。インフォグラフィックを、PDF から本体サイトに転載するのを怠る企業もある中で、P&Gの洗練されたアプローチは、年次報告書の業績データを最大限に活用しています。
Aviva: LinkedInで福利厚生の効果を伝える
英国の保険大手Avivaは、休みが終わり子どもたちが学校に戻る時期に合わせて、同社の公式LinkedInアカウントにユニークな動画を投稿しました。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年9月12日に公開された記事「Communicating the real-world impact of an employee benefit on LinkedIn」の日本語訳です)
この1分間の動画では、子どもの入学時に半日休暇を親に与えるというAvivaの制度が、個人的にポジティブな影響を与えたことについて、従業員が語っています。
「私は楽しみにしていますが、それと同じくらい恐怖と不安があります」と彼女は話します。「一方で、娘のダーシーはすっかり準備万端です」。
ほかにも彼女は、この制度は小学校入学時と中学校入学時に利用できることを紹介し、娘を学校に迎えに行ったあと、午後の休暇をどのように一緒に過ごすかについて語りました。
スマートフォンを使ってオフィスで撮影されたこの動画は、タイムリーで、カジュアルで親しみやすく、制作費もかかっていません。
これは、社内のコミュニケーションに役立つだけではなく、Avivaがどのような職場か知りたい求職者に会社をアピールする効果もあります。
この動画は、箇条書きのリストで構成された一般的な企業のWebページよりも、Avivaの福利厚生のメリットをうまく紹介しています。
動画でBank of Americaの成長戦略に賛同を示す
世界有数の金融機関であるBank of Americaは、Webサイトの投資家向けカテゴリーに、取締役会の各メンバーが成長戦略を称賛する動画※を掲載
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年8月7日に公開された記事「On board with the strategy at Bank of America」の日本語訳です)
この6分間の動画では、Bank of Americaの「責任ある成長戦略」におけるさまざまな側面について、14人の取締役たちが議論しているように、巧みに編集されています。Brian Moynihan取締役会長兼CEOは動画の冒頭で、戦略の4つの側面である「growth without excuses (成長重視)」「Customer-focus (顧客中心)」「staying within risk parameters (リスク範囲内の経営)」「being sustainable (サステナビリティ)」について概説しています。
また、取締役の中には、メッセージを補足したり、4つある側面のうちの1つを詳細に掘り下げたりする人もいます。例えば、大手コンサル会社Deloitteの元会長で、現在は監査委員会議長であるSharon Allenは、「どんな犠牲を払ってでも成長する、ということではありません。私たちは、本当に正しい経営をすることに集中しています」と話しています。そして、報酬・人的資本委員会委員長で、College Futures Foundation のCEOであるMonica Lozanoは、「顧客との関係を深めることで、成長を促進します」とコメントしています。
通常、動画に出演するのは会長かCEOだけというケースが多く、取締役全員が投資家向け動画に参加するのはまれです。これは取締役全員が団結し、自社の戦略に対して連帯責任を負っていることを示すための効果的な方法だといえます。
Bank of Americaの「責任ある成長戦略」については、同行Webサイトの別ページで詳しく説明していますが、この動画はそのメッセージをより身近にし、より大きなインパクトを与えています。
Bank of Americaの取締役会は、豊富な経験と人種や性別における多様性を持つ印象的な存在です。この動画を通じて、そのことを投資家に示しています。さらに、近年のアメリカで強まっている環境・社会・ガバナンス(ESG)への反発を考慮しますと、この動画は政治家に対しても、取締役会全体が戦略のサステナビリティの側面を支持していることを伝えています。
動画はフォーマルな形式で、アメリカ大統領選挙のキャンペーン動画の雰囲気に似ています。このような動画は、求職者や顧客など他のステークホルダーにはあまり適していませんが、アメリカ国内の投資家たちには、適切に訴求するでしょう。
- ※ 2024年2月現在、文中で紹介した動画は掲載を終了しています。
企業コミュニケーションにおける「ピンクウォッシング」を乗り越える
企業のコミュニケーション・チームが「ピンクウォッシング」と非難されるのを回避する方法
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年7月7日に公開された記事「Navigating Pinkwashing in Corporate Communications」の日本語訳です)
企業のコミュニケーション・チームは、グリーンウォッシングのリスクをよく知っていると思いますが、毎年6月のLGBTQ+の権利を啓発する活動が世界中で行われるプライド月間には、ピンクウォッシングという顕著な問題に直面することでしょう。
「ピンクウォッシング」とは、企業がLGBTQ+に配慮しているかのように装いながら、実際は有意義な貢献をすることなく、マーケティングの機会として利用することを指します。「レインボーウォッシング」や「ピンクキャピタリズム」とも呼ばれます。
LGBTQ+ コミュニティーに対する企業のコミットメント、もしくはその欠如は、企業の Web サイト、公式 SNS アカウントなどのオンラインコミュニケーションで確認できます。それは、企業が環境配慮を装いながら、実際は有意義な貢献をせず、利益だけを得ようとする「グリーンウォッシング」と同じです。
第三者などの調査によって、反LGBTQ+法案を支持する議員への金銭的支援が明らかになることがあり、それが企業の主張と矛盾していた場合には論争に発展します。一方で、企業がLGBTQ+への支持を表明しますと、反対派からの批判につながる可能性があります。
このデリケートな状況を乗り切るために、企業のコミュニケーション担当者は、バランスを維持しなくてはなりません。言い過ぎてしまうとボイコットのリスクがあり、発言が少な過ぎると「気遣いがない」と非難される可能性があるからです。ここでは、適切なバランスを見つけるために、企業のコミュニケーション担当者が覚えておくべき3つのことを紹介します。
1. 主張を裏付ける
ピンクウォッシングの疑惑を晴らす、もしくは対処するためには、LGBTQ+グループやその取り組みへの寄付やサポートなどに関する、透明性のある情報を提供することが極めて重要です。
LGBTQ+コミュニティーを支援するための社内外の取り組みを、透明性をもって紹介しましょう。例えば、従業員のプロフィールや体験談などで、社内のインクルージョンを示す取り組みを強調する方法があります。また、LGBTQ+団体への寄付など、継続的な支援や活動を紹介する専用ページをWebサイト上に設けることも検討しましょう。
Accenture - インクルージョンとダイバーシティーをリードする
総合コンサルティング大手Accentureは、同社Webサイトの「About」カテゴリーにある「Diversity and Inclusion」という専用ページで優れた模範を示しています。
このセクションは、インクルージョンとダイバーシティーを踏まえ、さまざまな問題を取り上げています。例えば、LGBTQI+セクションでは、動画、引用、パートナーシップや受賞歴に関する情報、従業員のプロフィール、LGBTQI+コミュニティーに有益な影響をもたらすプロジェクトなど、魅力的なコンテンツを公開しています。このサブカテゴリーのコンテンツは、プライド月間だけではなく、年間を通じてアクティブに更新されています。
American Express - LGBTQ+の顧客にスポットライトを当てる
アメリカのカード会社American Expressは、LGBTQ+の中小企業経営者や助成金受給者のストーリーを紹介する専用ページを設け、独創的で魅力的なアプローチを採用しています。このプラットフォームは、LGBTQ+コミュニティーの声を届け、より多くの人に認知させることで、単なるマーケティング以上の支援を示しています。
2. 一貫性を保つか、透明性を優先するか
アメリカの小売大手Targetや、ビールブランドBud Lightが、反対派の批判を受けてプライドキャンペーンを撤回した事例は、論争をオープンに対処することの重要性を強調しています。批判を恐れて最小限の支援しかできない場合でも、一貫性を保つことが重要です。企業は自らの行動を説明したり、追加情報を提供したり、批判を受けても持続的な努力を紹介する機会として、デジタルプレゼンスを活用したほうが良いでしょう。
The North Face - キャンペーンにおける毅然とした態度
アウトドア製品メーカーThe North Faceもまた、「Summer of Pride」キャンペーンで、活動家のPattie Goniaと提携したことで批判を受けました。しかし、投稿を削除したり、支援を取りやめたりはせず、毅然とした態度で臨みました。The North faceの広報担当者は「The North Faceは常に、アウトドアがすべての人に歓迎され、公平で安全な場所であるべきだと考えています」と、ニュース紙Newsweek誌に確固としたメッセージを伝えました。この声明は、The North faceのデジタル・プラットフォームでは確認できませんでしたが、LGBTQ+コミュニティーへの支援に対する認識に大きな影響を与え、批判に耐えたことで称賛を集めました。
The LA Dodgers - 注意深く耳を傾けて、オープンにコミュニケーションする
アメリカのプロ野球チーム Los Angeles Dodgersは、プライド月間中にLGBTQ+のコミュニティーに積極的に耳を傾けることで、素晴らしい模範を示しました。
当初、Los Angeles Dodgersは毎年恒例のプライドイベントに、女装パフォーマーグループThe Sisters of Perpetual Indulgenceの招待を撤回し、不快な思いをした人々の気持ちに理解を示していました。しかし、数日後に球団はさらなる声明を発表し、フィードバックを受けてLGBTQ+コミュニティーと対話した結果、このグループを再び招待したことを説明しました。
これは、論争を解決する際に、透明性な企業のコミュニケーションがいかに効果的であるかを示す注目すべき事例であり、2つの声明はどちらも、球団の変動する思考プロセスをそのまま反映しています。
3. LGBTQ+コミュニティーの声を傾聴する
どんなに良い意図を持っていても、LGBTQ+コミュニティーと積極的に関わり、その声に耳を傾けることを怠る企業コミュニケーションチームは、プライドの本質を見落としてしまうリスクがあります。企業コミュニケーションが本当に共感を得るためには、LGBTQ+団体に知識を求め、LGBTQ+コミュニティーのメンバーから意見を募ることが重要です。
疎外されたLGBTQ+コミュニティーの懸念に取り組むことは重要であり、それは協調的な努力を通してのみ達成できます。そして、プライド月間だけではなく、年間を通してLGBTQ+の問題に取り組み、コミュニティーとのつながりを維持することも、同じように重要です。もし、7月から翌年の6月までの間にコミュニケーションが途切れてしまうなら、企業の支援はピンクウォッシュであると見なされるかもしれません。
P&G - 可視性を強調する
P&Gは、1990年代からの従業員の勇気と努力を具体的に紹介することで、LGBTQ+コミュニティーへの支援を、会社の歴史にしっかりと根付かせています。
このWebページの構造は、「be seen, be heard, be proud」というテーマに基づいていて、可視性の観点から、継続的なLGBTQ+のインクルージョンとサポートを強調しています。具体的には、企業サイト上でLGBTQ+コミュニティーに発言権を与えると同時に、認められたLGBTQ+団体とのパートナーシップを強調し、それぞれのサイトへのリンクを提供しています。可視性にフォーカスすることで、P&GはLGBTQ+コミュニティーへのコミットメントを示し、エンパワーメントの意識を育んでいます。
ビジュアル・ストーリーテリング :企業コミュニケーションを信憑性のあるものにするためのカギ
魅力的なオリジナル写真で、企業コミュニケーションを信憑性のあるものにするためのカギ
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年5月23日に公開された記事「Visual storytelling」の日本語訳です)
アメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催された、テクノロジー・ビジネス・音楽・映画の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2023」では、デジタルコミュニケーターを悩ませている多くの疑問が、テーマとして取り上げられました。例えば、「企業は社会問題について、声を上げるべきか? 静観するべきか?」「政治色が強まる状況で、ESG情報を真摯に伝える方法は?」「生成系AIの広範な影響は?」などです。
私たちが参加した、ある講演がこれらの疑問の根底にあるテーマに触れていました。その講演は、ストックフォトプロバイダーPICHAの創設者Josiane Faubert氏と、New York TimesやThe Guardianなどに作品が掲載されているフォトジャーナリストのRita Harper氏による講演、「ビジュアル・ストーリーテリング:コミュニティを高める方法」でした。
その講演のテーマは「信憑性」。そして「なぜ画像を使ってリアルなストーリーを伝えることが重要なのか」でした。
ここでは、企業のコミュニケーション担当者が、ビジュアル・ストーリーテリングの重要性を理解するために、カギとなるポイントを紹介します。
ストーリーを語るときは、一般的ではなく具体的に
企業のWebサイトでは、一般的な画像や、使い古されたストックフォトは使用しないことをお勧めします。これにはいくつかの理由があります。
まず、企業サイトの訪問者は、リアルではないものを見抜くセンサーが非常に敏感です。サステナビリティや採用情報など、特に信頼性が重要なカテゴリーでは、ありきたりな画像を使用することで、企業が発信する重要なメッセージにも、連鎖的に影響が及ぶ可能性があります。
次に、一般的な画像を使用すると、ほかの企業サイトと見分けがつかなくなります。
そして最後に、ストックフォトを使用すると、実際の従業員や仕事現場を紹介する絶好の機会、つまり、自社の本当の姿をステークホルダーにより深く知ってもらうチャンスを逃すことになります。
信憑性のある画像を使うことには、さらに多くのメリットがあります。
Josiane氏とRita氏は講演の中で、「人々の多様な経験を世界中で共有するために、ビジュアルメディアは不可欠であり、画像がストーリーを語り、物語を形作るのです」と述べました。
力強い画像は、個人のアイデンティティや文化、食べ物、衣服、場所などの具体的なディテールを通して、ストーリーを語ります。企業サイトなどで掲載している画像が、本当に人々の心を打つかどうか。それには、このようなディテールがカギとなります。
多様なストーリーを伝えよう
SXSWでJosiane氏とRita氏は、「2020年以降、より多様な写真素材を依頼する企業やブランドが、急激に増加していることに気づいた」と語りました。この傾向は、Black Lives Matter運動に起因すると考えられます。
そして、大企業によるこの試みが、失敗するケースが多いことにも、彼らは気づきました。その理由は、企業が具体的で真実味あふれるストーリーを語るのではなく、狭い視点から「各ステークホルダーが聞きたいだろうと思われるストーリー」を伝えていたからです。
Josiane氏とRita氏によりますと、企業が被写体に敬意を払い、洞察力をもって接する適切なパートナーを持っていないこと。あるいは、どのストーリーを伝えるべきかを決定する際に、委託に適した多様な編集チームを持っていないことが、問題のひとつになっているようです。
画像を依頼するパートナーの多様性が本物であれば、企業のダイバーシティ、イコーリティ(平等性)、インクルージョンという公約への推進をサポートできます。
Rita氏は次のように語りました。「ビジュアル・ストーリーテリングにおける多様性は、マイノリティ・グループを前面に押し出す強力な手段です。そして、そのようなグループに属する人々が、まるで写真家が彼らを見るように、よりリアルに自分たちを見られるようにする強力な手段でもあります」。
Rita氏の作品例はこちら。
信憑性がカギ
企業Webサイトにおけるすべての主張は、可能な限り証拠で裏付けられるべきだと考えています。例えば、ESGに関する記述は、業績データ・ストーリー・ケーススタディなどと相互参照する必要があります。さらに、企業で働くことがどのようなことかを説明するコンテンツは、さまざまな従業員の声でサポートする必要があります。これらと同様に、Webサイト上の画像も、メッセージをサポートし、さらに信憑性を深めるものであるべきです。
具体的にはどうすればよいのでしょうか? まず、画像には、その人物の背景にあるストーリーを説明するキャプションを付けるか、周囲にあるテキストで画像をサポートする必要があります。
これを実践しているベストプラクティスは、イギリスの保険大手Avivaです。AvivaのWebサイトは、強力な人材プロフィールと実際の写真を通じて、社員を紹介しています。
重要なポイントは、画像が演出されたものではなく、自然体のものだということです。
ストックフォトを避け、できるだけオリジナルの写真を使用することをお勧めします。しかし、企業Webサイトでは、ストックフォトが費用対効果の高い選択肢であり、避けられないケースがあることも理解しています。
企業がどうしてもストックフォトを使いたい場合は、実在の人物のストーリーに基づいて、キュレーションされた多様な画像を提供している、PICHAのようなフォトライブラリーを選ぶことをお勧めします。
また、会議室で握手する人々や、ホワイトボードを指さしながらほほ笑む従業員グループなど、ありきたりな画像を選ぶことも避けましょう。
企業サイト全体にオリジナル写真を使用するのが予算的に難しい場合は、アクセス数の多いページや人気のあるページ、影響力のあるページを優先してください。
企業のメッセージをサポートし、信頼関係を構築するだけではなく、付加価値を与え、有益なキャプションを付けた画像は、SEO対策・アクセシビリティ・二酸化炭素排出効率の観点からも優れています。
企業コミュニケーション担当者のための教訓
- 企業サイトの写真を選ぶ際は、その背景にあるストーリーと、そのストーリーを企業サイトで伝える理由に焦点を当てましょう
- 企業サイトの画像を依頼したり選んだりする際は、興味深いストーリーを確実に伝えるために、多様なアドバイザーと協力し、さまざまな意見を求めましょう
- ストックフォトはできるだけ避けましょう。もし、どうしてもストックフォトを使用する場合は、包括的なフォトライブラリーの写真を選び、視覚的にありきたりなコンテンツを避けましょう
SXSW 2023 - 企業のデジタルコミュニケーターのための教訓
生成系AIツールの試用やESGメッセージの適合性評価など、大規模なテクノロジーイベントから得た重要な教訓を、当社CEOであるScott Paytonが紹介します。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年5月5日に公開された記事「SXSW 2023 - lessons for corporate digital communicators」の日本語訳です)
2023年3月、アメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催された、テクノロジー・ビジネス・音楽・映画の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2023」に参加しました。
さまざまなパネルディスカッション、プレゼンテーション、その他のセッションに参加しました。そこで取り上げられていた講演テーマの多くが、企業のデジタルコミュニケーターが今まさに直面している問題に関連していて、うれしく思いました。
ここでは、SXSW 2003のポイントを、4つに絞って紹介します:
企業のデジタルコミュニケーションに携わっているなら、今すぐ生成AIを試すべき
SXSW 2023では、生成AIの可能性に対する興奮と恐怖が、いたるところで感じられました。
今後、生成AIの長期的な影響がどうなるかはともかく、デジタルコミュニケーターはこのテクノロジーに慣れておくことが重要です。
今は、利用できるツールを使って、いろいろな機能を試してみる時期だといえます。
生成系AIツールは、社外の人々が企業に関するあらゆる情報を得る方法を変えます。それだけではなく、企業のコミュニケーションチームが資料を作成し、その影響を分析する方法をも劇的に変える可能性があるのです。
生成AIを体験するなら、Notion AIに登録してみましょう。
まず、インタビューや電話会議の書き起こしなど、長くて扱いにくい、編集されていないテキストの集まりをコピー&ペーストします。
次に、Notion AIにテキストの要約を指示します。テキストの末尾をクリックして、スペースキーを押し、ドロップダウンメニューから「要約(Summarize)」を選びます。
それだけで、テキストの要約が表示されます。この要約は完璧ではありませんが、編集者が出版できる品質にまで磨き上げていくための出発点としては、驚くほど有益です。この方法なら、担当チームの貴重な時間を節約できます。
重要なことは、デジタルコミュニケーション担当者は、人間の意思決定を置き換えるためにAIの活用方法を懸命に探すのではなく、紹介したNotion AIのように、自分たちの仕事をサポートするためにAIの活用方法を探すべきだということです。
ステークホルダーは、メッセージを以前よりも疑うようになった
多様性への誓約、気候変動に関する約束、政治的課題に対する立場など、企業はその主張を裏付ける具体的な証拠を示すことが求められています。
これは、ますます懐疑的になっている求職者・投資家・顧客・その他ステークホルダーの信頼を獲得し、維持するために不可欠です。
主張を裏付ける方法はさまざまあります。例えば、業績や社会的貢献活動の詳細なデータ、飾らない従業員の声、デジタルチャネル全体の画像が演出ではなく本物だと感じられるようにすることなどです。
ESGに関するメッセージは、重要ではあるが、複雑でもある
アメリカでは、社会における企業の役割や、投資家が社会・環境問題をどの程度考慮するべきかについて、政治的な考えと文化的な考えの二極化が進んでいます。そのせいで、企業の広報チームは頭を悩ませているようです。
アメリカの大手企業のデジタルコミュニケーション責任者は、SXSWのパネルディスカッションの中で「今、企業は発言を恐れています。正しいことをするよりも、正しいことをしていると思われることを恐れているのです」と述べました。
それはつまり、正しいことをしていても、「実際の企業は倫理や価値観を軽視していて、金もうけのためだけに、正しいことをしているように見せている」と、SNSなどで批判されることを恐れているのです。
ESGのメッセージに説得力を持たせるためには、前項の繰り返しになりますが、社会的・環境的な約束や政治的な立場と、事業の中核的な目標や、従業員・顧客・(架空のものではなく)具体的な地域社会のニーズとを、密接に結び付ける必要があります。そうすることで、政治的・文化的の両側からの批判を中和できます。
同業他社の集団から抜きん出ることは、これまで以上に重要かつ困難です
TikTokからTwitterまで、デジタルチャネルはかつてないほど膨大なコンテンツで溢れかえり、人工的に生成されたコンテンツも増える一方です。
同時に、企業はこれらのSNSで自社の「存在意義」をアピールし、環境や社会に対する貢献は競合他社よりも価値がある、と投資家や顧客、求職者やその他の人々へ、盛んに訴えています。
こうした状況は、企業のデジタルコミュニケーション担当者が、自社のメッセージを目立たせ、対象となる人々に響かせることを難しくしています。
これを解決するには、自社のWebサイトやSNSアカウントで、可能な限り独自性を打ち出すことです。ステークホルダーの声に耳を傾け、彼らがこれまでに見たことのないような斬新な方法で、彼らが望むコンテンツを提供することです。
これは今のところ、AIよりも人間のほうが上手にできることです。
金融系企業のWebサイトの改善方法
特徴的なデザイン、わかりやすいラベリングとスムーズな導線、透明性などを採用した、ベストプラクティスを紹介します
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年4月6日に公開された記事「Overcoming digital communication mistakes in the financial services industry」の日本語訳です)
金融系企業の公式Webサイトの多くは、訪問者にとって同じようなデザインになっている危険性があります。
不明瞭で時代遅れの配色を選んだり、トップページで同じバナーを使ったり、金融業界に寄せられる批判に対処できていなかったり、といったことが要因です。
ここでは、金融系企業のWebサイトにおける4つの問題と、それらを克服するためのベストプラクティスを、併せてご紹介します。
課題1:似たような配色が多く、思うように個性が打ち出せていない
多くの銀行や保険会社は、洗練されたビジュアルであろうという思いから、業界内で似たような配色を選択しがちです。これこそデジタルコミュニケーションが単調で反復的なものに見えてしまう理由です。
もはや各企業のデジタル資産が、見分けられないところまで来ています。この問題を解決する方法は、より鮮やかな配色を選ぶことです。貴社のWebサイトを際立たせ、覚えてもらうことができます。
もし貴社のブランドカラーなどの都合で、配色を変更できない事情があったとしても、社内のブランドガイドライン担当者と協力して、活気のあるレイアウトや、できる限り異なる色を選ぶようにしましょう。
ベストプラクティス:NatWest Group - 遊び心のある色を組み合わせて、同社のイメージに活気を与えています
イギリスの金融持株会社NatWest Groupが、最近デザインを一新したWebサイトは、パープル、イエロー、ピンクという配色で、新鮮さと楽しい雰囲気をもたらしています。
この選択は、NatWestのブランドカラーであるパープルを強調しつつ、現代的かつ明るい色で補うものです。コンテンツは、年次報告書やCEOメッセージなど、多くの金融系企業と共通するものですが、NatWestのそれはより鮮やかで、親しみやすい印象を与えています。
また、現在はリテールサイトとの一貫性や、ブランドの統一感もあります。
課題2:トップページのコンテンツがほぼ同じで、特長を強調できていない
トップページに年次報告書やCEOの最新メッセージへのリンクを置くことは、重要でやむを得ない場合もあります。しかし、ファーストビューのバナー全体を占める必要があるのかどうかは、再考する時期が来ています。
金融系企業の多くは、トップページに「本決算資料」や「年次報告書」などのバナーを置き、同じようなコンテンツを宣伝していることが少なくありません。そのため、企業独自の興味深いコンテンツは、ページの下方に押しやられています。これは、トップページの貴重なファーストビューを活かして、訪問者に貴社の強みを伝える機会を逃しているといえます。
ベストプラクティス:Goldman Sachs - トップページでポッドキャストをアピールしています
アメリカの金融グループGoldman Sachsは、トップページのファーストビューを活用して、「Goldman Sachs Exchanges」というポッドキャストを訪問者に紹介しています。PDFの報告書よりも、有益で独自性があるマルチメディアを優先することで、訪問者に対して鮮烈な印象を与え、恐らく今まで見たことがない、ポッドキャストに注目させています。
ベストプラクティス: Santander - トップページ画像の革新的な利用で、同社のイメージを向上させています
スペインの銀行大手Santanderが、革新的な画像と見出しを使って打ち出しているサステナビリティのメッセージは、瞬間的なインパクトを与えています。これは、多くの金融系企業がWebサイトで使用しているバナーと、一線を画しています。
トップページには、興味がある閲覧者が見つけられる大きさの、「2022年度年次報告書」へのリンクが貼られています。適切な位置・サイズでリンクを配置していて、ページを圧迫していません。他の銀行のトップページと同じように見えるリスクを回避しています。
課題3: 高度な製品サービスを求める法人顧客向けの、導線がわかりにくい
再保険や複雑な投資商品など、より高度なサービスを求める法人顧客ですが、銀行や保険会社のWebサイトでは軽視されることもあるようです。その傾向は、ナビゲーションが不明瞭だったり、サービスの概要がなかったり、といった事象に現れています。
多くの企業は「Who We Are(私たちは誰か)」カテゴリーに断片的な情報を掲載していて、それが訪問者をマイクロサイトやWebフォームへと誘導することもあります。ただ、このやり方は訪問者にとって、わかりにくく不親切な場合があります。
そのせいで訪問者をいら立たせことはリスクであり、売り上げを失ったり、最も有益な顧客を混乱させたりする危険性もあります。
つまり、潜在顧客となり得るすべての訪問者に向けて、関心がありそうな製品サービスへの適切な道しるべを置くことが重要です。
ベストプラクティス:Zurich - 複雑な保険商品を、整然と表示しています
スイスの保険大手ZurichのWebサイトにある「Menu」ボタンをクリックすると、カテゴリーとサブカテゴリーのリストが、わかりやすく表示されます。「Products and Services (製品とサービス)」の見出しの下には、「Protect your business (ビジネスを守る)」「Protect your employees (従業員を守る)」といった企業に特化したサブカテゴリーなど、さまざまな種類の保険商品が並んでいます。これらのリンクをクリックすると、利用可能なソリューションが表示されます。
このように、商品やサービスを理にかなった形で表示することにより、ユーザーは必要な情報へスムーズにアクセスできます。なお、メニューの上部に、お問い合わせページへのリンクもわかりやすく表示しています。
課題4:よくある批判に、正面から向き合わない
当社が作成したランキングで上位となっている金融系企業でさえ、デジタルコミュニケーションで、化石燃料関連事業への投資やマネーロンダリングに関する議論などの問題と向き合うことに消極的です。
ネットゼロ計画に対する取り組みを計画し、サステナブルな投資へのコミットメントをアピールするものの、いざ論争になると沈黙してしまうのも、典型的なアプローチだといえます。 あるいは、法律主義的な方針のPDFや「statements (声明)」のリストに沿う形で、論争に対処するでしょう。
リスク管理を専門とする業界が、リスクを避けるのは当然かもしれませんが、ステークホルダーや規制当局は、金融系企業が一歩進んだ対応をしてくれることを望んでいます。
ベストプラクティス: 金融系企業以外のWebサイトを参考にします
Bowen Craggs Indexに含まれる金融系企業にとって、論争への対応について世界的に効果的なベストプラクティスが不十分です。
金融系企業は、自分たちが投資先として選ぶであろう、関心が高い社会問題に既に取り組んでいる業界の、企業Webサイトを参考にする必要があります。
例えば、スイスの資源大手Glencoreの「A-Z」コンテンツや、当社Indexの上位企業の事例を参照してください。
金融系企業は、鉱業や石油掘削など、社会的な関心が高い業界に直接関与しているわけではありませんが、ステークホルダーや一般市民は、これらの事業に携わる企業と、事業に融資する企業とのあいだに、大きな違いはないと考えています。
まとめ
ここまで紹介してきた問題は、金融系企業のデジタルコミュニケーションによく見られるものです。しかし、(特に過去や現在の論争について)透明性を確保し、すべての訪問者にとってわかりやすいユーザー導線を設計し、自社を際立たせる魅力的なビジュアルの使用に注力することで、問題を解決できます。
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