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顧客生涯価値(Lifetime Value=LTV)を基点に、今後のCRMを考える(1)

2003.10.24
コラム:ディレクショングループ 棚橋 弘季

現在、経営およびマーケティングの世界でのトレンドとなっている言葉の1つに「顧客生涯価値(Lifetime Value=LTV、または、Customer Lifetime Value=CLV)」 というものがあります。顧客ロイヤルティを高めていくことによって築かれる、顧客との長期的関係の上で期待できる取引価値を指すものです。今回はこの「顧客生涯価値」というキーワードを中心に話を進めたいと思います。

ビジネスの2つの成果指標、「市場シェア」と「顧客シェア」

まずは顧客生涯価値という言葉が話題となっている背景を見てみたいと思います。
企業の多くは、将来的な事業計画(売上予測)を立てる際、市場シェアを成果の指標として使っています。価格設定や製品の品質の設定など、製品のポジショニングを決める際、将来の売上を予測することとは事業にとって非常に重要なことです。売上数を予測する際に、市場シェアからそれを予測することは理にかなったひとつの方法です。
市場シェアがひとつのビジネスの成果指標と捉えられると、当然マーケターは、繰り返し行なわれる販売キャンペーンごとの売上額を気にしながら、市場シェアを追求することになります。市場自体が成長している時には、コストの投下によって市場シェアの拡大競争に勝ち抜くことは利益を生む上で重要です。ところが、成長が頭打ちの市場や、逆に衰退をはじめている市場では、市場シェアを他社と奪い合うためにコストを投下する意味合いが極めて薄いことは、考えればすぐにわかります。この場合、自社の売上、利益を死守するためには、市場シェアの奪い合いではなく、顧客シェアの維持が重要になってきます。

「市場シェア」から「顧客シェア」へ

1:5の法則に示されるように、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍必要であると言われます。同じ額のコストで多くの顧客から多くの売上を確保しようとするなら、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持にコストを投下するほうが効率的ということです。これは成長が鈍化した市場や衰退がはじまった市場だけではなく、成長過程の市場においても同じことです。あらゆる市場で競争が激化している現在では、企業は、これまでのように市場シェアを追求するだけではなく、ひとりひとりの顧客のシェアを追求する必要が出てきたのです。

顧客生涯価値は顧客シェア追求のための指標

とはいえ、顧客シェアを計る指標がなければ、どれだけのコストを投下し、どれだけの顧客シェアの維持・獲得を目標にすればいいのか、客観的な判断ができません。そのための指標として出てきたものが「顧客生涯価値」です。
顧客生涯価値をより正確に定義すれば「取引を開始した平均的な購入客から一定期間にわたって予測できる累計正味損益額」ということができます。計算式は少し複雑ですので、ここでは説明を省きますが、計算の考え方自体はキャンペーン単位で行なわれる損益予測計算と本質的には変わりません。ただ、一般的なキャンペーンの損益予測計算では、顧客を問わない「発信数量」や「レスポンス率」、「レスポンス件数」などの項目を、それぞれ新規顧客と既存顧客に分けて計算する点が大きく異なる点です。もちろん、これは「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持」という目的を正しく評価するために行なうものです。

既存顧客の維持が重要、しかし・・・

「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持」という2つの目的のうち、単純にコスト効率を考えれば、後者を重視して既存顧客の維持率を高めることを優先すべきです。しかし、どんなに維持率を高めたとしても、脱落していく率を0に抑えることは不可能です。そのため、脱落した数の補填のため、新規顧客の獲得も同時に目的として考えなくてはなりません。
顧客シェアを重視し、顧客生涯価値を指標として、事業を推進する際には、既存顧客の維持率を高く保ちつつ、新規顧客の獲得にコストを投下していく必要があります。とうぜん、その際には、「既存顧客の維持」と「新規顧客の獲得」にかかるコストとレスポンス率を損益分岐点を意識しながらバランスさせることが重要です。顧客生涯価値を計算する際に、新規顧客と既存顧客を分けて計算するのはそういう意味からなのです。(つづきへ→)

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