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アクセシビリティの定義、ユーザビリティとの違い

2010.06.11
アクセシビリティ・エンジニア 中村 精親

「アクセシビリティとユーザビリティに配慮する」

Webサイトの制作において、このような文面を見かけることがあります。しかしながら、両者の違いやそれぞれを向上させる効果についてはあまり理解されていないのでは、と感じることもあります。

「ユーザビリティは考慮したいけれども、アクセシビリティはそのうち」

このような考えのWeb担当者の方もいらっしゃるようです。

これはひとつにはアクセシビリティの定義が明確ではなく、人によって認識、理解がさまざまであることに起因しているのではないかと考えています。

そこで本稿では、アクセシビリティの定義についてひとつの考え方を示し、また、混同されがちなユーザビリティとの違いを明確にすることで、アクセシビリティ向上の必要性や、その意義について考えてみたいと思います。

ユーザビリティの定義

まず、比較対象となるユーザビリティについて確認しておきます。もちろん、ユーザビリティの定義もそんなに簡単なものではありませんが、アクセシビリティの場合とは違い、よく取り上げられる定義として、ISO 9241-11があります。

ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び利用者の満足度の度合い

上記を読むと、ひとつのことに気がつくと思います。「指定された」というキーワードが繰り返し出てくる、という点です。

つまり、ユーザビリティを測る上では、一定の条件が必要になる、ということなのです。

アクセシビリティの定義

一方でアクセシビリティにはこれといってよく引用される定義はありません。狭い意味において「障害者や高齢者『でも』利用可能」という言い方がなされることがあります。

しかしながら、当社ではこれだけがアクセシビリティだとは考えておりません。むしろ、これは前述のユーザビリティの定義に当てはまるのではないでしょうか。

例えば、よく「音声ブラウザ対応」というような話をされる方がいますが、これは「主に視覚障害者が」「音声ブラウザを利用して」「Webを閲覧する」際のユーザビリティを向上させる、という施策に過ぎないのではないか、と思います。

そうではなく、当社としてはアクセシビリティの本質が「環境に依存しない」、つまり「指定されていない」状況でのアクセスを可能にすること、ではないかと考えます。その意味では、アクセシビリティとユーザビリティは対極にある、といえるわけです。

対極にある、というと語弊があるかもしれません。もちろん、ユーザビリティ向上がアクセシビリティを低下させるとか、アクセシビリティ向上がユーザビリティと関係ない、というわけではありません。しかし、混同してしまってはならない、ということを伝えなければ、と感じています。

わかりやすくするため、ここでもひとつ具体例を挙げてみます。

テキストサイズを大きくする、という一見アクセシビリティ上よいと思われる施策があります。ところが、これは必ずしもアクセシビリティ向上につながるとはいえません。なぜでしょうか。それは、視野が狭く文字が大きすぎると内容の理解が困難になる人がいるからです。これは、文字が大きい方が使いやすい人にとってのユーザビリティが向上している、というだけなのです。

この場合、アクセシビリティを向上させるにはテキストサイズを変更できるようにすること、これが必要だと考えられます。さまざまな環境を想定するべきなのです。

さまざまな閲覧環境への対応

人間の多様な特性もそうなのですが、Webアクセシビリティという言葉が使われはじめた時代と比べると、Webにアクセスできる環境もとても多様なものとなりました。ここ数年の話題だけでも、iPadのような今までとは異なった操作を前提としたデバイス、iPhoneやXperiaをはじめとしたスマートフォン、PS3、Wii、Xbox 360のような据え置き型ゲーム機、Nintendo DSシリーズ、PSPなどの携帯ゲーム機、インターネットに接続可能なテレビ等々、ここには挙げきれないほどのデバイスからのアクセスが可能になっています。

また、コンテンツを取得するためにアクセスしてくる主体も人だけではなく、検索エンジンを筆頭としたプログラムの類も増えています。

こうした状況を考えると、広義の意味でのアクセシビリティを向上させることが、多くのWebサイトにとってどれだけ重要であるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

今後、Web閲覧の環境はさらに多様化すること、また高齢化や国際化により、閲覧する人の特性も多様化することは間違いありません。策定済のWCAG 2.0や、今年改定予定のJIS X 8341-3は、一般に障害者や高齢者のためのガイドラインであり、ガイドラインの中にもそれに近い記述があります。しかし、そうした環境を中心にしてはいますが、実際にはさまざまな環境のことが考慮されている、といえる内容になっています。

このように、広義のアクセシビリティを意識して向上させていくことで、さらなるWebサイトの価値向上に取り組んでいきたい、そう思います。

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