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Controlled Chaos

2006年8月25日

ミツエーインフォメーションネットワークテクノロジー 執行役員兼エグゼクティブプロデューサー
藤田 拓

Typo3 Developers Days

8月11日から3日間、オープンソースのCMS、Typo3の開発者が集まる1st International TYPO3 Developer Daysがスイスにて開催されました。Typo3は欧州で特に人気があり、日本ではまだまだ知っている方は少ないようです。しかし、CMSをキーワードに情報を集めていくといつかはたどり着くツールでしょう。私自身もまだインストールをして試していた段階でしたがその柔軟性には目を見張るものがあり、今回参加しようと決断しました。

3日間の内容は実際の開発の現場といった様相でした。現最新バージョンである4系、そして次の5についてのブレインストーミング、ひたすら複数人でバグ取りを行うBug squashing、新しいアイディアを試して実装するCode sprint、Typo3を利用した実践的な事例とそのコードの紹介等々、いいかえれば開発合宿ともいえるイベントでした。

当然のことながらアタリマエではない

当初、Typo3を使い始めたばかりの私にとっては、その雰囲気に入り込むのには若干の戸惑いもありましたが、2日目あたりから幾人かと話を交わすことができ、そういった会話の中での情報も大変参考になるものが多く、朝から晩までのハードスケジュールが続きながらも苦痛に感じるものではありませんでした。

歓談の中では、ソフトな話題としてはやはり異文化交流的な話題、つまり日本と欧州のWeb事情の違いといったものがメインになってきます。例えば、欧州のCMS利用に比べ日本はまだまだ普及してないといった話をすると「日本は人件費が安いのか?」と訊かれ、また、日本のWeb業界ではほぼみんな知っているであろうBlogツールの話を複数の方にすると、「それはどういうスペルですか? うーん、知りません」といわれたりと、日本のアタリマエは決して海外ではアタリマエではないという、至極当然の現象ながら軽いカルチャーショックに何度となく遭遇しました。

CMSを開発のプラットフォームに

Typo3の特徴としては、その柔軟なカスタマイズ性が挙げられるでしょう。Typo3に新たな機能を追加するExtensionの開発はこのCMSツールの目玉ともいえる属性で、現在1500以上ものExtensionが公式サイトに登録されています。その中にはe-commerceを実現するものや、CRM/ERPといった業務プロセスに関わってくるアプリケーションとの連携を実現するものまで見受けられます。

その他のオープンソースCMSにおいてもこういったカスタマイズを行えるものはあり、例えばOpenCMSであればJSPの開発により、ZopeであればCMF(Content Management Framework)という名の通りまさしく開発のための機能があります。Typo3もExtensionの開発をいかにうまく行えるようにするかといったシステムが考えられており、今回のDevelopers Daysのブレインストーミングでも大きなボリュームを占めていました。このExtension開発がTypo3の醍醐味ともいえる部分なのですが、日本語のドキュメントが少ない(ない?)ということで、その点も日本においてTypo3が普及していない理由かもしれません。

Kasper氏の言葉

このイベントの締めくくりはTypo3の生みの親でもあり、開発の総責任者Kasper氏の話でした。そこでは各開発者への感謝の言葉をはじめとして、これからのTypo3の進む方向といった内容も話されました。

その中で自分に強く残った言葉があります。それを簡単にまとめると次のような内容になります。

自分がTypo3の開発を始めた頃は開発者は自分ひとりだったのですべてがControlできた。しかし、その内容はひとりでできる範囲のものだった。そのうちオープンソースとして色々な開発者が関わりコミュニティもできた。基本機能の充実をはじめ、Extensionも数多く登録された。しかし、その開発はChaos(混沌)の様相を見せ始めている。これからのTypo3の開発はそのフローのシステムをより洗練させ、しかしChaosを生み出している各人の自由をなくすことなく、それらをオーガナイズすることによりControlled Chaos(管理された混沌)の状態で進めていきたい。

さらっと話されたControlled Chaosという言葉でしたが、オープンソースにおけるプロジェクトの方向をはじめ、Web2.0といった言葉からも連想されるようなChaosを否定せずオーガナイズしていく必要があるWebのテクノロジーにも繋がるものだなと感じました。

今後もぜひTypo3の動向をチェックしていきたいと思います。