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IA Summit 2017から学ぶ人間(Human)とテクノロジー(AI, Machine, Smart Device)の付き合い方

2017年5月9日

第一事業部 第二本部(UX) 第二部 インフォメーションアーキテクト
前島 大

インフォメーションアーキテクチャのグローバルカンファレンスとして毎年北米エリアで行われるIA Summitが、今年も3月22日からバンクーバーで行われ、昨年に引き続き参加してまいりました。
IA Summitの今年のテーマは「Designing for Humans」。「人間のためのデザイン」でした。

IA Summit会場の様子と配布されたネームプレート

これまでもインフォメーションアーキテクトでは徹底したユーザー視点で人間を中心としたデザイン設計を行ってきましたが、AIをはじめとする昨今のテクノロジーの進歩により人々がより人間らしくあるため、さらに人間にフォーカスする必要があることを、このテーマは意味しています。

セッションの傾向と分類

3日間にわたって行われる5つのキーノート(最終日のクロージングプレナリー含む)と約50のセッションは大きく3つに分類されます。

  1. その年のテーマに関連するセッション
  2. 基本となるIA領域とその延長線上にあるセッション
  3. 社会、政治、環境等に関連するセッション

特に3.のセッションは、日本国内で行われるカンファレンスと海外で行われるカンファレンスの違いをよく表しています。今年であれば「Visual Basicの父」で知られるAlan Cooperによるオープニングキーノート「Ranch Stories」や、MIT Media LabのAmber Caseによる「Designing Calm Technology」、Bram Wesselによる政治統計学者Nate Silverの米国大統領選予測失敗の解釈、Lutz SchmittによるIoT社会のプライバシーにおけるアイデンティティのモデル化など、社会における人間とテクノロジーの関係について広い視点で語られました。

本コラムでは現地で行われた各セッションの大方針の象徴とも言える2つのキーノートを取り上げます。

ソフトウェア業界をファーマーのように考えてほしい

カリフォルニア州サンフランシスコ北部にあるマリンカントリーに農地をもつAlan Cooperは、ファーマーとしての自らの体験からRanch Storiesと題したキーノートでフード業界の視点からこれからのソフトウェア業界のあり方を論じました。

日常的に人々が口にする食べ物も日々接するソフトウェアも、人間が社会や文化を発展させためのインフラストラクチャーである点では同じ存在であること(Cultureの語源はラテン語で耕すを意味するColereでAgricultureに由来すると彼は言います)。“People love your product for what it is, not for what it cost(人々はプロダクトそのものを愛するのであってコストが理由ではない)”と表現するように、いまフード業界で起きていることは、資本主義のもと大量生産される$1のハンバーガーと豊かな農園で家族の愛に育まれた$3のブロッコリーであれば人々は後者を選択するという状況であり、商業主義の時代から価値主義の時代に確実に変化しているということ。いま世界を養い育てているのはインダストリアルフードではなくファミリーアグリカルチャーであるといっても過言ではないこと。まさにそれこそが私たちを人間らしくしている(Agriculture makes us human)と彼は主張しました。

彼はソフトウェア業界もフード業界と同様に考えてほしいと言います。つまりは利益とはプロダクトのクオリティから生まれるということです。優れたソフトウェアを創り出すことが先で得られる利益はボーナスであると(と同時に大規模経営のもとマネージドされたチームから優れたソフトウェアが生まれづらいことも指摘)。

クオリティの高いプロダクトの例としてSteve JobsによるApple製品を挙げるAlan Cooper

最後に彼は、ファーマー達は自分たちの生活のためのみでなく環境も維持したいと考えているように、ソフトウェア開発者も商業的(industrial)ではなく持続的(sustainable)な思考であるべきで、同じクラフトマンシップをもつものとして責任をもつべきだと締め、会場はスタンディングオベーションに包まれました。

未来のインターフェイスは人間の生活に静かに溶け込み、必要なとき以外は人間の注意をひかないもの

Amber Caseがキーノートで語ったCalm Technologyとは、もともとパロアルト研究所でMark WeiserとJohn Seely Brownにより1995年に提唱された概念で以下のような性質をもつものを言います。

  • Technology should require the smallest amount of our attention
    (テクノロジーは人間の最小限の注意をひく存在であるべきである)
  • Technology should inform and encalm
    (テクノロジーは人間が必要なときのみ静かに情報を伝えるべきである)
  • Technology should make use of the periphery
    (テクノロジーは人間の気付かないレベルで周辺に存在し使用されるべきである)

「聴き手に向かってくるのではなく、周囲から人を取り囲み、空間と奥行きで聴き手を包み込む音楽」と定義される英国の作曲家Brian Enoの提唱するアンビエント・ミュージック(環境音楽)に非常に近い思想であると感じましたが、Calm TechnologyにおいてもAmbient Awareness(静かな環境での気付き)が大事な要素のひとつとなるようです。
(Calm Technologyが提唱された同じ年にマイクロソフト社から発売されたWindows 95の起動音の作曲者がBrian Enoであるのは非常に興味深いですね)

電気ケトル、トイレの使用/非使用のサイン、天気と連携して明るさが変わる照明などを具体例として提示し、人間が必要なときのみ情報が取得でき(人間が必要と感じる前に気付かないレベルで調整され)、必要でないときは決して主張をしない(人間の邪魔をしない)Calm Technologyは、人々が最小限の動きかつ最小限のメンタルコストで目的を達成する環境を実現し得ると彼女は主張しました。

Amber Caseによるキーノート「Designing Calm Technology」

Cisco Systems社によると2020年には50億のデバイスがインターネットでオンラインになると言います。
あらゆるモノがスマートデバイスとなりインターネットにつながるIoT時代においては、得てしてデバイス自体の発達に目的が向いてしまいがちですが、目的はあくまで人間が人間らしくあることであり、そのためにテクノロジーが静かに必要に応じて人間を助けるという環境設計こそがCalm Technologyをデザインすることであると言えます。

最後に

これらの内容をはじめ、IA Summit 2017で行われたセッションのいくつかのご紹介を当社セミナールームにて「IA, meet AI ~IA Summit 2017 参加報告会~」という形で開催いたしますのでご興味を持たれた方はぜひご参加ください。