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大切なのは「見えるけど見えないもの」

2017年8月29日

設計チーム UI開発者
宇賀 景哉

「良いWebサイト」の条件とはなんでしょうか?

見た目がきれいで使いやすくて格好良くて…漠然としたイメージはいろいろあると思います。Web制作者の間でも意見の分かれる問いですから、ましてやWebを利用する一般ユーザーであれば、一人ひとり違う答えを持っていることでしょう。

タイトルにある「見えるけど見えないもの」というフレーズは、私が好きな漫画作品「遊☆戯☆王」に登場するものです。作中では、登場人物が目には見えない大切なモノ、重要なモノに気づくシーンなどでこのフレーズが登場しています。今回は「良いWebサイト」の条件となりえる「見えるけど見えないもの」の重要性について考えてみました。

制作者視点で考える「良いWebサイト」

Web制作を行ううえでは欠かせない、マークアップという工程があります(HTMLの仕様によって定義された要素を用いて、文書のコンテンツに意味付けをし、構造化すること)。私は普段、一つ一つのコンテンツに対しどの要素でマークアップするのが妥当であるかをよく吟味しながら制作業務を行っています。

そもそもマークアップには、「コンテンツの持つ意味や役割を、コンピューターが制作者の意図した通り正しく認識できるようにする」という目的があります。制作者によって意味的、構造的に妥当なマークアップを施されたWebページは、コンピューターがコンテンツを正しく認識できるようになるわけで、それはつまりWebアクセシビリティの向上を意味します。

もし仮に、Webコンテンツに求められる品質が「見た目が整っていること」のみだった場合、どのコンテンツがどの要素でマークアップされていようと、問題ないということになってしまいます(これは極論ですが)。マークアップという行為本来の目的に立ち返ればこそ、アクセシブルであることが「良いWebサイト」の条件と言えるのはないでしょうか。

利用者視点で考える「良いWebサイト」

わかりにくくて格好悪いWebサイトよりは、わかりやすく格好良いWebサイトを利用したいと、誰もが思うでしょう。

私も普段、Webサイトを閲覧していて「ビジュアルデザインが美しい」「UIがわかりやすい」といった理由から、心を動かされることがあります。しかし、そのように見た目こそ優れたサイトであっても、例えばUIの操作がキーボードだけで完結できず、マウスに頼らなければならなかったとしましょう。日常的にマウスよりキーボードで操作を行うユーザーや、そもそもマウスを使うことが困難なユーザーは、どう感じるでしょうか。別の例として、スマートフォンで閲覧しているWebサイトの文字が小さすぎ、読みづらいと感じたため文字の拡大を試みるもそれができなかった場合はどうでしょう。

いずれも少なからずストレスを感じてしまうはずです。これらはどれもWebアクセシビリティに含まれる「すべての機能をキーボードから利用できるようにすること」や、「テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にすること」などが考慮されていないことが原因であり、利用者視点で考えてもやはりアクセシビリティが「良いWebサイト」の条件の一つであると言えます。

Webでは視覚的に良しあしの判別できない品質が重要

Webアクセシビリティの難しさは、その良しあしが視覚的に判別しにくいことだと私は思っています。妥当なマークアップがなされているか、スクリーン・リーダーを介し音声でWebサイトを利用した(聴いた)場合でも情報が過不足なく取得できるか、キーボード操作だけでUIを利用できるかは、視覚的に判断することができません。結局のところ、どれだけビジュアルデザインが優れていても、ユーザーが必要なコンテンツにアクセスできない状況が起こり得るWebサイトを、「良いWebサイト」とは評価できないのではないでしょうか。

もちろん、ビジュアルデザインや視覚的にわかりやすいUIも、Webサイトにおいて大変重要です。しかし、目には見えない部分の配慮や品質が備わって初めて、本当に良いWebサイトが生まれます。

大切なのは「見えるけど見えないもの」。アクセシビリティの大切さ、とりわけ目には見えない部分の品質の持つ重要性が、より多くの方々にご理解いただけることを願いながら、私は日々のWeb制作に取り組んでいきたいと考えています。