ひっそりとDOM Review DraftがW3C勧告となっていた話

アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)

今月頭にW3C Newsで告知されているように、2019年6月18日付けのWHATWG DOM Review DraftがW3C勧告(Recommendation)になりました。

DOM仕様の中核部分については、多くの人は既にWHATWG DOM Living Standardを参照しており、W3CのDOM仕様を参照しているわけではないと思いますので、実質的な影響はほとんどないと考えられます。

しかし、W3C側でのDOM関連の仕様は、今回のW3C勧告をトリガーとして、多くの仕様文書がSuperseded Recommendationとして再発行されました。なお、Supersededという単語は、(後続の仕様に)「優先される」「置換される」などと訳されるもので、大雑把に言ってしまえば「廃止」ということになります。名目としても、W3CのDOM仕様文書群は役割を終えつつあります。

具体的なステータスを見ていきますと、W3CのDOMの最新版を参照するURL https://www.w3.org/TR/dom/は、https://dom.spec.whatwg.orgに転送されます。http://w3c.github.io/dom/のような最新のEditor's Draftを参照するURLも同様です。

W3C DOM4はSupersededとして廃止されました。W3C DOM4の後続として開発されていたW3C DOM 4.1も以前よりWorking Group Noteとして、DOM Living Standardを参照するように明記されています。

以下のDOM3関連のWorking Group Noteについても再発行され、DOM Living Standardを参照するように明記されています。

DOM2勧告はすべてSupersededとして再発行され、廃止されました。

以下のDOM関連勧告についても、Supersededとして再発行され、廃止されました。

またSelectors API Level 2に関しても、DOM Living Standardを参照する記述が追加されています。

その一方で、依然としてDOM1とDOM3勧告は以前のままです。(しかし、GitHubで仕様のステータスを議論している様子では、DOM3については忘れられているわけではなさそうです

DOM Parsing and Serializationも現時点ではそのままです。とはいえ、少なくともDOM parsingは既にHTML Standardに移管されています。

なお、DOM Level 3 EventsUI Eventsと名前が変えられ、Web Applications Working Groupで現在も策定が進められています。

といったところで、Document Object Model (DOM) Technical Reportsからたどることのできるすべての仕様とその関連文書のステータスについてまとめてみました。多くのW3C DOM文書がWHATWG DOM Living Standardを参照するように変更されていることが見て取れたと思います。誤って廃止されたW3C DOM仕様を参照することがないようにしたいものです。