2006年5月12日 世界標準のサービスを目指して

ミツエーサウンドビジュアル 取締役
竹島 慶

当社Webサイトを完全英語化するプロジェクトが、数年前から始まっています。Webは構造や技術仕様などにおいて、世界標準の規格や考え方があります。環境さえそろえば、ボーダレスにコンテンツを提供できる機会がますます増えていくだろうという考えから、いち早くサイトの完全英語化に踏み切ったわけです。

そんな流れの中、「音声」「映像」という表現手法によるコンテンツ提供をプライオリティとする私の部署は、大いに悩むところがありました。Web構築のように世界標準規格がない事業領域で、海外企業に直接アプローチをかけたとして、果たして引っかかりを感じていただけるのだろうか????

フランスのリヨンにある代理店から一本の電話をいただいたのは、まさにその模索を続けている最中でした。サイト上にアップしているサンプル音声が決め手となり、発注のご依頼。急遽トランスレーターを含むチームを編成して、日本(東京)─フランス(リヨン)を結ぶプロジェクトが始まりました。

目の当たりにした時差の壁!?

日本と代理店のあるフランス・リヨンとの時差は−8時間。こちらの18時ごろが、代理店にとっては10時ごろにあたり、通常1日でコンタクトできる時間は3時間ほど。しかもエンドクライアントはアイルランドに長期出張(!)しているとのことで、情報伝達は日本、フランス、アイルランドで行うことになりました。コミュニケーションは当社のトランスレーターを挟んでメールベースで行いましたが、簡単な確認を投げたとして、返信が早くて3時間後。ともすれば翌朝といった状況です。ナレーション用の原稿はあるのに、確認に手間取ってなかなか制作に入れない…。言葉の壁よりも、時差の壁が第一の課題となりました。

一方で言葉の壁がなかったのか、というとそうではありません。特に機材/アプリケーションの選定や編集作業にかかわる技術的なコミュニケーションでは、制作ディレクターでないと意味や内容が掴めないものもあり、その点ではトランスレーターに苦労をかけたところです。もっと英語が話せれば、と今さら自分の人生(?)を後悔しても後の祭り。今回は、時間とコミュニケーションを重ねて、何とか乗り切るしかありませんでした。結局2週間のスケジュールのうち、素材の確認や工程の同意だけで1週間を消費。制作期間は2、3日という内容でしたが、期間内で完全にクオリティを達成できたのは、ひとえにトランスレーターおよび制作チームのみなさんのおかげです。

課題と収穫

今回の取引にあたって感じたことや課題点をまとめてみたいと思います。

コミュニケーションについて
今回はメールベースで行いましたが、時差の壁が大きい場合、時間を効率的に使うために、チャットや三者間電話など、リアルタイムで伝達可能なツールを使った方が良い。
ネイティブチェックの必要性
例えば海外企業が用意した日本語版ナレーション原稿では「日本語として間違っているわけではないんだけれど、普通そんな言い回しはしないよ」的なことが多い。先方か、もしくは弊社に、原稿をチェックして、正しく校正できるネイティブのトランスレーターを置き、サービスの質を高める必要がある。
国際基準
グローバルなサービス提供を考えるなら、企業として国際基準のマネジメントシステム(ISO等)などを持っていれば有利。品質に関して世界共通言語を持っているのと同じことであり、信頼性が得られやすい。
取引の透明化
追求するべきクオリティを相互認識したうえで、プロジェクトマネジメントと各作業工程を透明化すること。「あうんの呼吸」が通用しない海外企業だからこそ、さらに重視するべき。

今回は、多言語で展開する社内教育コンテンツのうち、当社が「日本語版」を作る、というミッションでした。プロジェクトチームとしては「日本代表」のような気持ちで、モチベーションを上げて臨みましたが、クオリティの認識に誤差がないことが分かり、ひとまず安心といったところです。さらに作業過程で判明したことなのですが、成果物を作るための工程やプロセス、また選択すべき編集機材、ツールやその使い方についての考え方もまったく同じだったことには驚きました。クオリティや工程については、私たちも長年に渡って研究を続け、現在にいたっているため、その達成手法について国境の差はない、と確認できたことは、今後音声・映像事業がボーダレスなサービス展開を考えるうえで、大きな収穫になりました。

インターナショナルな力と可能性

前述したように、音声・映像事業はWeb構築系のサービスに比べ、グローバルなアプローチに際してフックが弱いのでは、という認識がありました。しかしよく考えてみれば、テキストに比べてイメージしやすい音・映像コンテンツを使って、日本市場にプロモーションをかけたいというグローバル企業は多いはずです。そして、世界的な視点では「日本語を使う」ことにかけて、ネイティブ(つまり日本人)に勝るものはありません。つまり、世界的に見れば言葉という文化の違いこそ、独自性の最たるもの。このサービスの存在性そのものが非常な強みになりうると考えられます。受注からのプロセスを振り返ってみて、改めて音声・映像事業領域の持つインターナショナルな可能性を実感した次第です。

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