Webアクセシビリティ入門セミナー2026(4月23日開催)
2026年4月23日、当社エクゼクティブ・フェロー(CBO)の木達が登壇し、Webアクセシビリティ改善を検討している方を対象に『「Webアクセシビリティ入門セミナー2026」』をオンラインで開催しました。本セミナーは、Webアクセシビリティになぜ取り組まなければならないのかを、改正障害者差別解消法の概要やWebアクセシビリティの基本的な考え方を織り交ぜて解説しました。

木達の講演の様子
はじめに、なぜWebアクセシビリティに取り組む必要があるのか、法律の観点から説明しました。2024年4月に施行された改正障害者差別解消法では、民間企業に対して合理的配慮の提供が義務化されました。そのため、Webサイトの利用に困難がある障害者ユーザーに対し、過重ではない範囲で個別に配慮を提供する必要があります。そういった個別対応の必要性を減らすためにも、日頃から継続的にWebサイト自体を改善し、誰もが利用しやすい状態を整えていく必要があると強調しました。
つぎに、Webアクセシビリティの定義と必要性について解説しました。Webコンテンツのアクセスしやすさ、利用しやすさを指すWebアクセシビリティは、特定のユーザーではなく、あらゆるユーザーにとっての使いやすさを意味します。ユーザーやデバイスの多様化を背景として、Webサイトの閲覧環境や閲覧状況は千差万別です。アクセシビリティを高めることで、さまざまなユーザーやデバイスをカバーすることが可能であることを解説しました。
最後に、Web担当者にありがちな誤解や、望ましい取り組み方について説明しました。誤解の例として、アクセシビリティの取り組みは一概にコストがかかるとか、構築時やリニューアル時のみ対応すればよいといった認識が挙げられます。アクセシビリティは、HTML仕様に沿った適切なマークアップなど、基本的な取り組みから実現できます。加えて、Webサイトを運用し続ける限りコンテンツは増減したり更新されるため、継続的な改善が不可欠です。無理のない範囲で取り組みを始め、段階的に取り組みを拡充させることが大切と述べ、セミナーを締めくくりました。
エクゼクティブ・フェロー(CBO)木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。また終盤、やや駆け足になってしまい申し訳ございませんでした。アンケートで「質疑応答の回答がもう少し聞きたかった」とのご指摘をいただき、講師として反省しております。
いっぽう、「入門というタイトルから想像するより充実した内容でよかった」とのお声を頂戴し、大変ありがたく思いました。「なぜ」Webアクセシビリティに取り組まなければならないか、その理由はすでに語られ尽くした感すらある内容ですが、毎年少しずつアップデートしながら再演を繰り返す甲斐を感じます。
「なぜ」をご理解、腹落ちされたならば、いよいよ具体的にWebアクセシビリティの継続的改善に取り組むべき時です。入門セミナーという位置付けの今回のセミナーでは、「どのように」取り組むべきかに触れませんでしたけれども、ぜひお気軽に当社までご相談いただき、何から着手すべきかの検討からご一緒させていただけますと幸いです。
ご質問への回答
サイト全体のアクセシビリティを上層部に説明するための評価方法には、どのような方法がありますか。Google Chromeに同梱されているLighthouseを用いた評価は、有意義でしょうか。
アクセシビリティの評価には、さまざまな方法があります。まず、どのページを対象として評価を行うかです。数十ページ程度の小規模なサイトであれば、全ページを対象とした評価も現実的ではありますが、数千〜数万ページ規模のWebサイトで全ページを対象に評価を行うことは、現実的ではありません。
JIS規格に基づくアクセシビリティ改善という文脈では、サイトの規模を問わず40 ページを選択・評価すれば統計的に十分、との目安が提示されています。この考え方に基づくなら、評価するページ数に関しては、サイト全体の傾向を掴むには40ページで十分でしょう。
具体的にどのページを評価するか、40 ページの内訳については、ランダムに選ぶ方法と特定のページを意図的に選ぶ方法、また両者を組み合わせて選ぶ方法が考えられます。意図的に選ぶ対象としては、サイトの運営者目線で特に重要な、たとえばコンバージョンに直結するページや、アクセス数の多いページを選ぶと良いと思います。
評価方法についてですが、Lighthouseのようなツールを使う評価と、専門家が目視かつ手動で実施する評価、そして両者を組み合わせて行う評価があります。障害当事者を被験者としたユーザビリティテストを実施するのも、評価方法の一案です。
Lighthouseに限らず、ツールを用いた評価は機械的に良し悪しを判断できる内容に限られます。まったく参考にならない、ということはないのですが、本来評価すべき内容のごく一部しか評価していない点は注意が必要です。
最低限対応すべきアクセシビリティと「Nice to Have」な要素を切り分けて、対応内容を判断するのに効率の良い手法があれば知りたいです。
最低限対応すべきアクセシビリティとしては、W3Cの策定するWeb Content Accessibility Guidelines(WCAG)の適合レベルA(シングルエー)に属する達成基準をしっかり満たす、という考え方があります。WCAGは世界的に利用されているガイドラインであり、A、AA(ダブルエー)、AAA(トリプルエー)と3種類定義されているなかで、AはWebコンテンツとして満たすべき優先度の高い適合レベルであるからです。
その文脈において、適合レベルAAAに属する達成基準が求めるアクセシビリティは、相対的に優先度が低く「Nice to Have」に相当するといえるでしょう。
なお、中間的な位置付けの適合レベルAAは、公的機関などが法律によって対応を求められることの多い品質ですが、運用を通じて品質を維持することのハードルは、当然ながら適合レベルAより上がる点に注意が必要です。
海外、特に欧州圏のアクセシビリティ対応は日本よりかなり厳しいという印象があるのですが、実際どれくらい差がありますか?日本と違い努力義務ではなく、対応必須なのでしょうか?
いただいたご質問は、セミナー中に言及したEuropean Accessibility Act(EAA)についてのものと理解します。EAAにおいては、日本の障害者差別解消法にあるような、努力義務と法的義務のような義務の種類はない認識です。その意味では、対応必須とお考えいただいて差し支えないかと思います。
こと厳しさに関して、日本とどれくらい差があるかは一概に表現しにくく、当社サイトに掲載しました以下の記事を参照いただけますと幸いです。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 入門というタイトルから想像するより充実した内容でした。10年ほど前にWEBデザインを勉強しましたが、日々状況も変化しているので、常に情報を入れていかないといけないと実感できてよかったです。
- 日々の業務に翻弄される中、毎年開催される入門セミナーは、初心に戻るきっかけと気づきを得られてありがたいです。