Googleが重視する「E-E-A-T」とは?ユーザー行動との関係から読み解く検索評価の本質
アナリスト 小熊インターネットを通じて情報が爆発的に増えた現代において、ユーザーは「どの情報を信じるべきか」を直感的かつ瞬時に判断するようになりました。検索エンジンに求められる役割も、単なる情報提供から「信頼できる情報源を選別する」ものへと進化しています。
その中で、2010年代後半からGoogleが提示したとされるコンテンツの評価基準が「E-A-T」であり、2022年12月のアップデートにより、「経験(Experience)」が加わった「E-E-A-T」へと進化しました。なぜ「経験」が加えられたのか。そして、これらの要素はユーザーの意思決定プロセスとどのように結びついているのか。本記事では、E-E-A-Tの意義をユーザー行動モデル(AIDMA、AISAS、SIPSなど)の変遷を踏まえて解説します。
目次
- 「E-A-T」とは?
- 「E-E-A-T」への進化・新たに追加された「Experience(経験)」とは
- 「E-E-A-T」とユーザー行動モデルの関係について
- これからのWeb戦略に求められるコンテンツとは
- 「Experience(経験)」の追加
実際に製品やサービスを使用した体験や、具体的な活用例がコンテンツ内に示されていることが、新たな評価ポイントとして加えられました。特にYMYL(Your Money or Your Life)領域では、信頼性や有用性を高める要素として強く求められています。 - 「Trustworthiness(信頼性)」から「Trust(信頼)」への表記変更
これまでの「Trustworthiness(信頼性)」が「Trust(信頼)」に表記変更され、E-E-A-Tの中で最も重要な要素として位置づけられました。
Googleは、「Experience」「Expertise」「Authoritativeness」の3要素は、すべて「Trust(信頼)」を支える要素であり、信頼できないページは、他の要素が優れていても評価されないと明言しています。
そのため、Googleの評価ガイドラインにおいても、「E-E-A-T」の図を以下のように示しています。 - 該当ページのセッション数・エンゲージメント率
- コンバージョン率(もしくはコンバージョンへの貢献度)
- オーガニック流入キーワードの変化
- 直帰率・離脱率の推移
「E-A-T」とは?
まず初めに、E-A-Tとは「専門性(Expertise)」「権威性(Authoritativeness)」「信頼性(Trustworthiness)」の3つの要素を指す言葉です。
2013年3月にGoogleが検索品質ガイドラインを正式に発表してから約1年後、同ガイドラインに「E-A-T」が追加されました。それまで、日本ではあまり浸透していなかった「E-A-T」の概念が、世間に浸透した背景には、「WELQ騒動」が大きく影響しているといわれています。「WELQ騒動」とは、2016年まで運営されていたDeNAの医療系キュレーションサイトにて、他サイトからの転載や根拠がない不正確な情報を記事に掲載していたにもかかわらず、Googleの検索結果で上位表示されていることが問題視されていました。
この問題が社会的な批判を浴びたことで、Googleは検索結果における情報の信頼性と専門性の担保を強く求められるようになり、2017年以降、検索アルゴリズムや評価ガイドラインの見直しを加速させました。Googleは品質評価ガイドラインで、「資格・知見を持っているか(専門性=Expertise)」「その分野で実績や評価があるか(権威性=Authoritativeness)」「情報や発信者が信頼できるか(信頼性=Trustworthiness)」の3要素を明確に示しています。当時は、特に医療・健康・金融など、人の生活に大きな影響を与える「YMYL領域※」において、「E-A-T」がより強く求められるようになりました。
※Your Money or Your Lifeの略。人々の生活や人生に大きな影響を与える可能性がある、お金や健康、安全に関するジャンルを指します。
E-E-A-Tへの進化:「Experience(経験)」が追加された理由
2022年12月のアップデートにて、従来の「E-A-T」から「Experience(経験)」が加わり、現在の「E-E-A-T(Experience・Expertise・Authoritativeness・Trust)」という形になりました。
このアップデートにおける主な変更点は、次の2つです。

引用元:Google 検索品質評価ガイドライン「General Guideline」
「E-E-A-T」と購買行動モデルの関係について
「E-A-T」から「E-E-A-T」へとGoogleの評価基準が拡張された際、最も大きな変更点として「Experience(経験)」が新たに加わりました。この変化は、単なる検索アルゴリズムの進化だけでなく、ユーザーがコンテンツに接触し、意思決定に至るまでの行動パターンが大きく関わっていると考えられます。
現代のユーザーは、情報の正確性や信頼性だけでなく、「その情報を発信している人が実際に経験しているか」という視点でも、コンテンツを評価するようになっています。これは、SNSやネットメディアの普及により、誰でも情報を発信できる時代になったことが大きな理由と考えられます。情報に対する感度は時代によって形成されており、さらに生成AIの登場などを受けて、今後も情報の正確性がより一層重要になっていくでしょう。「検索」の在り方は、メディアの発展やAIのような新技術の誕生などにより変化していますが、それらを理解するうえで有効なのが「購買行動モデル※」だと私は考えています。消費者の意思決定プロセスは、時代によって異なる情報源や接触経路・評価基準を経ており、その変遷にはE-E-A-Tと共通する点が多いと感じます。
以下では、マスメディア時代から現在のコンテンツマーケティング時代に至るまでの行動モデルの変化と、それぞれの時代における「検索」の在り方を紹介していきます。
※消費者が認知から購入に至るまでの過程をモデル化したもの。情報接触や意思決定の変化を把握するためのフレームワーク。
マスメディア時代
インターネットが登場する以前、消費者の購買行動はテレビ・ラジオ・新聞・雑誌といったマスメディアを通じて形成されていました。この時代を代表するのが、マーケティング担当者なら誰しもが聞いたことのあるAIDMA(アイドマ)という購買行動モデルです。
AIDMAは、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という流れで構成されており、企業が一方的に届ける広告や情報に対して、消費者が受動的に反応することを前提としています。この時代において、「検索」という行動はほとんど存在しなかったと考えられます。一般の消費者は、メディアによって編集・提供された情報をもとに購買判断をしており、自ら情報を探しに行くという発想自体が一般的ではありませんでした。
また、情報の信頼性は発信者の「ブランド力」などによって担保され、誰がどんな経験をもとに語っているのかという視点は、重要視されていませんでした。つまり、ユーザーが情報の出どころを精査するという考え方や、その手段としての「検索」は、ほとんど存在しなかったと言えます。

Web時代 / インターネット時代
1990年代後半から2000年代前半にかけてインターネットが普及し、消費者の購買行動に大きな変化が現れました。企業が一方的に情報を発信する時代から、消費者自らが能動的に情報を収集・比較し、判断する時代へとシフトしていきます。
この変化を捉えたのが、AISAS(アイサス)という購買行動モデルです。
AISASは、Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)というプロセスで構成されています。
特に注目すべきは「Search(検索)」というアクションが加わった点です。検索エンジンの発達によって誰もが簡単に情報へアクセスできるようになったことで、商品やサービスについて自ら調べ、比較検討する行動が購買の前提となりました。
この時代の検索は、企業サイトやポータルサイト、個人Blog、掲示板(例:2ちゃんねる、価格.comなど)といった多様な情報源を対象に行われます。消費者は、企業が発信する一方的なメッセージだけでなく、第三者の意見や比較情報を重視するようになり、検索は「自分で判断するための手段」として重要な役割を果たすようになったのです。

SNS時代
2000年代後半から2010年代にかけて、スマートフォンの普及とともにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が爆発的に広がり、消費者の購買行動はさらに変容していきます。この時代に登場したのが、SIPS(シップス)などの新たな購買行動モデルです。
SIPSは、Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share(共有)というプロセスを示しており、従来の「商品中心」の視点から、「共感」や「つながり」を出発点とした購買行動へと変化していることを示しています。
この時代における「検索」は、検索エンジンだけでなく、SNS内での検索(例:Instagramでのハッシュタグ検索、YouTubeでのレビュー動画検索など)も含まれます。発信力のある「インフルエンサー」の登場など、SNSの普及によって大きな変化が生まれました。
消費者は、企業の発信する情報だけでなく、他のユーザーの評価・体験を「シェア」や「いいね」「コメント」などの形で受け取り、自らも発信することで、双方向的な購買行動が生まれるようになりました。検索は単なる「情報収集」の手段から、「共感や共鳴を確認する手段」へと進化したのです。

コンテンツマーケティング時代
スマートフォンとSNSの普及を背景に、消費者が情報を自ら取捨選択し、信頼できる情報源を重視する傾向がさらに強まりました。こうした中で登場したのが、コンテンツマーケティングを軸とした購買行動の潮流です。従来のような広告ではなく、有益な情報や体験価値を提供することによって、見込み顧客との関係性を築き、購買やブランドロイヤルティにつなげるという考え方です。
この時代には、「DECAX(デキャックス)」という購買行動モデルが提唱されました。
Discover(発見)→Engage(関係)→Check(確認)→Action(行動)→eXperience(体験・共有)というプロセスで構成されており、企業と顧客の間に継続的な接点を生み出すことが重視されます。
この時代の「検索」は、単なる情報収集の手段ではなく、自分にとって信頼できる発信者・メディア・専門家を見つける行為に進化しています。消費者は、キーワードで調べるだけでなく、オウンドメディアやBlog記事、ホワイトペーパー、動画、Webセミナー、レビュー記事など、多様なコンテンツを通じて信頼できる情報を深く読み込みながら意思決定を行うようになっています。
また、SEO(検索エンジン最適化)やSNSでの自然流入を意識した情報発信の重要性が高まり、企業は売り込み色を取り除いたユーザーの課題解決に役立つコンテンツを継続的に提供することが求められるようになりました。

これからのWeb戦略に求められるコンテンツとは
AIDMA、AISAS、SIPSといった購買行動モデルの変遷により、「検索」の在り方も変化しています。現在、ユーザーは「情報を受け取る側」から「自ら情報を探し、評価し、選択する存在」へと大きく変化しました。
このような環境において、企業が発信するWebコンテンツも、一方的な広告やサービス説明だけでは成果につながらなくなっています。
特にGoogleが重視する「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」の観点からも、ユーザーが信頼できると感じる情報、ユーザーの検索意図を満たすコンテンツが求められています。以下では、コンテンツSEOやWebサイト制作・運用に携わる私たちの視点から、コンテンツSEOで取り組むべき項目などをご紹介します。
現状把握と競合他社分析
コンテンツを作成する際には、現在進行中の施策や過去に実施したコンテンツを基に棚卸を行うことが重要です。それらのコンテンツにどのような訴求ポイントが含まれているか、そして効果がどうであったかを整理しましょう。
また、競合他社で行っている施策を把握することで、自社に足りていない部分や既に効果的に訴求できている項目を洗い出すことが可能になります。
サイト分析ツール「Googleアナリティクス4」を用いて分析する場合は、「コラムページのディレクトリ」と「キーイベント(もしくはコンバージョンに値するページ閲覧)」を掛け合わせたセグメントを作成するなどでコンバージョンに寄与しているページを導き出すことが可能となります。

コンバージョンに至るまでに起こる障壁を把握する
提供している商品・サービスには、それぞれ狙うべきターゲット像があると思います。しかし、それらのターゲット像がコンバージョンに至るまでには、多種多様な障壁が存在しています。コンテンツは戦略立てて取り組む必要がありますが、障壁の種類によって、発生するタイミングが異なります。ターゲットの状態を一覧化・把握するためには、カスタマージャーニーマップなどでまとめることを推奨します。
以下は、車の購入を例にした商品認知段階におけるカスタマージャーニーマップです。
活用方法は各社によって異なりますが、発信するべきコンテンツ(to be)と自社でのコンテンツ有無(as is)をまとめると、自社で優先的に取り組むべきコンテンツが見えてくると考えられます。

発信すべきコンテンツの選定と制作指針
ターゲットの状況をある程度まとめられたら、次にコンテンツ企画へ進みます。企画の際は、前述のカスタマージャーニーマップを基に「情報構造」が正しく整理されているかを確認することが重要です。単体のコンテンツで発信すべき情報をまとめるだけでなく、ユーザー体験が連続的につながっていることが求められます。
カスタマージャーニーマップ内では、各ファネル別の障壁をまとめるように意識することが大切です。例えば、認知段階において、商品を購入する店舗や購入後のカスタマーサービス情報はほとんど閲覧されないと考えられます。
また、コンテンツの質を保つうえでは、情報の正確さや出典の明記、分かりやすい表現といった基本的なポイントにも注力する必要があります。これは、前述の「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」の観点からも非常に重要となるため、意識して作成しましょう。
コンテンツ制作後の効果測定と改善
コンテンツを制作・公開したあとは、成果の定点観測と改善が欠かせません。具体的には、Googleアナリティクス4やSearch Consoleなどのツールを活用し、以下のような指標を定期的に確認します。
これらのデータを基に、検索意図とのズレがないか、ユーザーの期待に応えられているかを確認します。そのうえで、タイトルや導入文の改善、構成の見直し、関連リンクの追加などを行い、ユーザー体験を継続的に向上させることが、長期的なSEO成果へとつながります。
最後に
本記事では、E-E-A-Tと購買行動モデルの変遷について解説してきました。一見異なるテーマのようにも見えますが、ユーザーの意思決定プロセスや信頼の形成において、密接に関わっていることがお分かりいただけたかと思います。
また、当社ではSEOやコンテンツマーケティングの対応だけではなく、Webサイトの分析まで一貫して対応しております。Webサイトやコンテンツ運用でお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。