2006年11月24日 ジャーナリズムは終わらない

ミツエーインフォメーションネットワークテクノロジー 執行役員兼エグゼクティブプロデューサー
藤田 拓

ifra Expo

先月、10月9日より開催されたifra(INCA-FIEJ Research Association) Expoに参加いたしました。ifraはドイツのDarmstadtに本部に持つ、3000以上の法人が所属する世界的な新聞のアソシエーションです。さすがに元々紙メディアの機関だけあって、1960年からの40年以上の歴史を持っています。毎年行われているこのExpoの今回の開催地はオランダ/アムステルダム。参加企業としては、Kodak、富士フイルムといった大手メーカーをはじめ、DTP・Webオーソライズツールで有名なAdobeや、今やPC市場のみならず音楽機器のメーカーとしても頭角を現してきたAppleも出展・セミナー開催していました。

なぜ新聞のExpoに?

Web制作会社に所属する私がなぜ新聞関連のExpoに?と思われるかもしれません。しかし、今や新聞業界はWebを通して記事はもちろんのことコラムや社説を配信することができるため、テレビやラジオの速報性を獲得することが可能になったのです。

更に、新聞のテキストを中心としたその特性は、他メディアよりもWebとの親和性が高く、システム化しやすいといえます。こういった可能性は多くの人が感じとっているようで、今回ifra主催の5セッションのうち一番早く売り切れになった人気セッションは「クロスメディア」でした。

また、購読料と共に新聞社の収益源となる広告についてもWebの波は広がっています。広告費におけるWeb広告の比率は上昇しており、またインターネット環境の充実とともに、その見せ方はクリック誘導による直接的な集客といった手法のみならず、ブランディングのためのマテリアルとして認知されはじめました。この点においてもWebは取り組み甲斐のある領域といえるでしょう。

市民発信の記事

クロスメディアのセッションをはじめ、各セッションで何回か耳にしたのはUGC(User Generated Content)という言葉でした。例えば、オーストリアの新聞社、Kleine Zeitungが発表した例としては、ユーザーにメールやSMS(携帯のShort Messenger Service)で写真やテキストをどんどん投稿してもらい、それをサイトで公開したり、実際に新聞の一面にまで取り上げるなど、ニュースリソースとして市民が重要な役割を果たしていることが強調されていました。

また、Webサイトならではのユーザー投稿によるビデオ配信もありました。場を与えるとユーザーが育つのか、こちらのコンテンツでは玄人並みのビデオが見受けられました。上記のような相互作用的な流れはまさしくWebならではの流れでしょう。

昨今、Web2.0という言葉が流行していますが、そもそもWebはWeb2.0的なものであって、逆に今までが旧来のマナーでしか使うことができておらず、Webの力をフルに使いこなせていなかっただけなのでは、と私は思います。このWeb本来の力を新聞社が利用しはじめ、さまざまな可能性を探っているという印象を各種セッション、イベントで持ちました。

Webと基幹の融合

更に目にしたのは、情報をデジタルとして管理することで可能となるWebと印刷システムとの融合です。記事データはWebも印刷も変わるものではありません。違いはその出力先および出力内容であり、それを管理するCMS(Content Management System)が出力先に対応しコントロールすればよいのです。こういったワンソースマルチユースへのシステム的取り組みは今後当たり前のことになってくるでしょう。

また、この夏出席したTypo3 Developer Daysで紹介されていたCMS+EC+ERPの事例や、CMSのプロダクト紹介サイトでERPモジュールがよく見受けられるようになったこと、そして基幹側のインターフェースにWebブラウザを採用するという方向が増えてきていることを踏まえると、Webと基幹システムとの連携についての事例も近い将来珍しくなくなるのでは、と考えます。

Do The Right Thing

今回のセッションで「We don't have to do the thing right, but we have to do the right thing」という発言を耳にしました。言葉通りにいうと、「正しくやるのではなく、正しいことをやるべき」という意味になりますが、「従来のことを正しくやるのではなく、今の状況において正しいといえることをやるべきだ」という主張が籠められています。

世の中で起こっているモノゴトを駆け巡りながら探究し人々に伝えてくれる新聞は、よりリアルタイムにさまざまな情報を取得・配信できる道具を利用し、新たなフロンティアに進みつつあります。ジャーナリズムの鋭い目は、このスモールワールドのステップを縦横無尽に疾走し、これからも更なる「今の」真実を伝えてくれることでしょう。

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