2006年11月17日 RIA、体験から共感へ

ミツエーメディアクリエイティブ 取締役
橋本 敬

10月23日から1週間ほど、米国はラスベガスで開催されたAdobe MAX2006に参加いたしました。RIA(Rich Internet Application)に関する刺激的な情報を得られただけでなく、今後のリッチコンテンツについて考えを整理するよい機会となりました。

RIAを中心としたセッションに参加して感じたのは、私たちの生活へのインターネットの浸透度や技術の進化に合わせて、表現の分野もその形を変えていかなければならないということです。この半年ほど、Webのクリエイティブがこれから向かうべきところについて考えていたのですが、カンファレンスに参加してそのヒントを得たように思います。特にリッチコンテンツと呼ばれる分野においては、これまでのアプローチとはまた違った角度からの取り組みが必要な段階にきているのだと確信しました。

これまでのリッチコンテンツは、主にオピニオンリーダーとしてマーケットを牽引するユーザー層に対して投下されてきました。Flashを始めとするアプリケーションを用いたリッチコンテンツの表現力が、アピールすべき商品やサービスの魅力を訴えるのに非常に大きなアドバンテージを持っていることはもはや疑いの余地はありません。趣向を凝らし、見る人をワクワクさせるこうしたスペシャルコンテンツは私たちも今後さらに力を入れたい楽しみな領域のひとつです。

このようなコンテンツの特徴は、臨場感あふれる演出で感情に訴えかけたり、商品やサービスの疑似体験を可能にするものであり、こうした体験がマーケットを牽引する原動力となります。RIAはこうした「体験型」のコンテンツの作成を得意としますが、私はもうひとつ活躍の場があるのではないかと考えています。

それは「共感型」のコンテンツです。これはいわゆるスペシャルコンテンツが実現する、機能や利便性の訴求や刺激的な演出ではなく、エッセンスを抽出し訴求することで共感を促す役割を担うものです。体験型のコンテンツが特定のユーザーをターゲットとするのに対し、共感型のコンテンツはどちらかというとオピニオンリーダーに牽引される不特定のユーザーをターゲットとすると言うことができます。

今回MAXに参加して、最大化された機会を最大限に活用するためには、体験型のコンテンツだけではなく、それをフォローする共感型のコンテンツにも注力することはますます重要になっていくのではないかという思いが強くなりました。

この共感型のコンテンツで重要なのは、シンプルさです。表現においても、操作においても、特別な知識や経験を必要とせずに誰もが利用できることが必要となります。ここに私たちが取り組むべきもうひとつのクリエイティブがあると感じています。不特定多数のユーザーが見て共感できるコンセプトとデザイン、迷うことなく、飽きることなく使える操作性。これを実現するのはまさにRIAなのだと考えています。ただし、この領域でRIAを活用するためには、進化する技術に合わせ、その活用方法と表現方法を成熟させることが急務だと感じています。表層的な部分のシンプルさを実現することと複雑な内部処理を行うことは別次元であることは言うまでもありませんが、これまでは複雑な操作や理解をユーザーに求めるコンテンツがあったようにも感じます。目的や商品特性、ターゲットとなるユーザーを考えれば、これまでのリッチコンテンツは十分にその役割を果たしてきたと思いますが、インターネットのユーザーリーチを考えた場合、今後さらに万人向けのシンプルなコンテンツが求められるのは間違いないと思います。

自動車に乗る時にその仕組みを考えながら運転をしたり、電子レンジを使う時にマニュアル片手に、という人はあまりいないと思います。ともにきっと内部は複雑な仕組みでできているのだと思いますが、ほとんどの人はそれを意識することなく利用しているはずです。

生活の中に浸透していくなかで、私たちが提供すべきクリエイティブもまた変化していくのだということを改めて強く感じています。

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