2007年4月24日 SXSW 2007参加報告

Web開発グループ Web標準チーム フロントエンド・エンジニア
木達一仁

先月のお話になりますが、今年もSXSW(South by Southwest Festivals + Conferences)に参加してきました。SXSWは映像、音楽、そしてインタラクティブの三つの部門にわたる一種のお祭りで、期間中は多くのパネルディスカッションやプレゼンテーションが催されるほか、展示会なども同時開催されます。なかでもWebを扱うインタラクティブ部門は今年で14回目を数えますが、自分は昨年初めて参加し(コラム「SXSW 2006参加報告」参照)、「マイコミジャーナル」にレポート記事「活動の新たなステージを迎えたWeb Standards Project」を書かせていただきました。今回につきましても本コラムを通じ、印象深かったパネルをご紹介しながら、簡単に同イベントのご報告をしたいと思います。

How to Bluff Your Way in Web 2.0

初日のパネルのなかで最も印象的だったのが、Jeremy Keith氏とAndy Budd氏のお二人が面白おかしくWeb 2.0とは何かを語った「How to Bluff Your Way in Web 2.0」。当日使用されたスライドは「Andy Budd::Blogography: How to Bluff Your Way in Web 2.0」でダウンロード可能です。Web 2.0を標榜するサイトに特徴的なビジュアルデザインや言い回しをネタに、会場中の笑いを誘っていました。Webがまだその真価を発揮するに至っていない点において、個人的にはWebはまだバージョン1.0にすら達していないと感じており、この「Web 2.0」というはやり言葉もあまり好きではないのですが、お二人のパフォーマンスは楽しませていただきました。

ちなみにこの「How to Bluff Your Way in ○○」というシリーズは今年ではや三回目(2005年がCSS、昨年がDOM Scripting)。来年はどんなキーワードを対象に「分かったフリをする(bluff)」つもりなのか、今から楽しみです。今年一年のあいだに沸き起こるWebデザイン/Web開発のトレンド次第でしょうが、個人的にはmicroformatsあたりに期待しておくことにします。

Unleashing CSS: How I Learned to Stop Worrying and Love Internet Explorer 7

昨年10月にInternet Explorer 7(IE7)が登場して既に半年が経過していますが、『CSS Cook Book』の著者として知られるChristopher Schmitt氏が、IE7時代を生き抜く術を伝授しようというパネル。スライドは「Christopher Schmitt SXSW07: Unleashing CSS」にてダウンロードできます。IEのみで利用可能な条件分岐コメントの利用を推奨していた点には同意しかねるのですが(HTML文書に永続性を期待すればこそ、表現レイヤーに関するブラウザ個別の対応はスタイルシート側だけで完結できるよう実装したほうがベターと考えているため)、日々積極的に情報収集に努めようとか、あるいはIE7で改善された実装(透過PNG形式の画像や属性セレクタなど)をより積極的に使おうという呼びかけには、深く頷きました。

英語圏におけるIE7のシェアはWindows OSの自動更新による配布と共におおむね上昇しているようですが、日本でもそう遠くない時期に同様の状況が生まれるでしょう。既に日常業務における要件としてIE7対応は珍しくなくなっていますが、スタイルシート設計上のベースラインが(IE5やIE6ではなく)IE7となる日を楽しみに待ちたいと思います。

Ruining the User Experience: When JavaScript and Ajax Go Bad

サイト上のユーザー体験を台無しにしない、JavaScriptやAjaxの使い方を教えてくれたパネルです。まずサービスのレベルを3段階に定義(「Level 1: No Frills」「Level 2: Dress It Up」「Level 3: Make It Sing」)、積極的なインタラクションやカスタマイズ性の提供といったLevel 3の対応は、Level 1やLevel 2を達成したうえで行うべきだ、と述べていました。すべての環境における正常動作を保証するLevel 1を設計するより前にあらかじめLevel 3を計画しておくことはもちろん可能ですし望ましいことですが、そこにあまり専念してしまうと肝心のアクセシビリティを損ないかねない、ということでしょう。

サービスに複数のレベルを定義する考え方は、狭義のWeb標準準拠=CSSレイアウトにもやや通じるものがあり、たとえばYahoo! UI LibraryではGraded Browser Supportを規定し複数のグレードでもって対応度合いを定義しています。そういう意味では参考になったパネルでした。なお、スライドは「And now the fun begins ¬ Easy Reader」でダウンロード可能です。

Everything You Always Wanted to Know About the Mobile Web...but Were Afraid to Ask

日本国内と海外とではモバイル環境、とりわけ携帯電話を巡る事情は大きく異なっていますが、PCからではなくモバイル機器を使ってWebにアクセスする人口が増加している傾向は似ていると思います。そうした状況を踏まえ、モバイル向けのWebを構築する際にどういったポイントに注意すべきか?を分かりやすく総括してくれたパネルです。戦略や情報アーキテクチャ、デザイン、モバイル環境に特化したWeb標準、といった順に話が進められました。

モバイル向けWeb標準として紹介されていたのがXHTML MP(XHTML Mobile Profile)とWireless CSS。いずれもW3Cの勧告するXHTMLやCSSのサブセット的な内容で、Open Mobile Alliance(OMA)が策定しています。モバイル環境に搭載されるブラウザも日々進化していますが、デスクトップブラウザ同様、標準仕様に準拠する方向で進化し続けることを期待したいと思います。スライドは「SXSW 2007 Mobile Web Presentation | Blue Flavor」よりダウンロード可能。

Best Practices for Teaching Web Design

Web Standards Project(WaSP)International Liaison Group(ILG)の活動でご一緒しているStephanie Troeth氏と、Web標準関連の情報を精力的に発信し続けるBlog「Web Teacher」で知られるVirginia DeBolt氏による教育関連パネルです。優れたWebサイトの条件とは何か、それを達成するうえで必要となるベストプラクティスは何かを定義し、正しく教えるためには正しいことを自ら知る必要がある、ということを力説されていました。

いまだにレガシーな実装、たとえばテーブルレイアウトに代表されるような実装手法を主に教えている教育機関もあるようですが、請負業務としてのWeb制作の主流は標準技術を適切に用いてアクセシビリティを実現する方向へシフトしつつあるわけで、そうした旧式のカリキュラムが廃れるのはもはや時間の問題でしょう。シフトをよりスムーズかつ短期的に終えるには、産学間の連携が必要なのはもちろん、教える側に立つ人々がこの未成熟で動きの活発なWeb業界の動きにどれだけリアルタイムに追随できるか、にかかっているのではないでしょうか。

Browser Wars Retrospective: Past, Present and Future Battlefields

IE、Opera、Mozillaの各ブラウザベンダーより代表者が集まったのがこのパネル。Safariの開発者が出席しなかったのはやや残念であり、またパネルの時間中にシェア競争を背景とした激しい意見の応酬こそありませんでしたが、たいへん興味深いパネルでした。

まず三者がそれぞれにプレゼンを行い、MozillaBrendan Eich氏はOpen Webをテーマに語りました。MicrosoftChris Wilson氏はWebがパワフルなプラットフォームであり、(IEの圧倒的ユーザー数を根拠に)いかにWebを壊さずに発展させられるか、つまり後方互換性維持の重要性を強調。Opera SoftwareCharles McCathieNevile氏は、閲覧環境が多様化するなかで、それぞれに異なるリソースを用意するような一昔前のモバイル向けのWebのような状況には戻りたくないと語り、アクセシビリティの重要性を主張していました。それに続いて行われた議論を通じては、AdobeのScripting Engineが今後Mozilla/Firefoxで採用されるといった興味深い情報も得られ、オープンとは何か、標準とは何を根拠にそう呼ばれるべきなのか?といった点を再び考える良い機会となりました。

イベントを振り返って

WaSPは昨年同様に年次総会を公開形式で行い、Street Teamの発表などを行ったほか、開催期間中には興味深い話を多く耳にすることができました。即時に製品やサービスに反映できるような情報はそう多くないにせよ、WebデザインやWeb開発のトレンドを肌で感じ取り、自分なりに咀嚼をし、またそこに集う人々とコミュニケーションを図ることができる点で、SXSWには明確なメリットと参加するうえでの意義を感じています。既に来年のスケジュールが発表されており(インタラクティブは2008年3月7〜11日)、日本においては年度末の忙しい時期の開催である点は変わりませんが、興味をお持ちの方は是非参加を検討されてはいかがでしょうか。

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