2011年3月4日 Web標準からモバイルへ

取締役
木達 一仁

3月1日付けで、私の統括しているR&D本部のいち組織である「Web標準チーム」を「モバイルチーム」に改称しました。チームに所属するスタッフは同じままですし、業務におけるスマートフォン対応の割合が既に増加していましたので、仕事の中身についても大きく変わるわけではありません。しかし私は、これを単なるチーム名の変更ではなくWeb標準チームの発展的解散と捉え、格別の想いをもって受け止めています。

Web標準チームはその名の通りWebの標準、とりわけフロントエンドにおける標準(マークアップ言語やスタイルシート、スクリプト)を用いた設計・実装に専門的に従事することを意図したチームです。その端緒は2004年2月の私の入社にまで遡りますが、以来組織の名称は何度か変われど、一貫してWeb標準というテーマに軸足を置いてWebコンテンツの設計や実装に携わってきました。そのようなチームを発展的に解散するということは、当初に期待された役割を果たし終えたことを意味します。

思い起こせば7年前、まだ「Web標準」なる言葉が流通していなかった(海外で定着し始めていた「web standards」という言葉を日本語としてどう表記すべきか、明確な社内ルールも無かった)頃、スタイルシートを全面的に採用したビジュアルデザインの実装は現在ほど常識化していませんでした。社内のみならず業界全体においても、Web標準をやや軽んずるかの傾向、少なくともその意義が広く認知されていない状況があったように思います。

そうしたなか、Web標準を適切に利用してコンテンツを実装することが、Webサイトにとっての機会、価値、信頼を最大化する手段として極めて有効との前提にたち、Web標準 準拠サービスをリリース。ほぼ同時期にW3Cに加入し、Web標準を利用するだけではなく、それをつくる側の視点をも得ながら、Web標準を積極的に活用できる業務の拡大と、そのためのさまざまな普及啓発活動、また一連の取り組みを支えるための体制構築を進めてきました。

社内での取り組みと並行して業界全体がWeb標準志向へとシフト、またブラウザベンダーもより積極的にWeb標準を支持するようになりました。そうした追い風が吹くなか、標準準拠の必要性をご理解くださった顧客企業の皆様に支えられ、また多くの優秀なスタッフにも恵まれ、Web標準チームの取り組みは一定の成功を収めたと思います。あいにく、「すべての」Webサイト構築・運用において「当然のこととして」Web標準に準拠し、そのための社内標準化されたワークフローを適用する状態まではあと一歩というところですが、それを実現するための業務の「型」や「環境」は完成したとの認識です。

それこそはWeb標準チームが発足当初に期待された主たる役割だったわけで、発展的かつ前向きにチームを解散可能なタイミングを迎えたと言えます。しかし私は3年ぐらい前から、早急にWeb標準チームの軸足をモバイル領域に移しノウハウを蓄積し始めなければ、取り返しのつかない遅れを取るのでは、との危機感を抱いていました。ですから、発展的解散とはいえ残念なことがあるとすれば、それに至るまでの時間を当初の目論見より多く要したことでしょう。もちろんその非は、すべて私にあるのですが。

ともあれ、今後Web標準改めモバイルチームは、短期的にはスマートフォンやiPadのようなタブレット型デバイスを含む広範なモバイル機器への対応をより専門的に扱うことになります。また中長期的にはテレビを含め、非PC向けのWebコンテンツの設計全般を扱うことになるでしょう(その頃には、チーム名称を変更する必要が再び生じるでしょう)。

古くからある高機能携帯電話(俗にいう「ケータイ」ないし「フィーチャーフォン」)と異なり、急速に普及しつつあるスマートフォンやタブレット型デバイスに搭載されているWebブラウザは、PC向けのものと比べ遜色無い表示能力を有しています。その意味では、Web標準チーム時代の成果や資産を存分に活かすことができます。とはいえ、過去にはあまり直面してこなかった課題にも取り組む必要があります。

これまで多くの場合、物理的に大きな表示画面とハードウェアキーボード、マウスを備えたような閲覧環境を主なターゲットとして設計してきました。つまり、特性が比較的似通ったカテゴリーのハードウェアに特化したなかで、ブラウザの種類やバージョンをまたいでの相互運用性を担保してきたわけです。今後、モバイル機器はより多様化しながら普及し続けるものと思われますが、そうした状況においては、ハードウェア特性の違いをもまたいでの相互運用性を考慮した設計・実装が求められることが増えるでしょう。

幸い、チーム名の変更に先立って、スマートフォン対応業務を通じ、モバイル領域の知見を蓄積し始めています。また、いずれそうしたモバイル対応/非PC対応業務の割合が増え、全社的にそれに取り組むようになる日が訪れるのを見越して、ワークフローの定義やその社内標準化に向けた取り組みを開始しています。過去の経験をフル活用しながら、モバイルチームは来るべき時代に向けた新しい「型」や「環境」を生み出すものと期待しています。それが当社にとってのみならず、業界全体にとっても益のある、大仰に言ってWeb全体の発展に資する活動にもなるよう、私自身尽力していきたいと思います。

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