2021年12月24日 レジリエンスという品質

取締役(CTO)
木達 一仁

年の瀬を迎え、昨年とは異なり、人数を絞るなどの対策を講じたうえで忘年会を執り行う企業は、少なくないようです。それだけ、新型コロナウイルスの感染拡大は抑えられていると認識していますが、いつオミクロン変異株がいわゆる「第6波」を引き起こすとも限りません。

結局、コロナ禍より前の生活様式をいくらか取り戻せているものの、私たちは引き続き、パンデミックの日常化した世界を生きていると言えるでしょう。当社が実施しているセミナーについても、感染拡大防止の観点から、オンライン開催の形式を維持・継続しています。

「2022年のWebデザイントレンド 解説セミナー」は開催見送り

セミナーといえば例年、この時期には新年のWebデザイントレンドを占うセミナーを開催してきました。そろそろ今年も告知があるのでは……と期待してくださっている方がいらっしゃるかはわかりませんが、あいにく「2022年のWebデザイントレンド 解説セミナー」を開催する予定はありません。

大局的に見て、セミナーを開催し皆様にご紹介できるほどの変化が、昨年と今年のあいだで見られないというのが、開催を見送った最大の理由です。もちろん、ミクロ視点ではさまざまな変化が起きていますが、マクロ視点においては大差ない認識です。

また別の理由として近年、どちらかといえばUX(User Experience)よりDX(本稿ではデジタルトランスフォーメーションではなくDeveloper Experienceの略語)、つまりWebの使い手より作り手側の体験に関する変化が顕著に映る、というのもあります。

DX(開発者体験)に見られる変化

DXに関する変化は、総じてモノリシックアーキテクチャからマイクロサービスへの移行という、システム開発のトレンドを踏襲したものと、私には感じられます。ミツエーテックラジオで何度か取り上げたJamstackは、ある意味その変化の象徴です:

短期的に、モノリシックCMSが消えて無くなることはないでしょうし、当社としてもサポートを継続しています。しかしニーズの多様化に伴い、機能的にもコスト的にもモノリシックCMSがマッチしにくくなってきたことが、Jamstackのような「合わせ技」への人気を後押ししているように感じます。

バックエンドに寄せて書きましたが、小分けに部品化のうえ全体を密結合から疎結合に寄せる点では、フロントエンドでも同じ変化が起きている認識です。もっともフロントエンドでは、UIを細分化することで個々のモジュール(=UI部品)の再利用性やテスト容易性、実装効率を向上させる工夫が、以前からなされてきました。

そうしたUIのモジュール化は、2010年に登場したレスポンシブWebデザインにとっても、都合の良いアプローチでした。とはいえ、ビジュアルデザイン上の柔軟性は主に画面サイズ、より厳密にはビューポートのサイズに依存して設計せざるを得ないことが多く、それがモジュール単位の取り扱いを難しくしていた時期が長く続いていました。

しかし、CSSのフレックスボックスグリッドレイアウトを活用できる環境が整ったことで、ビューポートに依存して設計しなければならない場面は、徐々に減りつつあります。加えて、コンテナクエリと呼ばれる新たなCSS仕様の開発と実装が進められており、モジュールの独立性や自由度を高めやすく、すなわちモジュールを開発・管理しやすくなることが期待されます。

「分化」というトレンドとレジリエンス

かくしてバックエンドにしろフロントエンドにしろ、「分化」のトレンドが続いていると私は捉えています。そもそも、あらゆる事物は成熟と共に分化する傾向にあると考えている私には、ごく自然な成り行きに思えます。そして、私が考える分化した状態の真価とは、環境変化に対応しやすい、英語的には「レジリエンス」という言葉で表現される品質を備えることだと考えています。

レジリエンスとは、辞書的には強靭性という意味ですが、要するに回復力があるということ。コロナ禍に関する記事で、この単語を見聞きした方もいらっしゃるでしょう。社会全体が激しく変化し続ける現代では、さまざまな場面でこのレジリエンスが求められつつあり、WebサイトやWebコンテンツもまた例外ではありません。

分化しているということは、何がしかの環境変化に対し、相対的にコストのかかりやすい全体最適によってではなく、短期的に実現可能な部分最適によって対応できる、ということでもあります。一定の複雑さを有するWebサイト / Webコンテンツであれば尚更、分化によってレジリエンスを備えることの意義は、今後ますます高まるでしょう。

そのようなメリットがあるいっぽう、分化した個々を統合した状態において、レジリエンス以外の品質(アクセシビリティ、ユーザビリティ、表示パフォーマンスなど)を高めるには、より高いレベルのインテグレーション能力が必要になる、と考えます。

当社にとってはそれは一種の課題であり、また終わることのない挑戦でもあります。しかし振り返ってみれば、Web標準準拠をはじめ当社のこれまでの品質向上の取り組みは、いかにしてWebサイト / Webコンテンツでレジリエンスを実現するかという命題に対する取り組みでもあったように思います。

年末のご挨拶

来る2022年、レジリエンスという品質や、それに紐づく価値の提供を通じて、お客様のビジネス自体のレジリエンスに貢献できればと思います。顧客の皆様におかれましては、より一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

お知らせしました通り、当社の年末年始休業日は12月29日から来年1月3日まで。2022年の営業は、1月4日からです。引き続き、新型コロナウイルス感染症にはお気をつけて、良い年末年始をお過ごしください。

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