サイトリニューアルに不可欠なアクセシビリティの視点(2月5日開催)
2026年2月5日、当社エクゼクティブ・フェローの木達が登壇し、Webサイトのリニューアルを検討する企業の担当者を対象に、『サイトリニューアルに不可欠なアクセシビリティの視点』をオンラインで開催しました。改正障害者差別解消法の施行を背景としてアクセシビリティへの関心が社会的に高まるなか、リニューアルは組織がアクセシビリティへの取り組みを本格化させる好機でもあります。

木達の講演の様子
はじめに、Webコンテンツにおけるアクセシビリティの基本的な考え方として、一部の人々への配慮が、結果としてより多くの人々の利便性の向上につながることを解説しました。また、Webの利用者もWebへのアクセス手段も多様化しており、アクセシビリティを高めることがコンバージョンの最大化につながる点を紹介しました。そして、Webアクセシビリティは機械可読性という品質を前提としているため、その改善がSEO(検索エンジン最適化)やLLMO(大規模言語モデル最適化)につながることを示しました。
次いで、障害者差別解消法について説明しました。同法では、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供、環境の整備の3つが要点です。Web担当者は障害当事者からWebサイトのアクセシビリティについて改善を求められた際、短期的な対応が難しい場合でも、たとえば電話やメールなどの代替手段を提供し、目的の達成を支援することが求められます。また、そのような個別対応が都度発生する状況を防ぐためには、日頃からアクセシビリティを高めておく「環境の整備」が重要であることを説明しました。
最後に、リニューアル後を見据えた体制づくりと継続的な取り組みの必要性を強調しました。アクセシビリティの向上が一時的な対応ではない以上、PDCAサイクルを回し続けるための体制構築が不可欠です。リニューアルをもってアクセシビリティ対応を終えてしまうのではなく、サイトを運営し続ける限り常に満たすべき非機能要件としてアクセシビリティを捉え、その継続的改善に取り組みましょう、と呼びかけました。
エクゼクティブ・フェロー 木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。昨年11月のサイトリニューアル・カンファレンスでの登壇時より時間を延長したぶん、個人的な趣味である登山の例え話を織り交ぜつつ、目論見どおり内容をしっかりお伝えできたと思います。
アンケートでお答えいただいた内容にはすべて目を通させていただきましたが、なかでも
リニューアル時にアクセシビリティにおける高い目標を設定しようとしていたので、本来熟成すべきものと伺い大変勉強になりました。
というコメントは、ありがたいものでした。本セミナーを非常にタイムリーに受講いただけたことと察します。今後臨まれるであろうリニューアルの参考となれば幸いです。
関連してセミナー当日、コラム『「急がば回れ」のWebアクセシビリティ診断』を掲載しています。同コラムの内容も、あわせてご確認いただければと思います。また
自社サイトには数多くのページがあり、アクセシビリティに対応できていないページも少なくありません。これらのページを今後どのように改善し、対応を進めていくかが大きな課題のひとつだと認識しています。
というお悩みをお寄せいただきました。数千、数万ページ規模のWebサイトも珍しくない昨今、どこから手をつければ良いかわからない......というのは、ごもっともです。そこで重要なのは、しっかり優先順位をつけて取り組むことだと思います。
アクセス数が多く、実際にユーザーに利用される機会の多いページや、コンバージョンに直結するページ、たとえば入力フォームなどに範囲を絞って優先的に取り組んではいかがでしょうか。品質低下が起こりやすいという意味では、更新頻度の高いページの優先度を上げて取り組むのも一案かと思います。
ご質問への回答
Webサイトをリニューアルした際、制作会社の担当者のスキル不足や、対応の不備が後から判明することがあります。事前の業者のレベルを見極めるには、どのようなポイントを確認すればよいでしょうか。
業者選定の段階で、たとえ過去の実績や事例を確認のうえ発注したとしても、要求レベルを満たしていないことが後から判明する可能性を完全に排除することは、難しいと思います。
1つの方法として、その業者自身のWebサイトがどの程度アクセシブルかを確認することが挙げられます。顧客に対して提供可能なアクセシビリティ品質が、自社サイトでも担保されていて然るべきだからです。簡易的なチェックツールなどを用いて、コーポレートサイトのアクセシビリティを確認してみるとよいでしょう。
また、アクセシビリティに関する情報発信にどれだけ積極的に取り組んでいるか、確認することも有効です。技術力が確かでなければ社外向けの発信は難しく、もし継続的に発信している業者であれば、それだけ専門性や技術力を備えている可能性が高いと考えられます。
アクセシビリティ診断の頻度は企業よって様々である印象を受けますが、実際どれくらいの頻度で実施すべきでしょうか。また、WCAGのガイドラインは抽象的な表現のため、診断企業によって診断結果が異なると伺ったことがあります。そのため、診断企業は基本的に変更しない方がよいでしょうか。
診断の頻度について、明確な決まりはありません。ただし、Webサイトに古い診断結果を掲載したまま更新がない場合、アクセシビリティへの取り組みに積極的ではないとの印象をユーザーに与える可能性があります。
すべての対象範囲で一律にアクセシビリティ診断を実施するのではなく、先述のとおり優先順位をつけてアクセシビリティ診断を計画してはいかがでしょうか。たとえば優先度の高いページについては比較的高頻度で毎月行い、それ以外の優先度が低いページについては半年〜1年に1回行う、といった考え方です。
また、診断企業の選定についてですが、おっしゃる通りWCAGの記述には抽象的な表現が少なからず存在しますし、それに起因して診断結果が異なる可能性はあります。しかし、そもそも機械的に適合・不適合を判断できない点については人間が判断しなければならない以上、診断を行う担当者単位で結果が異なる可能性があることを、ご理解いただければと思います。
そういうわけで、診断結果に対し一定の信用・信頼が置ける限り、診断企業を変更する必要はないでしょう。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 無闇にハードルを上げずに出来ることから始めて続けていく事が大事だとわかったのが良かったです。
- 音声も聞き取りやすく、内容が理解しやすかったです。これから始まるリニューアル作業の参考になりました。