「急がば回れ」のWebアクセシビリティ診断
エグゼクティブ・フェロー木達 一仁既存サービスの1つであるWebアクセシビリティ診断を、このたびリニューアルしました。これまで「クイック診断」と「スタンダード診断」という、2ラインナップでご提供してきましたが、今後はレベル1〜3の3ラインナップでのサービス提供となります。
なぜこのようなリニューアルを行なったかについては、1月29日付けで発行したニュースリリースの「リニューアルの意図と変更点」において、以下のように記しました。
まずは機械的に検出できる問題が発生しない状態を実現し、そのうえで診断や修正に時間を要する問題に取り組んでいただく流れを意図しています。レベル1から順を追ってご利用いただくことで、Webアクセシビリティの継続的な改善を実現しやすい形態としています。
多くの組織が今日、国際標準であるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)や、国内規格のJIS X 8341-3における適合レベルAAの品質を目標に掲げ、Webアクセシビリティに取り組んでいると認識しています。それ自体は、素晴らしいことです。
なぜなら、公共性の高いWebサイトやWebサービスでは特に、国内外を問わず適合レベルAAの品質が求められることが一般的だからです。事実、日本においても、みんなの公共サイト運用ガイドラインが公的機関に対し求めているのは、適合レベルAAの品質です。
しかし、どれだけの組織がその品質を達成し、なおかつ維持することの難しさを理解したうえで、アクセシビリティに取り組んでいるでしょうか?適合レベルAおよびAAの達成基準は、最新のWCAGで合計55あります。55ものルールを、対象ページすべてにおいて厳格に守り続けるのは、なかなか大変なことです。
制作会社などの制作パートナーを含め、Webサイトの運用に携わる全員が、適合レベルAAの品質を達成し続けるために必要な知識や経験を有する前提があれば、何の心配もありません。唐突に抜き打ちでWebサイトの品質をチェックしても、アクセシビリティ上の問題は検知されないはずです。
しかし、私が見聞きする限り、そのような組織は少数派ではないかと思います。そうでなければ、たとえばWeb AlmanacやThe WebAIM Millionといった調査結果にあるような、ごく基本的なアクセシビリティ要件すら満たせていないコンテンツが、Web上に少なからず存在することは説明できません。
Webアクセシビリティに取り組む組織の多くは、定期的ないし不定期に公開済みコンテンツの品質を診断しているはずですが、制作する側も診断する側も目標の達成に向け一丸となって取り組めない限り、その診断はコンテンツに「問題がない」ことを確認するというより「問題がある」ことの確認に終始しがちです。
そうなれば早晩、終わることのない「モグラ叩き」状態に陥り、関係者全員が疲弊してしまい、ユーザーにとっての使いやすさを継続的に改善するという本質を見失ったまま、取り組みが形骸化していく懸念が強まることになります。
だからこそ本コラムのタイトルに掲げ、そしてWebアクセシビリティ診断サービスをリニューアルした意図にあるような、「急がば回れ」のスタンスでWebアクセシビリティに取り組むべきではないかと私は思います。
つまり、たとえ適合レベルAAという高い品質目標を掲げたにせよ、まずは機械的にソフトウェアないしツールで検知できる問題の生じない状態を目指すべき、ということです。
機械的に検知できるということは、短時間で診断とその結果に基づく改善を繰り返すことが可能ということです。その繰り返しを通じて、関係者が比較的容易に検知できるレベルのアクセシビリティ品質を理解し、より高い品質を目指すうえでの土台を築くことが期待できます。
人手をかけなければ検知できない、つまり診断と改善により長時間を要する取り組みは、その後からでも決して遅くはありません。むしろ、組織の準備が不十分なうちに適合レベルAAを前提とした診断を行うほうが、よほどリスクがあると私は考えます。
以前、私は『Webアクセシビリティへの取り組みで問われるべきは「成熟度」』というコラムを書きました。品質が高いに越したことはありませんが、サイトを運営し続け、コンテンツを公開し続ける限り終わることのないWebアクセシビリティへの取り組みにおいて、重視していただきたいのは継続性と成熟度です。
そういうわけで、これからWebアクセシビリティに本腰を入れて取り組んでいきたいとお考えの方、またすでに取り組んではいるものの、なかなか成果を実感できていないとお考えの方には、ぜひ当社のWebアクセシビリティ診断の活用を、ご検討いただけたらと思います。
なお、今回のサービスリニューアルに合わせ、アクセシビリティ ソリューションのページも内容を刷新しました。あわせてぜひご覧ください。
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