Webアクセシビリティ診断 徹底活用法(2026年6月4日開催)
2026年6月4日、当社エクゼクティブ・フェロー(CBO)の木達が登壇し、アクセシビリティ改善の継続や診断結果の活用に課題を持つ企業のWeb担当者の方を対象に、「Webアクセシビリティ診断 徹底活用法」をオンラインで開催しました。本セミナーでは、アクセシビリティ診断サービスの特長や活用方法を整理し、継続的な改善と組織への定着を実現するための考え方について解説しました。

木達の講演の様子
はじめに、Webアクセシビリティの改善が終わりのない取り組みである点に触れ、非機能要件として継続的な維持・向上が求められるものだと説明しました。
つぎに、WCAGに基づく診断では機械的な検知によって把握できる問題と人による判断が必要な問題がある点を示したうえで、ミツエーリンクスが提供するアクセシビリティ診断の特長を解説。ツールで検知可能な問題から着手し、修正と再診断を繰り返すことで改善のサイクルを確立する点や、レベル1からレベル3までのラインナップを通じて、組織の成熟度に応じて段階的に改善に取り組める点を、詳しく話しました。
また、ミツエーリンクスでは社内教育支援や出張セミナー、スクリーンリーダー検証、デザインガイドライン整備など、診断と組み合わせて活用できる関連サービスも提供しており、これらを通じて関係者の理解を高め、組織全体でアクセシビリティ品質を維持していく体制づくりについて紹介しました。
最後に、アクセシビリティ向上においては「継続」と「成熟」が求められるとし、取り組みを組織文化として定着させることが重要であると述べ、セミナーを締めくくりました。
エクゼクティブ・フェロー(CBO)木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。業界的に求められる知識や理解の啓発といった趣旨で登壇させていただく機会が多いものですから、本セミナーのような特定のサービスの営業色が濃い講演というのは個人的に不得手に感じているのですが、ご好評をいただけたようで嬉しく思います。
セミナー中に強調しましたように、Webアクセシビリティの改善は終わることのない「旅」です。どれほど高く立派な品質目標を掲げようと、それを達成するより前に挫けてしまうようでは、旅を続けることが困難になってしまいます。無理なく、小さく始めて大きく育てることの重要性をご理解いただけたら幸いです。
サイトの品質改善はもとより、皆様の組織における学習・成長の手段として、ぜひ当社のWebアクセシビリティ関連サービスをご活用いただければと思います。
ご質問への回答
改正障害者差別解消法等の対応で、インターネット上のWebサイトだけでなく社内イントラのサイトもアクセシビリティ対応が必要になり、Web業務知識が全くないイントラサイト担当者が多いため教育が追い付かない。最小限の知識をすぐ学べるパッケージ教材などがあれば利用したい。
あいにく、当社ではそのような教材の取り扱いはございません。代わりに、Webアクセシビリティに関して出版されている書籍を購入し、それを用いた勉強会を社内で企画・開催されてはいかがでしょうか。『デザイニングWebアクセシビリティ』(株式会社ボーンデジタル)や、最近のものを挙げるなら『いちばんやさしい ウェブアクセシビリティの教本』(インプレスブックス)が、Web担当者向けの教材として利用できるかと思います。ご検討ください。もちろん、当社のアクセシビリティ社内教育支援サービスもあわせてご検討いただければ幸いです。
弊社はJIS準拠を意識しています。進め方として、ご紹介いただいたWebアクセシビリティ診断の機械的なチェックでの改善からはじめ、ステップアップして試験の実施へ行くのがスムーズでしょうか。
おっしゃる通り、たとえ最終的な目標がJIS規格への(適合レベルAないし適合レベルAAへの)準拠であっても、まずは機械的に検知できる問題点が対象コンテンツに存在しない状態を目指していただくのが早道と考えます。最初から検知に人手が必要な問題点への対応を織り交ぜてしまうと、PDCAサイクルを回すスピードがどうしても遅くなりがちです。従って、まずは機械的かつ高速に実現可能な改善から取り組み、アクセシビリティの知識や理解をしっかり深めながら、段階的に取り組まれることを推奨します。
昨今AIを活用した安価なアクセシビリティ診断ツールを見かけます。コスト面からこうしたツールの導入にも興味を持っているのですが、このようなAIツールに頼るリスクや、「根本的な診断・改修」を行うことの決定的な価値の違いについて、専門家の視点から教えていただけますでしょうか。
当社が提携しているDeque Systems社でもAI技術を段階的に製品群に取り込みつつありますが、セミナーの時間中に紹介したAxe-coreで「誤検知ゼロ」という方針を掲げているだけに、慎重に進めている印象があります。
いまだAIは不完全な、発展途上の技術であり、その点は注意が必要と思います。しかし、AI技術に将来性は強く感じますから、AIのすべてを否定または肯定するのではなく、段階的に採用が進んでいくものと予想します。
たとえば、人間がしっかり考え判断すべきところを短時間で抽出する役割をAIが担ってくれるだけでも、アクセシビリティの診断やそれに基づく修正作業の大幅な効率化が期待できます。
ワークフローにおいて人間とAIそれぞれが担うべき領域、責任範囲の変化には注視しつつ、最終的に成果物の満たすアクセシビリティ品質を徐々に上げていく、そういう取り組みが業界的に求められていると思います。
Webアクセシビリティ診断でレベル3の目視診断の予算を申請する際、「機械チェックだけでは足りない理由」や「目視診断の費用対効果」をどのように説明すると、非専門家の決裁権者にも納得してもらいやすいでしょうか。実例などのヒントがあれば伺いたいです。
当社のサービスの活用を具体的に検討くださっているようで、大変ありがたく思います。
機械で検知できる問題が、本来検知されるべきすべての問題に占める割合には諸説ありますが、Deque Systems社の見積もりでは6割弱にとどまります。機械で検知できる問題にしか対処しないということは、何も対処しないよりは素晴らしいのですが、達成・維持できるアクセシビリティ品質は自ずと頭打ちになりますので、よほど機械なりAI技術が進化しない限りアクセシビリティに起因する機会損失をゼロにはできません。
また、人間でなければ検知が難しいような、明確に白黒をつけにくい問題を専門家に診断してもらうことで、その知識が関係者の皆さんの経験値として蓄積されます。その結果、将来的には組織のアクセシビリティ向上力は相当高まっているはずです。
以上の理由から、より高いアクセシビリティ品質の実現と維持には、機械のみならず専門家による診断とそれに基づく改善が必要と説明できます。
アクセシビリティの専門知識を持たない運用の現場スタッフに対し、日々の更新でアクセシビリティを「維持」してもらうための現実的なルール作りや、御社が推奨する運用の社内体制(内製化の範囲)について教えていただけるでしょうか。また御社でそのようなサポートサービスはございますか。
まず、サポートサービスはございます。Webアクセシビリティ コンサルティングサービスをご活用いただくことで、日々の運用業務に伴走しながら、全般的なサポートが可能です。
現場スタッフの皆様には、Webアクセシビリティをしっかり学んでいただくことが大切であると思います。また皆様の理解できるルールを明文化したり、ルールを遵守できているかを第三者目線で監査したりする取り組みも必要かと思います。それらの取り組みを、総合的にサポートさせていただければ幸いです。
お客様と当社の役割分担については、基本的な対応はお客様の社内で完結、つまり内製化していただきつつ、何か判断に悩んだり迷ったりしたときにのみ、当社のサポートをご依頼いただくことが最終的な理想像です。
様々な診断サービスがあり、「診断報告書」の細かさやフォーマットが異なると思われます。自社のWeb担当者や制作会社が、報告書を受け取った後に「迷わず具体的な修正作業に移れる良い報告書(またはベンダー)」を見極めるためのチェックポイントがあれば、選定の基準として教えていただきたいです。
基本的には問題点が具体的かつ明確に、たとえばソースコードの何行目に、どのような問題があるかが列挙された報告書が必要かと思います。
なお、ソースコードをどのように書き換えれば問題が解消できるかまで報告書に記載されていると良いとお考えになるかもしれません。しかしアクセシビリティを改善する方法は大抵、一義的ではありませんから、そこまで求めるのは難しいでしょう。
結局のところ、どのような内容・体裁の報告書であっても、修正作業を行う読み手の側にWeb技術やWebアクセシビリティの知識や理解は一定程度、欠かせません。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 冒頭の登山の例えが、Webアクセシビリティへの取組み方とシンクロしたことで、頭の中でしっかりイメージ化されました。
- ウェブアクセシビリティ診断について、どのツールを使用してどのような診断になるのか、わかりやすかったです。診断→修正後、再診断して修正完了するところも良いと思いました。アクセシビリティ試験は行っておりますが、木達様のおっしゃる通りモグラたたきになっている気がいたします。今日のセミナーをチームに共有したいと存じます。ありがとうございました。
- ご提供されているサービスと成果物のイメージをつかむことができました。アクセシビリティ向上の取り組みについて「継続」は認識がありましたが、「成熟」という視点はハッとしたところでした。