Appleが2025年後半にリリース予定のアクセシビリティ機能を発表
アクセシビリティ・エンジニア 大塚Appleが2025年のGlobal Accessibility Awareness Day(GAAD)に合わせ、今年秋にリリース予定のアクセシビリティに関する機能を発表しました(Apple、年内に導入予定のパワフルなアクセシビリティ機能を発表 - Apple (日本))。本記事では、発表された代表的な機能を、主に視覚障害当事者の視点で掘り下げたいと思います。
まず、App Storeの製品ページに、VoiceOver、音声コントロール、拡大文字での利用など、アクセシビリティに関する機能への対応状況を確認できる、Accessibility Nutrition Labels(アクセシビリティラベル)という機能が追加されます。VoiceOverでの読み上げに対応したアプリを探すには、限られたVoiceOver利用者の口コミから判断するか、自力でインストールして確認する必要があり、手間がかかってしまうのが現状です。アクセシビリティラベルの追加により、アプリをダウンロードする前に、各種アクセシビリティ機能への対応状況を把握できることが期待されます。特に、有料アプリを購入する際の参考材料となりそうです。
macOS向けの拡大鏡も新たに追加されます。Macのカメラや接続したiPhoneのカメラを利用して、周囲の文字などを拡大表示できるようになります。複数のカメラの映像を確認しながらのマルチタスクにも対応します。
Appleデバイス(iPhone、iPad、Mac、Apple Vision Pro)向けの点字アクセス機能も追加されます。これまでも、点字ディスプレイを接続しての点字表示や、点字画面入力に対応していましたが、機能がより深くOSに統合され、アプリケーションの起動やメモの作成などを、点字ディスプレイを操作するように行えるようです。
興味深いのが、BRF形式などの点字データを扱えるようになる点です。BRF形式は、北米を中心に世界的に利用されている点字データのフォーマットで、日本で発売されている主要な点字ディスプレイも対応しています。これにより、出先で点字データを作成したり、点字書籍を読むなど、点字データを扱うハードルが下がるのではないでしょうか。
現実的に考えるとハードルは高そうですが、将来的には、国内の点字図書で利用されることの多いBES形式や、国内でシェアの高いケージーエス社製点字ディスプレイの独自フォーマットであるBMT形式などにも対応することに期待したいです。
Appleデバイス向けの機能としては、アクセシビリティリーダー機能も追加されます。ディスレクシアや弱視のユーザーなどが画面上の文字を読みやすくなるよう、フォントや色などをカスタマイズできます。さらに、この機能は拡大鏡アプリにも組み込まれているため、カメラで写したテキストについてもカスタマイズして表示できます。
Apple Watch向けには、騒がしい場所などで話を聞き取る際に便利なライブリスニングのコントロールや、リアルタイムで文字起こしを提供するライブキャプションの表示機能が追加されます。あわせて、ライブキャプションが日本語にも対応します。日本語でのライブキャプションの精度が、どの程度なのかが気になるところです。
Apple Vision Pro向けには、メインカメラを使った拡大表示やライブ認識が追加されます。
その他、バックグラウンドサウンドやパーソナルボイス、視線トラッキングやヘッドトラッキングなどのアップデートが予定されています。
発表された一連の機能の中で印象的だったのが、App Storeへのアクセシビリティラベルの追加です。似たような機能として、Kindle書籍のTTS対応の有無を事前に確認できるものがありますが、同じように確認できれば、利用可能なアプリが探しやすくなりそうです。また、代表的な機能には含まれていませんが、「アクセシビリティ設定を共有」という機能にも注目しています。飲食店での注文やホテルの部屋の空調操作など、公共施設でiPadなどを利用することは多く、これらをVoiceOverや拡大鏡などを有効にして使うことができれば、視覚障害者のユーザーが単独で行えることの幅も広がると考えています。
Appleのアクセシビリティへの取り組みには、今後も注目していきたいと思います。