自社視点から顧客視点へ、AI検索時代のBtoBサイトのあり方
プロデューサー 服部昨今、多くの企業サイトで自然検索流入の減少が見られるようになりました。実際に私が支援する企業からも「SEO施策は継続しているのに流入が伸びない」「問い合わせ数が以前ほど増えない」という相談をうけます。
背景にあるのが、生成AIの普及による情報収集行動の変化です。顧客は検索エンジンだけでなく、まずAIに相談し、その回答をもとに複数社を比較検討するようになりました。つまり今Webサイトには、「検索されること」だけでなく、「AIに引用されること」そして「比較検討時に選ばれること」が求められています。
BtoB企業のWebサイトを見ると、今でも多くの企業が「会社案内」や「事業内容紹介」を中心に情報を発信しています。もちろん、自社の事業や強みを正しく伝えることは重要です。しかし、果たしてそれだけで訪問者が求める情報を十分に提供できているのでしょうか。AIに引用されるコンテンツ、サイト・ページ設計になっているのでしょうか。
本記事では、BtoBマーケティングを成功させるために重要なコンテンツ企画の考え方について解説します。
なぜ事業紹介だけでは不十分なのか
多くのBtoBサイトは、自社の組織構造や事業区分に沿ってメニューが作られています。私が企業サイトの分析を行う中でよく見かけるのが、「顧客の課題が説明されていない」状態です。例えば、
- ソリューション
- サービス
- 会社情報
といった会社説明に留まっているケースや、
- システム開発事業
- クラウドサービス事業
- コンサルティング事業
など、製品名や自社サービス名、組織名や事業名になっているケースです。
自社にとっては分かりやすい分類ですが、訪問者の視点では必ずしもそうとは限りません。見込み顧客がWebサイトを訪れる理由は、「事業内容を知りたい」からではなく「抱えている課題を解決したい」からです。例えば、
- 業務効率化を進めたい
- 顧客情報を一元管理したい
- セキュリティ対策を強化したい
- DXを推進したい
といった目的を持って情報収集しています。そのため、事業紹介ページを閲覧しても先程の情報掲載方法のままでは「この会社が何をしているか」は理解できても「自社の課題を解決できるのか」までは判断できないケースが少なくありません。結果として、せっかくサイトを訪れた見込み顧客が離脱してしまう可能性があります。
また、まずはAIに聞いてみるという行動が増えていますので、AIに引用されやすいコンテンツとなるためにはLLMO対策も非常に重要となってきます。SEOのベストプラクティスをコンテンツに実装するために継続的改善を行うことも今後ますます重要となってきます。
顧客視点のコンテンツが成果を生む
BtoBマーケティングで成果を上げるためには、自社視点ではなく顧客視点でコンテンツを企画することが重要です。顧客が知りたいのは商品やサービスそのものではなく、「そのサービスによって何が解決できるのか」という点です。そのため、Webサイトでは顧客が抱える課題や業界特有の悩みに寄り添ったコンテンツを提供する必要があります。
特に有効なのが次の3つです。
1. 課題別ソリューション
最も効果的なコンテンツの一つが「課題別ソリューション」です。例えば、
- 人材不足を解消したい
- 営業活動を効率化したい
- データ活用を推進したい
- コスト削減を実現したい
など、顧客の課題ごとに解決策を整理します。
顧客は自社の悩みに近いテーマを見つけやすくなり、「この会社なら解決できそうだ」と具体的にイメージできます。また、AIや検索エンジン経由での流入も期待できるため、SEO・GEO・LLMOの観点からも有効です。
2. 業種別サービス紹介
同じサービスでも、業界によって課題や求められる機能は異なります。例えば、
- 製造業では品質管理や生産性向上
- 金融業ではセキュリティや法令対応
- 小売業では顧客体験向上やデータ分析
など、それぞれ重視するポイントが異なります。
そこで、「製造業向け」「金融業向け」「小売業向け」といった業種別ページを用意することで、訪問者は自社に近い事例や活用方法をイメージしやすくなります。業界特有の課題に触れることで、企業への理解と信頼感も高まります。
3. 事例紹介
BtoBマーケティングにおいて、導入事例は非常に重要なコンテンツです。サービスの説明だけでは理解できなくても、実際の成功事例を見ることで具体的な効果をイメージできるようになるからです。事例紹介では、
- 導入前の課題
- 導入の背景
- 実施内容
- 導入後の成果
を分かりやすく整理することがポイントです。
特に、数値を用いた成果や担当者の声を掲載すると信頼性が高まります。同じ業界や類似課題を持つ企業にとって、有力な判断材料となるでしょう。
AIに引用されやすいコンテンツ
AIに引用されやすいコンテンツにするにはどうすればよいでしょうか。
Googleが推奨する方法としては、Google Search Centralの記事「Google 検索の生成 AI 機能向けにウェブサイトを最適化する」で、3つにわけて説明されています。
- オーディエンスにとって価値があり、独自性のあるコンテンツを作成する
- 明確な技術構造を構築して維持する
- 生成 AI 検索の誤解を解く: する必要のないこと
ここでは独自性の高い読者にとって価値のある信頼性の高いコンテンツ制作が重要であることと、構造化やセマンティックなマークアップは必要(ただし過度にやりすぎる必要はない)であるということが記載されています。特に昨今E-E-A-Tを備えたコンテンツであることが重要視されてきています。
E-E-A-Tとは、E(経験:Experience)、E(高い専門性:Expertise)、A(権威性:Authoritativeness)、T(信頼性:Trustworthiness)の略で、これらを持つコンテンツが評価されるというGoogleの検索品質評価ガイドラインに基づく内容のことです。自社の良さや強みや専門性を掘り起こして、信頼性と専門性の高い競合優位性のあるコンテンツとして作成していくことこそがE-E-A-Tの実現へとつながります。
特に私がE-E-A-T向上施策を検討する際によく確認するのは次の3点です。
- 現場担当者や専門家の知見が反映されているか
- 顧客支援実績が具体的に紹介されているか
- 他社にはない独自の知見が含まれているか
最終的には信頼できる情報源が優先されている傾向が強いようです。
そのため、一般論を並べるだけでは差別化は難しく、自社ならではの経験や実績をどれだけ言語化できるかが重要になります。また、AIは従来の検索結果のようにページ単位で評価するだけでなく、「質問に対して直接回答できる情報」を優先的に参照します。
例えば「製造業の品質管理を改善する方法」という質問に対して単なるサービス紹介ページよりも、
- 課題
- 原因
- 解決策
- 導入事例
が体系的に整理されたページの方が引用されやすくなります。
つまり、顧客視点で構成されたコンテンツはSEOのためだけでなく、AIの回答ソースとしても評価されやすいのです。
コンテンツ企画で意識したいポイント
顧客視点のコンテンツを作る際には、まずペルソナやカスタマージャーニーを明確にすることが大切です。例えば、
- 情報収集段階なのか
- 比較検討段階なのか
- 導入直前なのか
によって必要な情報は異なります。
情報収集段階のユーザーには課題解決のヒントとなるコラムや場合によってはホワイトペーパーを提供し、比較検討段階のユーザーには事例や機能比較、導入直前のユーザーにはサポート体制や料金を分かりやすく提示することが重要です。顧客の検討プロセスに合わせて情報を設計することで、自然な形で問い合わせや資料請求につなげることができます。
まとめ
AI検索の普及によって、BtoBサイトの役割は大きく変わりつつあります。
これまでのように「会社やサービスを紹介すること」が中心だったサイトから、「顧客の意思決定を支援すること」が中心のWebサイトへ転換する必要があります。私自身、多くの企業サイトを分析する中で感じるのは、成果が出ているサイトほどサービス説明ではなく顧客課題を起点に情報設計されているということです。
AI検索時代において重要なのは、AI向けにコンテンツを作ることではありません。顧客が抱える課題に対して、誰よりも分かりやすく、信頼できる情報を提供することです。その結果としてSEOにも強くなり、AIにも引用され、問い合わせにもつながります。自社サイトを、
- 会社紹介中心になっていないか
- 顧客課題から情報設計できているか
の視点で改めて見直してみると、新たな改善ポイントが見つかるかもしれません。
また、具体的な見直し方のヒントになるようなオンラインセミナー「Webサイトを軸に構築するAI時代のデジタルマーケティング入門」を開催します。もしこちらの記事をお読みいただき興味をもっていただけましたら是非ご視聴くださいませ。