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Web Essentials 05参加報告

2005年10月7日

Web開発チーム フロントエンド・エンジニア
木達 一仁

シドニーの中心部からやや離れた場所に位置するUniversity of Technology Sydneyにおいて、先月29・30日の二日間にわたり開催されたWeb Essentials 05(以下WE05)に参加しました。ちょうど1年前にも同じ場所で同じタイトルのカンファレンスが催されており(Web Essentials 04)、今年は第2回に相当します。昨年の日本からの参加者は私ただ一人でしたが(コラム「オーストラリアで感じたWeb標準の潮流」参照)、今年はというと、参加総数は約320名と前回(約200名)よりも増えたものの、日本からは私のほかにスリランカ出身で友人のWebデザイナー氏1名だけでした。

このWeb Essentialsは「開発者による開発者のための(by developers for developers)」カンファレンスとして位置づけられています。その方向性は今回でも変わること無く貫かれていたものの、いくつかの点においては昨年よりもさらにグレードがアップ、もしくは趣向が凝らされ、非常に充実した二日間となりました。

まず、プレゼンで扱われるトピックスの幅が広がりました。昨年はWeb標準、なかでもマークアップ言語やスタイルシート、そしてアクセシビリティに特化していましたが、今回はそれらに加えてワークフローやユーザー体験、さらにはmicroformatsAjax(Asynchronous JavaScript+CSS+DOM+XMLHttpRequestの略称)に至るまでが含まれました。それに伴い、いくつかのプレゼンは同じ時間帯に会場を別にして行われました。

また、全てのプレゼンというわけではありませんが、講演を収録したPodcastが配信されています。これはとても画期的なことで、別途公開されている資料を閲覧しながら聞くことにより、WE05に参加できなかった人でもその一部を疑似体験することができます。

開催期間中は二晩共にパーティが催され(前回は1日目の晩のみ)、スピーカーと参加者、あるいは参加者同士のあいだでのコミュニケーションを図れるよう、一層の配慮がなされていました。ランチタイムもまた貴重なコミュニケーションの場ではありましたが、パーティを通じて新たな友人を得ることもでき、良かったと思います。スピーカー(後述するTantek Çelik氏)を囲んでの朝食会というのも、前回には無かった企画で、貴重な時間を共有できました。

今回のカンファレンスを通じ、テクニカルな面で得たものはそれほど多くなかったように感じたのですが、しかし多くのモチベーション、そしてインスピレーションを得ることができたと思います。WE05のすべてのプレゼンについてこのコラムで詳細にご紹介することはできませんが、いくつか印象に残ったプレゼンについて、スピーカーの紹介を交えながら、お話させていただきます。

Keynote: State of the Web, 2005

キーノートスピーチは、私もメンバーの一員であるWeb Standards Projectのリーダー、Molly Holzschlag氏が行いました。自己紹介に続いて、どのような立場や属性の人が会場に集まっているかをアンケート。やはりデザインや技術寄りの割合が高かったのですが、ビジネスアナリストという肩書きの方もいらっしゃいました。

さらにスピーカーとホストの紹介を一通り終えると、今度は「キラーアプリ」の紹介……BlogやWiki、フォトシェアリングのFlickrGoogleの提供する各種サービス、インターネットを介した音声通話のSkypeなどなど。

Webのトレンドを表す流行語「Web 2.0」について語り、それがさまざまな技術の集合体であること、職能の異なる人々がいかに協働するかもWeb 2.0のひとつのポイントであること、最終的にユーザの得る結果に焦点が当てられていることなどを述べました。その後Web 2.0という言葉は多くのプレゼンでも耳にすることとなり、ある意味においては本カンファレンス全体にとってひとつのキーワードとなっていたように思います。

Zooming Out from the Trenches

WIREDのWeb標準準拠という実績で一躍有名になり、目下Stopdesignにおいてデザインコンサルタントを営むDoug Bowman氏は、Webの過去(あるいは「Web 1.0」と呼ばれる時代)と現在を俯瞰する、非常にユニークで印象的なプレゼンを行いました。当初はCSS関連の内容で、という依頼があったそうなのですが、彼自身の発案からこのような内容に変更したとのこと。

ケーブルで接続されていたものがワイヤレスになり、ダイアルアップ接続はブロードバンド接続へ、さらにストレージの限界は無くなりつつあるなど、一見私たちを取り巻くインターネット環境は豊かで便利になったと感じられます。その一方で、今なお世界で3億もの子供が「no information」であるとのUNICEFによる統計を示されると、なんとも言い様の無い感覚に襲われます。

彼はMalcom Xの言葉「The future belongs to those who prepare for it today.(未来は、未来に向けて今日備える者と共にある)」でプレゼンを終えました。Webの作り手、さらにはそのプロフェッショナルとして、自分が今何をすべきか、非常に考えさせられる(そして悩まされる)内容でした。

Microformats: Evolving the Web

Apple ComputerではOpenDoc、MicrosoftではMacintosh用Internet Explorerの開発に携わり、現在はBlog検索で有名なTechnoratiで働くエンジニア、Tantek Çelik氏のプレゼンです。

彼はまず、データのアーカイブ化についてアンケート。どんなデータをどのフォーマットで保存しているのか?それらを扱うハードウェアやソフトウェアを変えなければならなくなったらどうするか(例:メールクライアントの移行)?等。そのうえで、microformatsがそれに付随する問題すべてを解決するわけではないものの、オープンなデータフォーマットの開発がその一助となる、と語ります。

microformatsがこれまで歩んできた道のり、XFNhCardhCalendarXOXOといった個々のmicroformatの概要、さらにはそれらに紐づいて得られるさまざまなメリットについて紹介しました。現時点ではまだ普及しているとは言い難いmicroformatsですが、このプレゼンによってその可能性や将来性を理解することができました。

なお、XFNについてはXFN Creatorという自動生成ツールの日本語版を個人的に作成した経緯があります。興味のある方は是非使ってみてください。

Designing the Next Generation of Web Apps

5年前に発売された著書「The Art & Science of Web Design」(日本語訳は「戦うWebデザイン—制約は創造性をはぐくむ」というタイトルで発売中)のなかで、既にWeb標準の重要性に言及していた、Adaptive PathJeffrey Veen氏。彼はその全ページを自身のBlog上で公開していますが、内容は5年経った今でも決して色褪せることはなく、彼がいかにWebというものの本質を理解し、またビジョンを描いてきたかがよくわかります。そんなわけで私は彼のちょっとしたファンであり、パーティー会場で直接彼と言葉を交わすことができたときには、非常に嬉しく思いました。

彼のこのタイトルのプレゼンは、まさにWeb 2.0についてのもの。ちなみにWeb 2.0の定義は諸説ありますが、ちょうどWE05の開催期間中にTim O'Reilly氏が書いた「What Is Web 2.0」という記事が参考になるでしょう。Jeffrey氏はWeb 2.0を特徴付ける3つの要素、すなわちタグ、API、Ajaxについて具体的事例とともに語り、それらをいかに使いこなしていくべきか?、またそれに伴う技術的変化を企業にどのように受け入れさせるのか?といった問いかけでプレゼンを結びました。

既にWebが一種のプラットフォームとして機能しているこのWeb 2.0時代において、エンドユーザと企業を紐づけるコンテキストも多様化しつつあると思います。ユーザニーズとビジネスゴールの双方を満たすコンテキストを、いかなる技術でもって実現すべきか、さらなる思考と研究の必要性を痛感しました。

本コラムでご紹介できなかったプレゼンの数々については、是非WE05のサイトにアクセスし、講演資料を閲覧するなり、Podcastを聞くなりしてみてください。あるいは、Flickr上でwe05タグの付けられた写真を見たり、Technorati上でwe05タグの検索結果にアクセスし、Web Essentialsについて書かれた記事の数々を読んでください。きっとWE05の魅力、その意味するところをより深く体感できると思います。

最後に、本カンファレンスを企画してくださったWeb Essentials運営委員の皆さん(WebboyのRuss Weakley氏とPeter Firminger氏、Westcivの Maxine Sherrin氏とJohn Allsopp氏)を収めた写真を以下に掲載させていただき、またこの場をお借りして感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

左からJohn、Russ、Peter、Maxineの各氏