近くスマートフォンに登場する「チョイススクリーン」への期待
エグゼクティブ・フェロー木達 一仁「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」、略して「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ法)」が、今月18日に全面施行されます。
- ※ メディア等で「スマホ新法」という表記も散見されますが、本コラムでは公正取引委員会の用いる表記「スマホ法」を採用します。
この法律は、昨年6月12日に国会で可決・成立していたものです。何を目的とした、どのような法律かは、公正取引委員会のページにある紹介文が端的にまとまっており、わかりやすいと思います。
スマホ法は、スマートフォンの利用に特に必要な4つのソフトウェア(モバイルOS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジン)について、セキュリティの確保等を図りつつ、公正で自由な競争を促進するものです。
スマホ法が施行されることで、今や日常生活に欠かせない存在となったスマートフォンにもたらされる変化の代表格が、「チョイススクリーン」と呼ばれる画面の登場です。
今月1日にオープンしたチョイススクリーン特設サイトに掲載されている動画をご覧いただければ、スマホ法の概要、そしてチョイススクリーンがどのようなものかご理解いただけると思います。
私は、今後チョイススクリーンによってWebブラウザの乗り換えがどれだけ進むのか、またその結果としてスマホ法が目指すところの「公正で自由な競争」が、Webブラウザでどれだけ実現されるかに注目しています。
個人的な予測ですが、短期的な変化は起こりにくいでしょう。他の選択肢の存在を知らなかったユーザーが、ある日突然チョイススクリーンで知らされたところで、Webブラウザの乗り換えを判断できるかというと、難しいと思うのです。
乗り換えに値する、乗り換えの手間や面倒に見合った長所を有する選択肢かは、チョイススクリーンを見ただけではわかりません。そもそも日常的に使用頻度の高い部類のソフトウェアであるWebブラウザを、積極的に乗り換えたいと思うユーザーは、少数派ではないでしょうか。
しかし中〜長期的には、少しでも多くの乗り換えと、それに由来する良い意味での競争を期待したいところです。まずは選択肢の存在を知らしめる、その広報・PRという観点のみにおいても、チョイススクリーンに一定の存在意義があると私は考えます。
実際、先行してデジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)が施行されたヨーロッパにおいて、チョイススクリーンの有効性を認めた調査結果がありますし(Can browser choice screens be effective? - Mozilla Research)、またブラウザシェアに変化の兆しがみられるとの報道もあります(Alternative browsers report uplift after EU's DMA choice screen mandate | TechCrunch)。
さまざまなユーザーが、個々のニーズに基づき、さまざまな方法でアクセスできてこそ、Webの魅力や価値は最大化されます。そして、Webへの主要なアクセス手段たるブラウザが進化し続けるうえで、多様性の確保とそれに基づく健全な競争は不可欠です。
チョイススクリーン、ひいてはスマホ法が、Webの継続的発展の一助となることを願いつつ、引き続き動向に注視したいと思います。
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