新年のご挨拶 ~創造的破壊を駆け抜ける一年 / AI Transformation実装へ ~
代表取締役(CTO)藤田 拓2026年の年頭にあたり、日頃より多大なるご支援とご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
振り返れば、私たちはここ数年、「変化」という言葉では表現しきれない地殻変動の時代にいるのかもしれません。かつてフィクションの世界で描かれていた未来が、今私たちの社会に映りこみ始めています。そして、その兆候はここ最近のノーベル賞にも顕れています。
ノーベル賞受賞に見られるAI
2021年のノーベル物理学賞では、眞鍋淑郎氏、クラウス・ハッセルマン氏、そしてジョルジョ・パリージ氏の3名が気候を含む複雑な現象をモデル化し理解・予測する研究で評価されました。その中でもパリージ氏が研究したのは「スピングラス」と呼ばれる磁性体の原子が無秩序に配列した物質の振る舞いでした。
この「スピングラス理論」の影響を受け、ジョン・ホップフィールド氏は1982年に画期的な論文を発表します。脳のニューロンの活動をスピングラスにおける原子の振る舞いと数学的に等価なものとして定義し記憶の仕組みを物理学の言葉で説明したのです。そして、一昨年2024年のノーベル物理学賞はそのホップフィールド氏とディープラーニングの父と呼ばれるジェフリー・ヒントン氏に贈られました。
さらに同年2024年の化学賞は、Google DeepMindのデミス・ハサビス氏らがAI「AlphaFold」によるタンパク質構造予測で受賞しました。2016年、AlphaGoが囲碁の世界王者を破り世界を驚かせてからわずか8年、AIはゲームの世界を飛び出し生命科学の難問に挑む「科学者のパートナー」へと姿を変え受賞したのです。
昨年2025年のノーベル物理学賞は超伝導回路という“目に見えるスケール”で量子トンネルとエネルギー量子化を実証した研究に贈られました。量子現象を制御できる領域が拡張されたことは理論から実装へと向かう転換点を示しています。古典コンピュータの壁を超える量子技術がAIの進化をさらに加速させる未来も遠い話ではないのかもしれません。
創造的破壊の力
さて、AIと直接的に関係しないのですが、2025年のノーベル経済学賞もAIがもたらすであろう今後に関わる内容と思えます。受賞したのは、フィリップ・アギオン氏、ピーター・ハウイット氏、ジョエル・モキア氏らのイノベーション主導の経済成長を解明した研究です。
受賞者の一人であるアギオン氏は著書『創造的破壊の力(The Power of Creative Destruction)』において、シュンペーターの「創造的破壊」——新しい技術が古い技術を駆逐することで経済が新陳代謝し成長するプロセス——を現代の理論として体系化しました。
アギオン氏はこのプロセスを、イノベーションによるレント(超過利潤)を動機とした「新しいもの」と既得権益を守ろうとする「古いもの」との間の永続的な対立であると説きます。
ここで特筆すべきは、私たちがAI時代に抱きがちな「技術革新が雇用を奪う」という懸念に対する同書の明快な回答です。過去の産業革命やオートメーション化のデータを紐解くと、製造プロセスを自動化した企業は、実際には雇用を減らすのではなく、むしろネット(純増)で雇用を創出していることが明らかになっています。自動化によって企業の競争力が高まり市場シェアが拡大することで、結果としてより多くの従業員が必要になるのです。
逆に雇用が失われる真の原因は、自動化そのものではなく、イノベーションの波に乗り遅れることによる「排除効果(eviction effect)」にあると書かれています。自動化・AI化を怠った企業こそが競争力を失い、市場から退場し、雇用を消滅させてしまうことになります。
つまり、AIへの挑戦は雇用への脅威ではなく、むしろ私たちの働く場所と経済的な豊かさを守り抜くための必須条件であると、創造的破壊の歴史は教えてくれています。
創造的破壊は、古い仕事を消滅させると同時に、より高度で、より人間らしい仕事を生み出します。これからのAIもまた例外ではないはずです。私たちは破壊を恐れるのではなく、自ら「創造する側」に回る覚悟が求められています。
100年近く変わらない「人にとって大切なもの」
創造的破壊は過去にも存在しましたが、それぞれの時代において変わらないものはないのか?そんな研究をハーバード大学が1938年から継続して行っています。「成人発達研究(Harvard Study of Adult Development)」では724人の人生を追跡し「何が人を幸せにするのか」を科学的に解き明かそうとした世界最長の研究です。
第4代研究責任者のロバート・ウォールディンガー教授は膨大なデータから導かれた結論をこう語っています。
それは富でも名声でも無我夢中で働く事でもなく、はっきりと分かった事は私たちを健康に幸福にするのは良い人間関係に尽きるという事です。
100年前も、今も、そして量子コンピュータとAIが融合する未来においても、この真実は変わらないのかもしれません。もしそうだとしたら、AIがどれほど高度な文章を紡ぎ精緻な画像を描けるようになっても、信頼を築き共感し合い心の通ったつながりを作ることは人間にしかできない領域として残り続けます。
むしろ、デジタル化が極限まで進むこれからの社会において、「人と人とのつながり」や「コミュニケーション体験」の価値はこれまで以上に高まっていくはずです。
さらにスマートコミュニケーションをデザインする
私たちミツエーリンクスは、「Smart Communication Design Company」をミッションに掲げ、「高い技術で優れたコミュニケーションをデザインする」ことを使命として歩んでまいりました。
社会が必要とするコミュニケーションを、私たちが持ちうる最高の技術でデザインする——この使命はAIの時代においても変わりません。むしろ、AIという新たな技術を手にした今こそ、その可能性は大きく広がっています。
2026年、ミツエーリンクスは「AI Transformation」を本格的に推進いたします。これは単にAIツールを導入するという話ではありません。私たちの働き方、制作のあり方、お客様への価値提供のプロセスそのものをAIを前提として再構築する挑戦です。
AIに委ねられる領域はAIに任せ、私たちはお客様との対話を今まで以上に重ねつつ、人に寄り添うインターフェイス、そして人と人をつなぐコミュニケーション体験の実装に力を注いでいければと考えております。
本年も引き続き、倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
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