企業とは? -マーケティング戦略-
マーケティング戦略を一言で言えば、企業戦略の方針を受けて、どのような手法によって市場に挑むのかを決定していくプロセスと言えるでしょう。企業の独自性を、市場に対してどのように伝え、ビジネスに結び付けていくかを方向付けるプロセスです。企業におけるマーケティング戦略を把握することは、インターネット戦略を実行する上で、企画、設計、細部にわたる表現方法まで影響を及ぼすことになります。
(1)競争戦略
競争戦略は、市場の状況により戦略の方法論が変化する性質を一般に持っています。競争戦略とはすなわち企業の環境適応能力だと言えます。環境を把握するにあたってはSWOT分析が用いられます。
企業のトップが意識しているか否かは別として、下記のような方策を実行する傾向があります。
競争戦略 competitive strategy
市場の成長度が高い場合は、市場適合戦略の方により重きが置かれ、競争戦略に対する関心は相対的に低くなる傾向があります。
市場の成長度合いが小さい、あるいは自社の成長よりも市場の成長の度合いが小さい場合は、競争対抗戦略が採用されることが多くなる傾向にあります。
1. 市場適合戦略
マーケティング戦略を策定する上で、まず標的市場のニーズを確定し、その市場ニーズに適合したマーケティング・ミックスを計画することが重視されてきました。マーケティングの成功は、出発点である市場ニーズの的確な把握、そのニーズへの製品・価格・プロモーション・流通チャネルの適合化に鍵があるという戦略です。
補足:対話型マーケティング(dialogue marketing)
市場適合戦略の手法として、対話型マーケティングについて下記のように補足解説をします。
新製品開発の現場では、市場ニーズは先に存在・確定するものではなく、顧客との不断の対話プロセスを通じて徐々に理解され、明らかになっていくという構成的な立場がみられます。市場が多様化・多次元化すればするほど市場ニーズを最初に確定することは困難になり、むしろ顧客との対話を通じて発見し、マーケティング・ミックスも調整されていくという視点が重要という戦略論です。
2. 競争対抗戦略
競争対抗戦略には企業の置かれている環境の違いによって、大きく分けて4つのタイプがある事が知られています。リーダー戦略、チャレンジャー戦略、フォロワー戦略、ニッチ戦略がそれに当たります。
競争対抗戦略にはリーダー戦略(トップ企業)、チャレンジャー戦略(No.2企業)、フォロワー戦略(No.3企業)、ニッチ戦略(No.4企業)があり、その特徴は下記の通りです。企業の置かれている環境の違いによって、取るべき戦略方法論に違いが出てくると考えられています。
![リーダー戦略 Market leader strategy:ナンバー・ワン企業は、その地位を維持することを経営目標とする。市場そのものの拡大を図る。現在のマーケットシェアを維持する。市場規模の拡大がないとしても、マーケットシェアを伸ばすことで相対的な地位の向上を図る。チャレンジャー戦略 Market challenger strategy:シェアを奪おうという野心的な企業によって採用される戦略。戦略目標と競争相手の明確化(誰を何のために攻撃するのか?)(マーケット・リーダー/力の劣る同規模の企業/地方の中小企業)。攻撃戦略の選定(どのように攻撃するのか?)(正面攻撃/側面攻撃/包囲攻撃/迂回攻撃/ゲリラ攻撃)。戦略行動の遂行(差別化の徹底を行う)。フォロワー戦略 Market follower strategy:フォロワー戦略は、リーダー企業やチャレンジャー企業の模倣をしながら経営資源の蓄積を図る戦略。ニッチ戦略 Market niche strategy:経営資源の集中により、利潤とイメージや名声の獲得を実現しようとする特徴がある。限定的なマーケットにおいてリーダー戦略をとっているとも言える。](/knowledge/marketing/building_internet_strategy/img/marketing-img.webp)
(2)市場細分化
市場を、顧客の所得、地域、嗜好、年齢、職業等、およそ販売に影響を与える要因をすべて考慮に入れて細分化し、それぞれの特性に応じたきめ細かい商品製作によりマーケティングを行なうことを言います。また、それを生産、製品、販売の側からいうと、下記の二種類の戦略に分けることができます。
![差別的マーケティング戦略(Differentiated marketing strategy)とは市場を細分化して顧客の好みや要望に細かく対応することで、競合先企業との競争において差別化を図ろうとする戦略を言います。集中マーケティング戦略(Concentrated marketing strategy)とは細分化されたマーケットのうちひとつもしくはごく少数のセグメントに集中的に経営資源を投入することで、成長を得ようとする考え方を言います。](/knowledge/marketing/building_internet_strategy/img/marketing-img-2.webp)
参考:どんな商品もコモディティ化する
![縦軸に性能、横軸に時間を取り、時間と共に商品の性能および顧客の求める性能がどう変化するかを示した折れ線グラフ。2本の実線は、それぞれ先行商品Aと後発商品Bの性能をあらわし、常に前者が後者を上回りつつ右肩上がりで推移しています。また2本の点線は、上位市場の顧客が求める性能と下位市場の顧客が求める性能をあらわし、常に前者が後者を上回りつつ右肩上がり(ただし勾配は商品の性能向上よりは緩やか)で推移しています。時間軸には経過する順に(1)、(2)、(3)の各時点を記載していますが、それぞれの持つ意味は続く本文で解説します。](/knowledge/marketing/building_internet_strategy/img/marketing-img-3.webp)
細分化された市場では、異なる商品によるすみ分けが生じます。例えば、高価であってもより高い性能を必要とする人たちの市場と、払える金額に上限があるためそこそこの性能で満足する人の市場です。上の図は、そうした2つの市場における製品の性能およびその向上を時間の推移とともに表したものです。まず、(1)の時点では、先行商品Aは上位の市場が求める性能を満たしきれてはいません。それでも、商品Aの性能が最も高ければ上位市場は商品Aを購入します。しかし、商品Aの性能はすでに下位の市場が求める性能を超えているため、下位市場の顧客はわざわざ高い金額を払ってまで、商品Aを求めることはなく、十分必要な性能を満たした商品Bを求めます。(2)の時点になると、ようやく商品Aが上位市場の顧客の望む性能を満たすようになります。ここまでは商品Aの成長は市場の要求にあったものだと言えます。しかし、(3)の時点になると、後発商品Bの性能が上位市場の求める性能を満たしたものになります。この時点ではもはや商品Aが持つ性能の高さは付加価値を生み出さなくなります。必要な性能を満たした商品Bとの価格競争に巻き込まれ、コモディティ化するのです。そして、競争優位性を生み出していた性能の差は無効となり、まったく別の差(サービス、価格、ブランド)による競争に入ります。
例えば、かつては企業にとって自社のホームページがあるかないかが問題だった時代がありました。その時代なら単にデザインがよいホームページを作れることだけで競争優位性となりました。しかし、もはや企業にとって自社ホームページがあるのは当然のことです。しかも、ECサイトを立ち上げるのにもメールマーケティングを行なうのにも比較的安価なASPがあり、バジェットの少ない中小企業でも手の出せる範囲となりました。必要な機能を満たすかどうかは焦点ではなくなり、そこからどんな成果が得られるかに焦点は完全に移っていると言えるのではないでしょうか?ホームページ制作は完全にコモディティ化の時代を迎えたのでしょうか?いずれにせよ、この市場での価値基準が変わり、競合他社に対して競争優位性を生み出すポイントも以前とは異なるものになっているのは確かでしょう。言い換えれば、商品がコモディティ化してしまった市場において、新たな競争優位性を生み出すためには市場の再細分化が必要だということでしょう。
(3)マーケティング・ミックス
マーケティング・ミックスは別名4Pと言われ、製品・価格・プロモーション・流通チャネルの最も効果的な組み合わせを計画し、実行することを言い、下記のように表現することができます。
![マーケティング・ミックスの4Pである製品(機能、スタイル、サイズ、品質、バリエーション、ブランド名、デザイン、パッケージ、サービス保証、返品…)、価格(標準価格、値引き、アロウワンス、取引価格、支払期限、信用取引条件、リベート…)、プロモーション(広告、人的販売、販売促進、PR、パブリシティ…)、流通(チャネル、販売エリア、品揃え、立地、輸送、在庫、物流拠点、ロジスティクス…)の組み合わせを考えながら、標的市場、達成すべき目標を目指し、包括的なマーケティング戦略をたてる](/knowledge/marketing/building_internet_strategy/img/marketing-img-4.webp)
新しい動き
もとより、インターネットと他のメディアを比較してみますとその大きな特徴は、「双方向ネットワーク」「不特定多数との接続」が可能という点にあります。また、現代は顧客志向のマーケティングの重要性から、対話型マーケティング(dialogue marketing)という概念もあり、売り手視点を持つ4Pを買い手の視点に切り替え4Cを採用すべきという議論も多くなっています。特にインターネット戦略を実行する場合、その特性から4Cを採用した方が効果が出やすいという立場をわれわれは取っています。
![売り手の視点=4Pとは製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)であり、買い手の視点4Cとは顧客価値(Customer value)、コスト(Cost to Customer)、便利(Convenience)、対話(Communication)である。](/knowledge/marketing/building_internet_strategy/img/marketing-img-5.webp)
まとめ
3項目からなるマーケティング戦略は、インターネット戦略にどのような影響を与えるのか?それは、
- 市場(顧客)優先か、競合が優先か広い意味でのターゲットが決定します。そのことはインターネット戦略を実行するにあたり、構築物全体(構造・表現…もろもろ)に大きな影響力を与えます。
- 市場の細分化により、インターネット戦略の持ち味である、One to Oneの実行を容易にします。
- 企業側の視点のマーケティング・ミックス(4P)を把握できれば、顧客側の視点のマーケティング・ミックス(4C)への変換が容易であり、対話型マーケティング(dialogue marketing)の実行計画をスムーズに進められるため、インターネットの持つ潜在的能力を早期に開花させることが可能になります。
マーケティング戦略について解説をしてきました。企業戦略の方針を受けて、どのような手法によって市場に挑むのかが理解できたと思います。企業におけるマーケティング戦略を把握することは、インターネット戦略を実行する上で、企画、設計、細部にわたる表現方法にまで影響を及ぼすことがご理解いただけたと思います。
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