TPAC 2025でのAccessibility Update
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)TPAC 2025のセッションで、アクセシビリティについての報告がありましたので、主だったところを取り上げたいと思います。(TPACについては木達によるコラムW3C TPAC 2025参加報告もご覧ください。また、去年の同様の報告はTPAC 2024時点のAccessibility Guidelines (AG) Working Groupの近況をご覧ください。)
- Accessibility Update(Shawn Lawton Henry氏)
- Accessibility Update(Kevin White氏)
1つ目のセッションでは、最初にWCAG 2.2がISO/IEC 40500:2025となったことについて触れています(W3Cのプレスリリース)。また、Webでない情報通信技術にWCAG 2を適用するWCAG2ICTについて更新を進めていることにも触れられています。
次に、オーサリングツールのアクセシビリティガイドラインATAGのアップデートについて検討を進めていることを明らかにしています。実際にコミニュティグループATAG CGが立ち上げられており、この中で議論が進められていくものと思われます。WCAG 3ではATAG 2.0を取り込んでいくことが謳われていますが(Explainer for WCAG 3.0のIntroductionを参照)、これとは別にATAGを進めていくことになるのか、注視したいところです。
2つ目のセッションでは、WCAG 3について触れています。去年のTPACから2回(2024年12月、2025年9月)更新していることに触れつつ、2025年末から2026年初頭にかけて更新を公開するとのことです。WCAG 3を策定しているAccessibility Guidelines Working GroupのCharter(憲章)は来年4月まで延長されていますが、その後の期間については新たなCharterを作成するとのことです。その中で、2028年後半にCandidate Recommendation(勧告候補)のステータスを目指す...とのことですが、WCAG 3の詳細について具体的にどうこうという話が出てこないあたりは進捗として芳しくないのではないかと思われます。
また、ACT Rules Format 1.1が8月に勧告候補となったこと(ACT Ruleがどのようなものなのかについては、WCAG 2.2解説書のWCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照してください)や、Accessibility of machine learning and generative AIという生成AI絡みの文書の策定、公開文書としては2021年の日付となっているSpecification for Spoken Presentation in HTMLの更新の検討についても触れられています。
ざっくりとですがセッションについて触れました。個人的に気になったのは、ATAG CGの立ち上げでしょうか。達成基準が増えた分だけ、オーサリングツールで手当てすべきことが増えるともいえるわけですから、ある意味では順当な流れなのかもしれません。