RFPに潜む「本当に実現したいこと」を探る――ミツエーリンクスの提案の作り方
エグゼクティブエディター 上原ミツエーリンクスが発信しているメールマガジン「ミツエーリンクス ニュース」の286号(2026年2月12日配信)で、「企業のWeb担当者は何を改善したかった? 2025年のRFPを集計してみた」という記事を書きました。この内容は現在、この広報Blogでも公開していますので、ご興味がある方はご覧いただけますと幸いです。今回の記事は、その続編にあたります。
そもそも、ミツエーリンクスにはお客様への提案を主務とする部門があり、RFPをお預かりする機会が多いことから、このテーマを発想しました。前回の記事では、お客様がRFPに込めたご要望の中から、近年の傾向を探るアプローチで執筆しましたが、今回はRFPを受け取った私たちが、どのような提案をおこなっているのかを言語化すべく、当社の執行役員であり、エグゼクティブプランナーの湯浅に話を聞きました。
RFPの要件に沿うことをゴールと捉えず、本質と背景の把握に努める
――2025年にお客様からいただいたRFPには、ブランディング向上やUI/UX改善、運用効率化というご要望が、比較的多く記載されていました。こうしたRFPに書かれた要件を細かく見ていけば、実際にお客様が実現したいことは、すべて把握できるものですか?
湯浅:いいえ。RFPは、お客様の社内で承認を得るまでに多くの人が目を通すため、いろいろな人の思いが混ざりやすいものです。回覧と修正を重ねると、どうしても本当に大事なことは隠れがちで、RFPという書類に載るときには、ブランディング向上やUI/UX改善、運用効率化というキレイな言葉に置き換わってしまいます。
――では、お客様のRFPの奥には、ホンネが隠れている......と。
湯浅:そうです。ブランディング向上やUI/UX改善は、本当に実現したいことを叶えるための「手段」であるケースが多い。「何のためのブランディングなのか」「何のためのUI改善なのか」。その根底には、本当にお客様が実現したいことが潜んでいると考えています。私たちは、その発言の本質を突き詰める必要があるのです。
――なるほど。
湯浅:また、「新しい中期経営計画を作成した」「社長交代を機に新事業が始まる」など、提案依頼に至るまでの背景も、私たちが押さえるべきポイントの1つ。ですから、お客様へのヒアリングはパワーをかけて重点的に実施します。最後の提案がご要望の本質からずれたものにならないよう、最初のお客様へのヒアリングに、大きな労力をかけるのです。
AIの台頭で、Webサイトは正しい一次情報を発信する役割が強まる
――お客様にヒアリングをしていく中で、以前と比べてお客様が希望する要件に、変化はありますか? 最近、増えているご要望などはあるのでしょうか?
湯浅:中長期的な視点でのご相談が増えていると感じます。もちろんリニューアル単体のご依頼が多いのですが、増えているのは時間をかけても「ガバナンスを効かせたい」というもの。例えば「ガイドラインやデザインシステムによる統制や効率化を実現したい」「全世界で運用効率を上げるためにCMSを刷新したい」などのご相談が多いですね。サイト単体ではなく、サイト群で考える相談が増えています。
――ブランディング向上やガバナンスなどの実現を目指す企業が増えていると。それは、長い時間をかけて少しずつ、自社の信頼性やロイヤルティを向上させていきたいという思いが表れているのですかね?
湯浅:それもありますし、将来起こる事象への対応もあるでしょう。今、企業の情報はAIによって解釈され、AIからユーザーへの回答として提示されるようになっています。もはやAIもステークホルダーに数えるべきで、AIが第三者のサイトで誤った情報を参照しないよう、今後企業のWebサイトは、全てのステークホルダーに対する、正しい一次情報を伝える場としての役割が強まっていくはずです。
――AIの探している情報が自社サイト上になくて、第三者のサイトで情報を参照する、というケースをできるだけ減らすことが、これからは重要になってくる、と。
湯浅:はい。「沈黙はリスク」であり、タイムリーに正しく適切な情報を出すことが、企業価値に直結してきます。今はWebサイトでの情報発信のスタンスを、企業としてどう見直すか、というフェーズに来ていて、それがご要望の変化に表れているのではないかと感じます。
ブランディングは「見た目の統一」に加え、企業の思いを「どう伝えるか」
――先ほども話題に挙がりましたが、今回RFPを集計した中で特に多かった「ブランディング向上」というご要望に対して、ミツエーリンクスは、どのように提案を作っていますか?
湯浅:まず、お客様がブランディングをどう捉えているか、を確認します。「自社の強みを打ち出したい」「●●というイメージで自社を認識してほしい」「実績や品質の良さを伝えたい」「他社との違いを顧客に知ってほしい」など、ブランディング向上の結果として期待している効果は、会社ごとに異なります。個別の思いをヒアリングしたうえで、最適な施策を組み立てるようにしています。
――確かに。ブランディングという言葉は、企業によって描いているイメージが違いそうです。RFPを額面通り受け取って一律な対応をしていては、あとあと問題のある提案になってしまう可能性がありますね。
湯浅:はい。ブランディング向上は、デザインや見た目の統一に加えて、企業としてどういう姿勢やメッセージを世の中に打ち出すか、が大切だと思います。そして、企業の現在の正しい姿と将来ありたい理想の姿を明確にして、その理想に向けたプロセスをどう描いていくか、も重要です。私たちは、それを具体的なアウトプットの形と実行計画にはめて、お客様にご提案しています。
――例えば、技術的に優れているのに、Webサイトではそれがうまく表現できておらず、企業の良さが伝えられていない、というケースはあると思います。そのような企業からの依頼では、どのように提案を作るのですか?
湯浅:自己アピールが得意ではない企業は少なくないですね。しかし、それもその企業にとって大切な文化・風土ですので、私たちはそこを活かしつつ、Webサイトでどう表現するかを考えます。競合他社が採用して成功したパターンを、同業種の企業への提案で強く意識することもありません。毎回お客様に合わせて、フルオーダーに近い形で提案しています。
予算とスケジュールを考慮し、お客様に適した無理のない計画を提案
――RFPに記載がないことであっても、お客様に提案して、ご判断いただく、ということもあるのでしょうか?
湯浅:はい。最初にお話しした通り、RFPに書かれた要件が、実際にはまだ固まりきっていないこともよくあります。お客様とお話をしていく中で要件をきちんと形にして、お客様の検討が及びにくい部分を補完して提案することが、プロとして大事なことです。そのため、常にアンテナを張り巡らし、Web関連の法令や国内外のトレンドを把握して、提案の手札に加えられるよう努めています。
――要件として含むことで理想に近づくかもしれないけれど、お客様にとってはオーバースペックになりそう、といった場合はどうするのですか?
湯浅:お客様が将来ありたい姿をゴールとして、そこに向けて予算とスケジュールのバランスを見ながら、適した解をご提案するスタンスです。無理に理想やトレンドを押しつけても、お客様が運用しづらくなったり、更新が止まったりしては、意味がありませんから。
――安心しました。ところで、ミツエーリンクスには提案を専門とする部署がありますが、こういう体制は他のWeb制作会社にもあるのですか?
湯浅:私は聞いたことがないですね、珍しいと思います。本来、狙った市場に狙ったソリューションを準備して、アプローチをかけるほうが効率的です。一つひとつのコンペに心血を注いで、毎回ヒアリングから提案書を作り上げる非効率さから、競合他社に同じような部門がないのだと思います。ただ、こうしたゼロベースで提案を組み立てるやり方を、評価してくださるお客様もいます。
――毎回コンペのたびに声をかけてくださるお客様や、何年か越しに指名をくださるお客様は、そうした部分を評価してくださっているのかもしれませんね。
湯浅:はい。また、ミツエーリンクスは主事業であるWeb構築・運用形のサービスのほか、多様なご要望に対応できるよう、さまざまなサービスを豊富に用意しています。守備範囲の広さが強みの1つで、お客様のご要望や私たちの提案の実現性は高い。これが私たちの提案の特長です。