GAAD2025から考える、視覚障害者が実感するWebアクセシビリティの現在地
アクセシビリティ・エンジニア 大塚5月15日は、2025年のGlobal Accessibility Awareness Day(GAAD)でした。GAADは、デジタル分野のアクセシビリティについて考える1日です。毎年5月の第3木曜日に、各国で様々なイベントが開催されており、日本でもGAAD JAPAN 2025が開催されたりしました。
GAADを機に、本コラムでは広い意味でのアクセシビリティの認知度について、いち視覚障害者目線で考えてみたいと思います。
商業施設や飲食店で的確にサポートいただけることが増えたり、駅構内で視覚障害者への声掛けについての啓発放送がされたりと、「アクセシビリティ」というキーワードはともかくとして、視覚障害者が直面する困りごとや必要なサポートについては認知されつつある印象です。
Webアクセシビリティに関連した変化に目を向けると、パスポートの作成や更新、転出届の提出など、とくに行政に関連した手続きについて、Webで完結するものが増えました。また、行政関連の限られた手続きを利用しての印象とはなりますが、致命的なアクセシビリティ関連の問題に遭遇することはほとんどありませんでした。
アクセシビリティに関連した話題では、課題が注目されることが多いですが、ここ2~3年の動きを振り返ると、個人的な印象ではあるものの、かなり速いスピードで良い方向への変化が起きているように感じています。
近年のアクセシビリティに関連した大きな動きとして、昨年4月の改正障害者差別解消法の施行を挙げる方も多いのではないでしょうか。確かに、「合理的配慮(調整)」や「(Webを含む)アクセシビリティ」など、関連したキーワードが広く知られるようになった印象があり、それ自体は良いことだと感じています。ただ、前述したいくつかの変化は、法改正以前から少しずつ起きているものであり、法改正が直接的な要因とは考えづらいのが正直なところです。
また、つい最近、銀行の視覚障害者用ATMの故障について問い合わせたところ、迅速に対応いただけたことがありました。これは法律改正による意識や体制の変化によるもののようにも感じるのですが、確証はなく推測の域を出ません。
改正法の業務への影響を振り返ると、施行の直前に、Webアクセシビリティの改善を進めたいというお問い合わせを多くいただきました。2024年4月以降、件数としては落ち着いている状況ですが、多くのお問い合わせに共通して感じるのが、Webアクセシビリティの改善が必要なことは知られていても、改善しないことでどのような問題が起こるのか、改善することでどのような恩恵があるのかといったことは、あまり知られていないのではないか?ということです。
こうした認識のギャップを埋めるためには、理論的な知識だけでなく、実際に視覚障害者がどのようにWebを利用し、アクセシビリティの問題の影響をどのように受けるのかを、具体的に知っていただくことが重要です。
Webアクセシビリティの向上は、あらゆるユーザーにメリットがありますが、なかでもWebアクセシビリティの問題の影響を受けやすいのが、視覚障害者、スクリーン・リーダーの利用者です。実際に、視覚障害者がどのようにWebを利用するのか、デモを通じて知っていただける、「スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ」というセミナーを、6月5日に開催します。Web担当者の方や、これからWebアクセシビリティに取り組みたいと考えている方々に、ぜひご参加いただきたいです。ご多忙中とは存じますが、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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