2025年版Web Almanacにみる、アクセシビリティと表示パフォーマンスの現状
エグゼクティブ・フェロー木達 一仁「Almanac」という英単語を見ますと、個人的には映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に登場する架空のスポーツ年鑑『Grays Sports Almanac』が真っ先に思い出されますが、Webの年鑑、すなわちWeb Almanacの2025年版が先日公開されました。
Web Almanacは、Webがどのように構築されているかを追跡する使命を帯びたプロジェクト、HTTP Archiveの発行する年鑑です。2019年版を皮切りに、ほぼ毎年発行されてきました(2023年版のみ不在)。
最大の特徴は、データセットの巨大さでしょう。2025年版のWeb Almanacでは2025年7月に取得された、実に1,600万を超えるWebサイトを含むデータセットに基づいており、Web全体の現状把握にうってつけです。
データセットの巨大さに呼応するかのようにWeb Almanac自体、かなりの情報量があります。全体は4つの部(Part)から成り、全部で16ある章(Chapter)を、総計72名もの専門家が担当・執筆されています。
現時点では一部を除き日本語訳が提供されていないこともあって私自身、すべての章を読み終えたわけではありません。本コラムでは、当社が注力してきたWeb品質であるアクセシビリティと表示パフォーマンス、それぞれの章について感想を述べます。
アクセシビリティ
昨年、2025年は欧州アクセシビリティ法が完全施行された年であり、Web全体でみてもアクセシビリティ品質はさぞ改善されているのだろうとお考えの方が少なくないかもしれません。
しかし結論を先に書きますと、少なくともWeb Almanacにおいて分析される範囲においては、2024年と比べ大差ない状況にあることが記されています。
Lighthouseにおけるアクセシビリティスコアの中央値にしろ、色のコントラストに配慮されたサイトの割合にしろ、わずかずつながら改善が継続している項目はあり、悲観すべき状況ではないかもしれません。
しかし、使用している自然言語をHTMLのlang属性で指定していないケースや、視覚的なフォーカス表示を意図的に非表示にしているページなど、ごく基本的なルールを守れていないページがいまだ数多く存在することが報告されています。
加えて、アクセシビリティ改善を目的としたウィジェット類、俗にアクセシビリティオーバーレイと呼ばれることの多いツールを採用するページの割合が、着実に増加傾向にある点も気掛かりです(当社はアクセシビリティオーバーレイの導入を推奨していません)。
そういうわけで、Web全体ではアクセシビリティが向上しているとはなかなか言い難い状況を、認めざるを得ません。この状況を打破するには、教育や普及啓発活動の充実、そしてAIによるアクセシビリティチェックツールの進化が必要と強く感じます。
なお、アクセシビリティの章については後日、アクセシビリティBlogのほうでも取り上げる予定があります。
表示パフォーマンス
表示パフォーマンスについてはGoogleが提唱し、いまやChrome以外のWebブラウザでも一貫した計測が可能となったコアウェブバイタルに基づく分析が、目を引きました。
コアウェブバイタルに含まれる3つの指標、つまりLCP・INP・CLSのすべてにおいて良好な状態にあるWebサイトの割合は、わずかずつながらも年々着実に増えているようです。
これは別途ページの重さの章に記載されている、表示に必要なダウンロード容量が右肩上がりで増加し続けている事実を踏まえますと、やや意外に思えます。
コンテンツがリッチになるほど、ファイルサイズが重くなるほど、それに応じて表示を高速に、なおかつ表示を安定させるためのテクニックが実践されてきたと仮定すれば、素晴らしいことです。
しかし、上記の仮定に反するような事実が明らかにされています。ビューポートを最も占める画像、いわゆるLCP画像は本来、遅延読み込みを行うべきではありませんが、モバイル向けページの実に17%において、そのような実装がなされていたそうです。
また、モバイル向けページの62%では、少なくとも1つの画像で幅や高さが明示的に指定されていませんでした。表示上の不安定を回避するために、画像を表示させるimg要素ではwidth/height属性を指定することがベストプラクティスとなって久しく、この数字は私には意外に映ります。
総じて表示パフォーマンスは緩やかな改善傾向にあるものの、改善実現のためのテクニックの正しい実装がなお一層求められている印象を受けました。
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