LLMO時代に改めて考えたい、Webの「ワンソース・マルチユース」
エグゼクティブ・フェロー木達 一仁今年1月に開催したLLMO対策セミナーには、たいへん多くのお申し込みとご参加をいただき、Web担当者の皆様の興味・関心の高さを強く感じました。
従来の検索エンジン最適化(SEO:Search Engine Optimization)に加え、大規模言語モデル最適化(LLMO:Large Language Model Optimization)は今や、オウンドメディアの運用において不可避の話題となりつつあります。
積極的に情報収集をされている方であれば、すでにご存知かもしれませんが、CDNベンダーとして知られるCloudflare社が先月、LLMOに関連して興味深い発表を行いました(エージェント向けマークダウンの導入)。
AIエージェントに対し、既存のWebコンテンツをHTML形式ではなく、機械処理により適したフォーマットであるマークダウン形式へ自動的に変換のうえ提供する機能を、発表したのです。
AIエージェントの視点で考えれば、確かにHTMLは有益な情報に比してノイズを多く含む、言わばS/N比の悪いフォーマットなのでしょう。また消費トークンの抑制は、極めて現実的なメリットであるとも思います。
しかし、Webサイトを運営する側がAIエージェントに対し、果たしてそこまで寄り添う必要があるのでしょうか。別フォーマットでコンテンツを提供することが、今後のWebにおいて恒久的に求められるとは、私は思いません。
振り返ってみれば、Webの歴史は、特殊化と普遍化の綱引きの連続でした。
かつて、視覚障害者の利用するスクリーンリーダーの読み上げを偏重した、アクセシビリティの確保に振り切った位置付けとして、別途「テキスト版」を用意することが少なからずありました。しかし、二重管理に伴うコスト増や支援技術の進化などにより、そうした取り組みは廃れました。
携帯電話やスマートフォンが普及し始めた当初は、それぞれに特化したバージョンのコンテンツを出力し分けることが一般的でした。やがてモバイル機器の性能が全般的に向上し、またレスポンシブWebデザインという考え方や実装が普及したことで、同様に廃れました。
特殊化というニーズに対し普遍化、標準化のニーズが打ち勝つことで、Webは絶えず進化し、利用の裾野を広げ続けてきたと私は捉えています。対LLMという文脈においても、おそらく同じことが起こるだろうと私は予想し、またそう期待をしているわけです。
将来、LLMの推論能力が向上することで、わざわざマークダウン形式に変換することの意義や必要性は下がる可能性があります。またWeb標準の進化によって、以前はJavaScriptに頼らなければ実現しにくかったUIが、HTMLとCSSだけで実現できるようになるケースが年々増えています。それはユーザーにとっての表示パフォーマンス向上のみならず、AIエージェントにとってノイズの最小化というメリットをもたらすでしょう。
つまり、アクセシブルで表示パフォーマンスに優れたコンテンツ実装、HTML制作を追求し続けることが、WebプラットフォームやLLMの進化と相まってLLMOたり得る、と考えます。それはすなわち、Webの「ワンソース・マルチユース」という品質特性がLLMOの時代には一層重要になる、ということでもあります。
その傾向は、W3CのWeb Machine Learning Community Group Charterで標準化の議論がなされ、先ごろGoogle Chrome 146で実験的に実装された、WebMCPの動向からも感じ取ることができます。
WebMCPとは、WebアプリがAIエージェントに対し、MCP文脈で呼ばれるところの「ツール」を公開できる仕組みのことです。既存のWebアプリが、AIエージェントとより効率的に連携できるようになるAPIとして目下、期待を集めています。
LLMO時代を迎えてもなお、ワンソース・マルチユースの価値、ひいてはWebコンテンツにおける人間可読性と機械可読性の両立・最大化の価値を顧客の皆様に、そして社会に提供し続けたいと思います。
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