Webアクセシビリティの文脈で注意したい「準拠」の意味
エグゼクティブ・フェロー木達 一仁日常生活のなかで見聞きすることは多くないでしょうが、読者の皆様はおそらく「準拠」という言葉をご存知のことと思います。
私の使用するMacにデフォルトでインストールされている辞書アプリには、三省堂の「スーパー大辞林」が収録されています。同アプリで「準拠」の意味を調べますと、次のように記されています。
ある事をよりどころとして、それにしたがうこと。
「準拠」という言葉は、一般用語として広く用いることができ、実際、当社ではサービス名の一部として使用してきた経緯があります。
その一例が、2004年にリリースした「Web標準準拠サービス」です。これは、Webの標準的な技術仕様であるWeb標準をよりどころとし、Web標準にしたがってWebページを制作するサービスです。
今や、Web標準への準拠は当社制作物の当たり前品質の1つとなって久しく、また業界の常識でもあることから、同サービスの提供はすでに終了しています。しかし、同サービスを契機に「準拠」という言葉を当サイトで目にするようになった方も、なかにはいらっしゃるかもしれません。
前置きが長くなりましたが、この「準拠」という言葉をWebアクセシビリティの文脈で使用する際には、注意が必要です。といいますのも、「よりどころとして、それにしたがう」以上の意味を持つ場合があるためです。
日本の国家規格、JIS X 8341-3に基づきWebアクセシビリティに取り組む場合、同規格にどのように対応するか、ないし対応済みかを、アクセシビリティ方針や試験結果において表記する必要があります。
そこで参照されるのが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の定める対応度表記ガイドラインですが、同ガイドラインには「準拠」(あわせて「一部準拠」「配慮」)の意味するところが独自に定義されているのです。以下に、「準拠」の説明を引用します。
「準拠」は、ウェブコンテンツを『JIS X 8341-3:2016』の要件に従って制作・開発し、『附属書JB(参考) 試験方法』に示されている手順などを参考に試験を実施したうえで、目標とした適合レベルに該当する達成基準を全て満たしていることを示すために使用することができる。
つまり、2016年版のJIS X 8341-3を前提とするなら、適合レベルAへの準拠であれば25、AAへの準拠であれば38ある達成基準すべてを満たすことを意味するのです。これは、明らかに「よりどころとして、それにしたがう」以上に詳細な意味をあらわしています。
そういうわけで、ことWebアクセシビリティの文脈において「準拠」という言葉を使う際には、一定の注意が必要となります。JIS X 8341-3に基づく取り組みなのか、そうでないのかで、「準拠」するために越えるべきハードルの高さが大きく変動し得ます。
なお、当社は以前からアクセシビリティ標準対応(以下「標準対応」)と称し、お客様から求められずとも、W3CのWeb Content Accessibility Guidelines(WCAG)の適合レベルA相当のアクセシビリティ品質を提供してきました。
当初から標準対応は、JIS X 8341-3における「準拠」とイコールではありません。その点は過去、標準対応に関連して発行したニュースリリースにおいても一貫して表現をしてきた認識です。2023年10月6日付けで発行した「ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)2.2への標準対応の開始について」では、以下のように記しました。
お客様に特別のご負担をいただくことなく、WCAG 2.2の適合レベルAに準拠した制作物をご提供します(音声や動画といったメディアファイル、PDFコンテンツや特殊な要件を伴う一部の例外を除く)。
「準拠」という言葉こそ使用しているものの、標準対応における準拠の対象はJISではなくWCAGであること、また一部のコンテンツについては例外的に適合レベルAへの準拠を行わない旨を明記しています。
当社にWebサイトの構築・運用をご相談の際、アクセシビリティに関してJIS X 8341-3に基づいた取組みを推進されているようであれば、ぜひその旨をお早めに共有いただけますと幸いです。
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