AIエージェントに対応するための土台、Webアクセシビリティ
エグゼクティブ・フェロー(CBO)木達 一仁高まるAIエージェント対応の必要性
Webサイトにアクセスするのは人間が操作するWebブラウザとは限らない、というのは周知の事実だと思いますが、AI技術全盛の昨今においては、AIエージェントの存在感が増しています。
エージェントという言葉には代理人、仲介者といった意味があります。AIエージェントとはその名の通り、人間に代わってAIが自律的に目的を達成するソフトウェアやシステムの総称です。
コラム「問われるAI技術とWebブラウザの距離感」では、AI技術が統合されたWebブラウザをエージェントブラウザと記しました。その種のブラウザも、広義のAIエージェントの範疇と捉えられます。
Web担当者の皆様が管理・運用されているWebサイトにも、すでにAIエージェントが訪れているかもしれません。人間と同等にAIエージェントがアクセスし、自律的に操作するこれからのWebを、「エージェンティックWeb」と呼ぶ向きもあります。
そこで気になるのは、AIエージェント向けにWebコンテンツ側で何か特別な対応が必要になるのか、AIエージェントに対応するためにWeb担当者ができることは何か、ではないでしょうか。
私の答えは、本コラムのタイトルからお察しのとおり、コンテンツのアクセシビリティ向上に取り組むことです。
対応の鍵となる機械可読性、そしてアクセシビリティツリー
あらゆるWebコンテンツは基本的に、機械を介してユーザーに届けられます。
Webブラウザも、視覚障害者が利用するスクリーンリーダーと呼ばれる音声読み上げソフトウェアも、検索サービスにおいてWebページの内容を評価し順位づけを行うシステムも、すべて機械です。
機械による読み取りやすさ、処理しやすさを意味する機械可読性に優れたほうが、ユーザーに伝わりやすいと言えます。
アクセシビリティに関するセミナーなどにおいて、検索エンジン対策(SEO)もアクセシビリティ向上も機械可読性を高める点では取り組む内容に大差ない、と説明してきたのはそういう意味です。
AIエージェントもまた機械の一種ですから、コンテンツの機械可読性に優れているほうが、AIエージェント的には望ましいことになります。
Webコンテンツの機械可読性を支える具体的な仕組みの1つに、アクセシビリティツリーがあります。やや専門的になりますが、アクセシビリティツリーとは、HTMLにある要素やARIA属性などからブラウザ内部で生成される情報構造のことです。スクリーンリーダーのような支援技術の多くは、アクセシビリティツリーの内容をユーザーに伝達します。
最近、A11y-CUA Dataset: Characterizing the Accessibility Gap in Computer Use Agentsという論文を知りました。この論文では、視覚障害者が依拠するアクセシビリティ情報をAIエージェントが十分に活用できていない現状とともに、性能改善の方向性の1つとしてアクセシビリティツリーを扱うことが示唆されています。
WebコンテンツがAIエージェントに対応する鍵は機械可読性、より踏み込むならアクセシビリティツリーにあると考えています。
来るべきエージェンティックWebの時代に向けて
現在、すべてのAIエージェントがアクセシビリティツリーを利用しているわけではありません。
したがって、AIエージェントがアクセシビリティツリーを利用するようになるのが先か、アクセス/操作される側がアクセシビリティを高め、優れたアクセシビリティツリーを提供するのが先かは「鶏が先か、卵が先か」に似た状況と感じられます。
しかし、すでにBrowserbaseのStagehandや、Vercelのagent-browserといったAIエージェントが、アクセシビリティツリーを利用しています。MCPサーバーの実装においてもアクセシビリティツリーを利用する動きが見られます。Playwright MCPやmacOS用のmacos-useがその例です。
そういうわけで私は、AIエージェントに対応するための土台として、Webアクセシビリティがますます求められるだろうと考えています。利用者および閲覧環境の多様化や、法制化への対応に加え、これからはAIに理解される、エージェンティックWebに備えるとの新たな動機が、Web全体のアクセシビリティを向上させるものと期待します。
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