劇的に変化するAI検索、企業はどのように向き合うべきか?
企業が自身で語らなければ、他の誰かが語るでしょう。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2025年3月13日に公開された記事「The AI search revolution: how should your company respond?」の日本語訳です)

GoogleのAI Overviewの表示内容は、SEOの基本を重視しています
Bowen Craggsでは、イギリスのデジタルマーケティング会社「Exposure Ninja」の検索専門家、Charlie Marchant氏とTim Cameron Kitchen氏にインタビューしました。そこでは、AI検索の最新トレンドと、それが企業のデジタルコミュニケーションに与える影響について、詳しく聞くことができました。
2024年6月以降、AI検索の世界は大きく変化しました。GoogleのAI Overviews(検索結果のAIによる要約)が一般的になり、「ロングテール(3語以上の具体的な検索クエリ)」の約60%にAI Overviewsが表示されるようになりました。Google AI Overviewsに限らず、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索エンジンにおいても、人々が貴社について調べる方法は大きく変革しています。
そうした状況の中、あらゆる情報を獣のように食べるAIツールに対して、私たちはどのように情報を「与えて」いけば良いのでしょうか?
その大きなウエイトを占めているのが、充実した最新の企業Webサイトです。もし、貴社がビジネスについて十分な事実を提供していなかったり、立場を明確に示していなかったりした場合、AI検索はそうした情報を提供している他の情報源を参照します。つまり、重要なビジネステーマに関する議論の中で発言しないことは、深刻な評判リスクになり得るのです。
しかし、安心してください。顧客・求職者・投資家・ジャーナリスト・インフルエンサーなど、重要なステークホルダーが、貴社の概要や事業内容、立場について検索したとき、正確な情報が検索結果に表示されるようにするために、企業が講じられる手段はあります。
確固たる事実を数多く提供する
Bowen Craggsの長年の調査から、信頼を築くためには、確固たる事実の発信が重要であることがわかっています。また、次世代の閲覧者が企業サイトに求めるものを調査したところ、単に企業文化やネットゼロへの目標・進捗を説明するだけでは不十分であり、具体的な証拠を示す必要があることがわかりました。
そして、生成AIもまた、事実に基づく情報を重視します。もし、貴社がマイクロプラスチックの使用状況やジェンダー平等への取り組みなど、特定のテーマに関する事実を企業サイトで公開していない場合、ChatGPTをはじめとする生成AI検索エンジンは、回答を得るために他の情報源を探すことになります。
AI検索の重要な情報源の中には、口コミサイトも含まれます。そのため、透明性の高い企業情報を提供するTrustpilotやGlassdoorの評価を、Webサイトに組み込む企業が増えているのです。こうすれば安心して情報を得られるので、求職者や顧客からも喜ばれるでしょう。
企業が自身で語らなければ、他の誰かが語ることになる
物議を醸すテーマであっても、オープンかつ正直に話すことが重要です。Bowen Craggsの調査によれば、企業サイトは「真実の母船」といえます。なぜなら、動物実験や気候変動など、賛否が分かれる全ての難しい問題について、人々が会社のポリシーや立場を知るために訪れる場所は企業サイトだからです。
AI検索が主流となる時代では、立場を明確に示すことがますます重要になるでしょう。難しいテーマにも正面から向き合わないと、Googleなどの検索エンジンは、貴社の管理下にない、正しくない可能性のある情報源を基にした回答を生成します。
詳細なFAQを用意し、業界の専門用語ではなく、一般の閲覧者が日常的に使う言葉を、広く採用することが重要です。

自然な言葉遣いを用いたFAQは、難しいテーマに対する貴社の立場を、明確かつオープンに示すための、SEOにも有効な手段となります。
外部からの評価を示す
貴社がWebサイトで述べていることに加えて、他者が貴社について何を述べているかも、AI検索の情報源に影響します。
報道機関による掲載、第三者機関からの認証、外部による検証などは、AI検索ツールから高く評価されます(人間のステークホルダーにとっても、重要な信頼の証しとなります)。

アメリカの半導体企業AMDは、リーダーの経歴ページに、最近のメディア露出へのリンクなど、第三者の情報源を掲載しています。
「従来型」の検索でも、上位表示を目指す
従来の基本的なSEO対策は、引き続き重要であるだけではなく、AI検索のパフォーマンスを底上げする役割を果たします。
WebサイトでのSEO対策には、Blogや記事に担当者名を明記する、動画にトランスクリプトを付ける、パンくずリストを一貫して設置するなど、Webサイトの信頼性を高める工夫が必要です。
SEO対策の基本がしっかりしていれば、Webサイトを訪れるあらゆる閲覧者に対して、より効果的に情報を提供できるようになる、という波及効果が得られるでしょう。
動画・画像など、マルチメディアにも配慮する
AI検索では、テキストに加えて、画像や動画からも情報を取り込んでいます。動画には必ずトランスクリプトや字幕を付けましょう。これはアクセシビリティやSEOに有効なだけではなく、AIがコンテンツの内容を理解する上でも重要だからです。
生成AIは、人々が企業について調べる方法を、根本から変えようとしています。併せて、「企業サイトが最も信頼できる情報源であること」が、これまで以上に重要になっています。
企業サイトは「真実の母船」として、詳細な定性的情報、各種データ、そして外部評価・第三者認証を含め、定期的に更新する必要があります。そして、議論を呼ぶ問題にも正面から向き合い、分かりやすい言葉で作ったFAQを共有して、一般的な質問だけではなく、難しい質問にも答えましょう。
これらのステップを実行することは、単純にAI検索の結果で上位表示されるためだけでなく、顧客・求職者・投資家・ジャーナリスト・パートナーといった、あらゆるステークホルダーからの信頼を獲得し、会社の評判を向上させることにもつながります。