2015年12月18日 やらなかったことをやってみる

第五本部 サウンドエンジニア
浦 裕幸

誰もやらなかったことをやってみる

2か月ほど前になりますが、灰野敬二氏初の作曲作品「奇跡」を観ることができました。

ジョン・ケージの最も有名な作品の一つである「4分33秒」に対する答えとして作られた「88人の奏者がそれぞれ1本の指で、1台のピアノの鍵盤(88鍵)を同時に弾く」というものでした。

こうして書いてみると実にあっさりとしていますが、会場となったホールのステージには、グランドピアノを取り囲むように、建築現場などで使われるような足場が組んであり、ピアノの下にもぐるようにして弾く人、組まれた足場から手を伸ばして弾く人、上から吊るされながら弾く人と、あらゆる場所・角度から鍵盤に一人ひとりの手指が届いていく様は、演奏のための準備というよりは、すでに演奏の様相を呈していました。

集合・解体を繰り返し、約1時間30分をかけて、3度挑戦したものの、結果的には失敗(全ての音が同時に鳴らなかった)に終わってしまいましたが、灰野氏が事前のインタビューで「誰もやらなかったことを諦めずにやってみる。その意志を見せることは、今の世の中すごく大事だと思うから」と話していたことに、深く感銘を受けました。

出典:灰野敬二とジョン・ケージ、名曲“4分33秒”を巡る表現者の思い - インタビュー : CINRA.NET

自分がやらなかったことをやってみる

楽曲制作を行う上で、何か新しい挑戦をすることとは、例えば、これまでに使ったことのない楽器を使ってみたり、手癖(ルーティーン)のようなものを使うのを意識的にやめてみたり、その方法は様々ですが、今までの自分に無い要素を取り込んで、常に変化をして行くことが大切だと感じています。

以前は、大きなスタジオで何か月もかけてレコーディングを行ったり、専門の技術者を要するシンセサイザーや、個人では買うことが出来ないような高価な機材を使うことで、それ自体がその人(達)特有の音になっていた部分もありましたが、DAWが広く普及し、高品質な機材が安価に手に入る現代では、一定のクオリティを保つことは難しいことではなくなりました。

そんな中で、機材ひとつとっても「みんなが使っているから」使うのではなく、何かひとつくらいは、自分が良いと思えるものを使ったりするなど、新たな視点を持ったり、気付き・発見があるのではないかと考えています。

これからも冒頭のコンサートのような、フレッシュで刺激的なインプットを自分なりに咀嚼し、挑戦を続けて行くことが、お客様の満足やブランディングに繋がると信じています。

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