GAADを機に向き合いたいHTML品質
エグゼクティブ・フェロー(CBO)木達 一仁デジタルアクセシビリティについて考える1日、Global Accessibility Awareness Day(GAAD)を、今年は5月21日に迎えます。GAADは毎年、5月の第3木曜日に設定されるためです。
昨年は、アクセシビリティ・エンジニアの大塚が「GAAD2025から考える、視覚障害者が実感するWebアクセシビリティの現在地」というコラムを書きました。2026年のGAADを目前に控え、今回は私がWebアクセシビリティやAI技術にまつわる内容をお届けします。
The WebAIM Millionに見る残念な現状
GAADは、今年で15回目となります。すっかり定着した印象を受けますし、デジタルアクセシビリティの法制化は世界的に進んでいますから、Web全体で見ればアクセシビリティは年々、改善傾向にあるとお考えの方がいらっしゃるかもしれません。
しかし残念ながら、正確な傾向の把握は困難なものの、The WebAIM Millionを見る限り実態は異なるようです。
The WebAIM Millionとは、ユタ州立大学に設置された非営利組織、WebAIMが2019年から毎年、世界の主要100万Webサイトのトップページを対象に、アクセシビリティの調査結果を公開しているものです。
調査にはWAVE Stand-alone APIを用いており、同APIで実施可能な、機械的調査に限定される点は、注意が必要です。しかし2026年版のレポートによれば、ページあたりで検出されたエラー件数、WCAGに準拠していないページ数ともに、昨年比で増加していました。
近年、わずかながらも数値の改善が続いていただけに、この調査結果は残念と言わざるを得ません。
必ずしもWeb全体の傾向を反映しているわけではないものの、上位100万Webサイトのトップページでアクセシビリティが悪化した事実は、プロフェッショナルとしてWebサイトの構築や運用に携わる一人一人が、真剣に受け止めるべきと考えます。
残念な現状の要因はAI技術?
残念な現状の要因について、The WebAIM Millionでは以下の仮説が示されています。
These trends likely reflect broader shifts in web development including increased reliance on 3rd party frameworks and libraries and automated or AI-assisted coding practices (“vibe coding”).
これらの傾向は、サードパーティのフレームワークやライブラリ、自動化ないしAIの支援に基づくコーディング手法 (いわゆる「バイブコーディング」)への依存の高まりを含む、Web開発における広範な変化を反映していると考えられます。
AI技術がWeb開発に関与することで、アクセシビリティ品質が低下することを不思議に思う方も、中にはいらっしゃることでしょう。まさにその疑問に切り込んでいる記事が、Anna E. Cook氏のAI Doesn't Fix Accessible Systems. It Depends on Them.です。一部を以下に引用します。
LLMs learned from a web that was already broken. That is the structural debt AI is now inheriting and reproducing at scale. The next generation will learn from one that's gotten worse.
LLM(訳註:大規模言語モデル)は、すでに壊れたWebから学習しています。それこそは、目下AI が継承し、規模を増して再生産している構造的負債です。次の世代は、もっと悪化した世代から学ぶことになるでしょう。
詳細は、ぜひ記事全文をお読みいただければと思いますが、アクセシブルではないWebコンテンツを元手に学習したAIから生成されるWebコンテンツのアクセシビリティは、同等ないしもっと悪くなるということです。生成AIの仕組みからすれば然もありなん、と感じます。
GAADを機に向き合いたいHTML品質
現状を前向きに変えるためのアイデアは、さまざま考えられますが、私としてはHTML品質に向き合い、その改善に地道に取り組むことを提案したいと思います。
2年ほど前に「HTML軽視されすぎ問題」と題した講演を行いましたが、バイブコーディングのようなAI技術を活用したWeb開発が流行する昨今、ますますその「HTML軽視されすぎ問題」は深刻化しているように感じられます。
しかしながら、コラム「AIエージェントに対応するための土台、Webアクセシビリティ」で記したように、AI時代のWebコンテンツにおいてアクセシビリティツリーの重要性は高まりつつあります。そして、品質の高いアクセシビリティツリーは、品質の高いHTMLから生成されます。
では、品質の高いHTMLとは具体的にどう書けば良いのでしょうか。その答えとして私が個人的にオススメしたいのが、Jens Oliver Meiert氏がHTML.mdという記事のなかで提言していた、以下の3箇条です:
- 意味的に最も適切なHTML要素を使用してください(
Use the elements most appropriate semantically.
) - HTMLのコード量は必要最小限に抑えてください(
Use as little HTML as possible.
) - すべてのHTML出力をバリデータ(できればW3Cのものを)で検証し、エラーがあれば修正してください(
Validate all HTML output against an HTML validator (preferably the W3C one), and fix any errors.
)
読者の皆様も、GAADを機会としてHTML品質やアクセシビリティと向き合い、Webを、ひいては社会をより良く変革するための次なる一歩を踏み出していただけたら幸いです。
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。