CSUN 2018 現地参加レポート その2

エグゼクティブ・フェロー 木達

CSUNカンファレンス会場のManchester Grand Hyatt

アクセシビリティに関するカンファレンス、CSUN Assistive Technology Conference(通称「CSUN(シーサン)」)は、米国時間の3月22日、3日間続くセッションの2日目を終えました。この日、私は以下の各セッションに参加しました:

現地参加レポート その1と同様、聴講した中から2つのセッションをピックアップして簡単にご紹介します。

Building Advanced Experiences with Simple Accessibility Solutions

アメリカでは大手小売業者として有名なターゲット・コーポレーションにおけるWebアクセシビリティの取り組みを伝えるセッション。登壇者はLead Accessibility Consultantの肩書きを持つRyan Strunk氏。過去のCSUNにおいても、非常にB2Cらしいインタラクティブ・コンテンツをアクセシブルに制作した事例を紹介したことのある同社ですが、本セッションでは3D Shopping Roomという、立体感や没入感のあるコンテンツの事例を紹介しました。

同社のアクセシビリティチームは基本的にコンサルタントの割合が高いこともあり、2.5カ月間のあいだ、開発を担当したのは一人だけだったとのこと。成功の秘訣はセッションタイトルにあるように、一見複雑で高度な体験もシンプルな体験の積み重ねによって作られるという、考え方やアプローチにあったようです。アクセシビリティを確保するのに難しく考え過ぎたり、敢えて難しい実装に挑戦する必要はない、といったメッセージは胸に響くものがありました。

An Overview of Today's Most Challenging Accessibility Obstacles

昨今のWebデザインにおいて比較的よく見受けられるアクセシビリティ上の問題点をフォーム、ナビゲーション、色、画像、構造、カスタムコンポーネントの6つの分野ごとに総ざらいしたセッション。個々の問題点については動画を織り交ぜわかりやすく紹介し、またそれぞれについて「あるべき姿」を会場の参加者と積極的にやり取りしながら解説されていたのが印象的でした。

個人的に気になったのは、レスポンシブWebデザインにおけるデータテーブルの取り扱い。完璧なソリューションは今のところ存在しない、とプレゼンターのHans Hillen氏が言い切っていた点は、自分の見解とも合致します。不完全ながらもレスポンシブに実装する手法を複数紹介されていましたが、いずれもアクセシビリティ的には微妙なところです。中でもdisplayプロパティの値を変更する手法については、支援技術に渡されるセマンティクスが表では無くなってしまうケースがあるため、基本的には避けるべきと私は思いました。