アクセシビリティキャンプ東京 2019参加レポート

アクセシビリティ・エンジニア 小出

2019年4月8日に開催されたイベント、アクセシビリティキャンプ東京 2019 - GAAD発起人と振り返る 「CSUN 2019」に参加してきました。
イベントはセッション1「GAAD発起人インタビュー」、セッション2「CSUN参加者座談会」、セッション3「Q&Aタイム」の3セッション構成となっており、座談会には、当社アクセシビリティ・エンジニアの畠山帆香も登壇し、カンファレンスの様子を切れ味よく伝えていました。
イベント概況は公式スライド資料やTwitterのハッシュタグ#a11ytokyoなどに譲り、Joeさんのインタビューから個人的に注目した内容3点についてまとめます。

新しい技術への好奇心、積極性

Joeさんがアクセシビリティに興味を持つきっかけは、ハンディキャップのある同僚の存在と、加えてその同僚がスクリーンリーダーを利用していたことをあげていました。新しい技術を積極的にキャッチアップしているタイプと自認していたのに、スクリーンリーダーという技術を知らなかった、その技術をひろめようとBlogを書き、その翌年にGAADの初回イベントを開催、というアクティブさとパワフルさを、あらためてご本人の口から聞くことができました。
近年の開発者にとっての新しい手法のひとつにアジャイルがありますが、その手法は多くの開発者の興味を惹くもので、おそらく開発者の8割はアジャイルを知っている状態だろう、それと同じくらいアクセシビリティの必要性と認知度が上がることを期待しているそうです。 要件定義の段階、つまりウェブサイトの根幹を決める段階での対応が必要であることにも触れておられ、同じ考えの当社としては心強く、また嬉しく聞いていました。

高まる訴訟問題への注目度

アクセシビリティ対応を導入する際の大きな障壁のひとつにあげられるのが、アクセシビリティ対応は利益を生むかどうかという命題です。 企業にとって損益は無視できない要素のひとつですが、金銭的にも企業イメージも大きく「損」なう「訴訟」が近年さらに着目されるようになっています。
特にアメリカでは2017年から2018年にかけて3倍近く訴訟件数が増加するなど、内外を問わずグローバル企業にとっては無視できない状況です。
訴訟はアクセシビリティが認知されるきっかけとしては喜ばしくはありませんが、災いならぬ「損」を転じて「益」となすこともできるのではないかとも感じました。訴訟を避けるためにアクセシビリティ対応を考慮する働きがアクセシビリティへの認識を深め、アクセシビリティそのものへのイメージの転換(障害者のみに必要な対応という誤解の払拭、「ごく一部の人間にしか利のない義務」のようなネガティブさが、どのような人にとっても便利さが向上し、情報へアクセスしやすくなる=より広い訴求効果をもたらすなどポジティブなものへ)とつながる可能性があるのではと思うからです。それはイメージではなく事実であることが早く理解されてほしいと思います。

繰り返し情報発信を続ける重要性

訴訟問題にからめて、structured negotiationというキーワードと、その実例としての動画(capitol crowl)を紹介された際、会場の参加者の多くがかなり注目していた様子でした。実は概念そのものはそう新しくはない(...古くもない)のですが、まだまだ周知が十分ではない状態なのだと実感しました。
その世界にいる人間にとっては目新しさのない普通の内容かもしれないが、その世界以外にとっては当たり前ではないということを、やはり忘れがちになっているな、とも自戒しました。
常に新しい層への働きかけを続けることが周知の手堅く、また基本の手段であること、重要な内容は繰り返し発信していく必要があることをあらためて胆に銘じました。
これからも、当社はミツエーリンクスらしい切り口で情報発信を続けていきますのでご期待ください!

参考リンク