日本企業500社を対象にLighthouseのアクセシビリティスコアを計測してみた

アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)

この記事はミツエーリンクス Advent Calendar 2020 - Adventarの6日目の記事です。

先月のCNET Japanの選挙のアクセシビリティーを改善するテクノロジー、その道のりは長いという記事の中で次のような文が目に入りました。

問題があるのは、選挙関連のサイトだけではない。ウェブのアクセシビリティーに取り組んでいるaccessiBeのレポートによると、同社が分析した米国のウェブサイトの98%は、完全なアクセシビリティーを提供していないという。

このレポートにざっと目を通したのですが、どういったページを対象にしているのかがはっきりとは書かれていないのでなんともいえない面はあります(1000万以上のWebページで、うち85%がアメリカとカナダ、残り15%がヨーロッパとアジアという文言は見えます)。また、チェックした手法について事細かに書かれているわけではないため、再現するのは難しそうです。それはさておき、Webアクセシビリティの遵守度合いについてはまだまだなサイトが多数である、というのがこのレポートの主張ではあるでしょう。

ところで、日本企業のWebサイトのアクセシビリティ対応の現状はどうなっているのでしょうか? 少なくとも、筆者はまとまったレポートを目にした記憶がありません。そこで、似たようなかたちでざっくりと現状を探ってみようというのがこの記事の趣旨です。

タイトルにも記載したとおり、測定に当たってはGoogleのLighthouseを用いることにしました。LighthouseはオープンソースでWebの診断を自動で行うツールで、Webの品質向上に役立つツールです。Lighthouse全般がどういったものなのかについては、GoogleによるWebサイトパフォーマンス測定ツール「Lighthouse」入門 | さくらのナレッジなどを参照ください。また、LighthouseのWebアクセシビリティの診断については、Dequeのaxeを採用しています。axeに関する説明は、アクセシビリティBlogの記事GoogleがChromeのデベロッパーツールにDequeのaxeを採用も参照ください。

Lighthouseを採用したのは、0から100までの1刻みのスコアをはじき出すという理由のためです。もちろん、スコアが100だからといってアクセシビリティが完璧というわけではない(あくまで機械でテスト可能な項目をすべてパスしただけである点に十分注意する必要がある)のですが、ツールによる計測により、ツールの使用者の恣意性が紛れ込まないという意味では十分ではないかと考えました。

なお、Lighthouseを実際に動作させるに当たっては、lighthouse-batchで一括で処理しています。

対象とする日本企業については、東京証券取引所の第一部に上場している企業から、東証株価指数のTOPIX 500に指定されている企業500社を選定することにしました。これは、東証一部の時価総額、流動性の高い上位500社となります(公式のPDFによる説明)。上場企業の中でどの企業が対象となるのかはTOPIX(東証株価指数) | 日本取引所グループから区分情報を入手できます。

対象とする企業サイトのURLについては、Wikipediaの各企業のページに記載されているURLを基本としました。つまり、各企業のサイトのトップページです。

こうして計測した結果のグラフと数値テーブルは以下のとおりです(実データもアップロードしてありますので、ご興味のある方はあわせて参照ください)。

Lighthouseの階層別スコアの棒グラフ
スコア サイト数
30-39 1
40-49 7
50-59 22
60-69 62
70-79 117
80-89 157
90-99 136
100 13

Lighthouseで何らかのスコア減点対象が見つかったサイトは、500サイト中487サイトに上ります。accessiBeのレポート風にいってしまえば、日本のTOPIX500トップページの97%は、Lighthouseの機械的チェックにより、Webアクセシビリティに何らかの問題がある、ということができるでしょう。手法が違うため、単純には比較できませんが、Lighthouseで機械チェックをしただけで似たような数字をたたき出してくるあたりは、現状としてはこういうものなんだ、と筆者としては額面通り捉えているところではあります。

しかし一方で、グラフを見てもらえるとわかるとおり、多くのサイトは70台~90台に収まっています。これらのサイトにどれほどの差があるのかまでは確認していませんが、単純にChromeのブラウザ開発者ツールでスコアを出したときに、90~100のスコアであれば、緑色で表示されます。90以上のスコアのページをしきい値とするならば、166サイト、全体の33%は一定のWebアクセシビリティの配慮がなされていると考えることもできそうです。また、スコアが50を切るような相対的に問題が多数あると考えられるページは8サイトにとどまっているのも印象的ではあります。

なお、先月の当社木達によるアクセシビリティBlogの記事Web広告研究会が第8回Webグランプリ アクセシビリティ賞を発表にあるうち、優秀賞に選ばれている2つのページがこの記事の調査対象URLでもあったのですが、どちらのサイトもLighthouseでスコアは100を示していました。この賞のニュースリリースでは審査基準が公表されており、

  • 参加全61サイトを対象に、Webアクセシビリティチェックツール2種を用い、スコア上位20サイトを選出。
  • 二次審査にてWebアクセシビリティ専門家5名が8サイトずつ(1サイトにつき2人の専門家)の審査を行い、順位スコアから上位5サイトを選出。
  • 最終審査にて実際にさまざまな障碍を持つ有識者7人が5サイトをストレスなく情報を取得できるかを基準に審査を行い、順位スコアからグランプリを決定いたしました。

となっています。このような賞を取れるサイトは、Lighthouseでスコア100に近いものを出せることが1つの条件になってくるということはいえそうです。

ということで、ごく簡単にですが、TOPIX500対象企業のWebサイトのトップページをLighthouseのスコアで評価してみました。Lighthouseのスコア90をボーダーとすると、500サイトのトップページのうち、1/3のページは一定のWebアクセシビリティの配慮がなされていると考えられます。裏を返せば、2/3のページはWebアクセシビリティとして一定以上の問題を抱えており、改善の余地があるということができるでしょう。今回は単にスコアの分布を示したに過ぎませんが、例えばどういったサイトが高いスコアを出す傾向にあるのかなど、さらなる分析の余地はあるかもしれません。