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ATAC2004に参加して 〜ウェブにおけるコミュニケーション支援の在りかたを考える〜

2005年1月14日

HCDコンサルティングチーム
岡田 恵子

「理解できる」ように伝えるということ

年に一度開催される「ATACカンファレンス」に今回初めて参加させていただきました。ATACとは、Assistive Technology and Augmentative Communicationの略で、障害者や高齢者の自立を支える上で必要な電子情報支援技術(e-AT)およびコミュニケーション支援技術(AAC)の普及を目的とするものです。カンファレンス開催期間中はセミナーからハンズオンの展示会まで、広く情報交換がおこなわれていました。

カンファレンス参加を通じて、人がコミュニケーションをとるというごく基本的な行為がいかに難しいかを改めて痛感させられました。情報を正しく伝えること、それは伝達手段を問わず、伝えようという気持ちがなければ成り立ちません。伝える相手を理解し、伝えようとする気持ちがあることが第一段階であり、その上で必要に応じて支援技術を有効活用することが大切なのではないでしょうか。

コミュニケーション手段は組み合わせることで効果が上がる

国内総人口の比率にも反映されているように、健常者の人口が障害者の人口を常に上回り、必然的に情報提供者(伝達者)の多くは健常者になります。したがって、多くの情報伝達者は、情報を受け取る側が障害者だとしても、健常者同様に情報は「理解できる」ものと思い込み、その結果「理解できる」から「問題なく伝わっている」と信じてしまう傾向が強いのでないでしょうか。

情報を「理解できる」か否かは、もちろん受け手の情報処理能力による部分も大きいですが、伝達者の「伝えかた」にも大きく左右されると思います。情報の「伝えかた」、あるいは「物事の表現の仕方」はひとつではありません。コミュニケーションというと、どうしても言語を用いてのコミュニケーションに主眼が置かれがちですが、言語を用いないコミュニケーション手段もあり、むしろ非言語(ノンバーバル)コミュニケーション手段のほうが多いといえるのではないでしょうか。言葉のみに依存せず、非言語、視覚による情報提供を併用することで理解度はさらに高まるのです。実際、世界共通言語に近い、ある種ユニバーサルなノンバーバルコミュニケーションも存在することを考えると、より多くの人が「理解できる」ように情報を伝えるためには、複数の伝達手段を併用することが有益であるといえます。

理解度を高める情報の構造化というコミュニケーション支援

例えば、商品名を付けることを例にとったとき、すべての商品名が誰にとっても理解しやすく付けられているとは限りません。もし、何桁にもおよぶ数字と記号で商品名が付けられ、分類されているとしたらどうでしょうか。コミュニケーションをとるということに対してハンディキャップをお持ちのかたをはじめ、障害の種類や程度によっては、このような商品の分類作業は極めて困難なものとなり、各商品名は情報として意味を成さなくなってしまいます。つまり、この時点で情報伝達は成立しなくなってしまっているのです。しかし、もしこのような商品名に誰でも知っているような、果物の名前や動物の名前といった簡単な単語を関連付けたらどうでしょう。それまで数字や記号の羅列に過ぎなかったものが、意味を持った「りんご」であったり、「猫」であったりに変化することで、情報が伝わりやすくなり、より多くの人が「理解できる」ようになるのです。

このように情報を的確に構造化するという配慮は、もちろん健常者の理解度をも高めることにつながります。10桁の数字や記号を覚えるよりは、「りんご」のほうがはるかに覚えやすいからです。障害者への配慮は健常者にとってもプラスとなる、ということも忘れてはいけません。

しかし、情報をまとめるということは想像以上に大変な作業で、情報量が増えれば増えるほど、情報構築という作業は大変になり、同時にその必要性も高まってきます。

ウェブにおけるコミュニケーション支援とは

当たり前のことですが、コミュニケーションにおいて大切なのは双方向性です。つまり、コミュニケーションが成立するためには、伝える立場と、伝えられる立場が必要になります。ATAC2004では、メディアを限定せずに広くコミュニケーションという分野における障害者支援を扱っていたのですが、コミュニケーションにおいては、使用する媒体を問わず、根本となる思想は同一であるといえます。昨今では多くの人にとって日常生活の一部となりつつあるウェブと言うメディアもまた、コミュニケーションの場です。したがって、ウェブをひとつのコミュニケーション手段として認識するとき、情報を伝えようとするサイト提供者は、誰に伝えようとしているのか、そしてどのように伝えれば一番的確に伝わるのか、を考慮する必要があるのです。

先述の「りんご」や「猫」の例は、そのままウェブに応用することができます。わかりやすいラベリング(名前付け)と適切なカテゴライズのよい例だからです。広く理解された単語で、「りんご」は果物、「猫」は動物という明確なカテゴリでそれぞれまとめられています。ウェブにおける情報提供は、どうしても膨大な量の情報を扱うことになります。そのとき、伝える側が情報の受け手であるユーザーを理解しようと努力し、最適な情報構築を検討することで、ユーザーにとって理解しやすい情報提供が可能になります。

ウェブにおけるコミュニケーション支援、つまりアクセシビリティ配慮がそのひとつにあたりますが、というと、どうしても視覚や聴覚による問題のみに注目しがちですが、実際には身体、精神、知能など、さまざまな障害を抱えたかたがいらっしゃるのが現実です。したがって、ウェブ上でユーザーにとって理解しやすい情報提供をするためには、コミュニケーション支援、つまりアクセシビリティ配慮が必要だと判断される場合もあるでしょう。むしろ、ウェブにおいては情報の「受け手」を限定しきれないことから、アクセシビリティ配慮は不可欠な要素となってきます。

今後のウェブコミュニケーション支援の在りかた

今後、ウェブアクセシビリティというコミュニケーション支援はますます重要になってきます。しかし、アクセシビリティ配慮の前に考えなければならないこと、多くの情報提供者が忘れがちな根本的なコミュニケーション論、があることを忘れてはいけません。つまり、「理解できているだろう」という思い込みを少しでもなくし、情報をわかりやすく伝えようと努力することで、コミュニケーションはよりスムースになりますし、情報の受け手も「理解しやすく」なります。その上で少しでも楽に操作できるように配慮してあげるためのコミュニケーション支援、つまりウェブアクセシビリティに配慮してあげることが大切なのです。この機会に少しでも多くのかたが「理解できるように伝える」ということを再度考える時間を持っていただければ幸いです。