2006年6月27日 @media 2006参加報告

Web開発チーム フロントエンド・エンジニア
木達 一仁

国内外を問わず、WebデザインやWeb開発系のイベントに参加し学ばせていただく機会の多い私ですが、先々週は英国ロンドンまで足を運びました。6月15、16の両日、@media 2006という名のカンファレンスに参加したのです。昨年の初開催時には、今年と同様の豪華なスピーカー陣の顔ぶれに惹かれたものの、やむを得ぬ事情により渡英は見送っていました。そういうわけで、個人的に今回は満を持しての参加と相成りました。

2日間にわたるイベントでは、セミナー形式のものとパネルディスカッション形式のものと都合18セッションが催されました。一部の時間帯はホールを二分し異なる内容が同時並行で催されるため、誰しもその全てに参加することは叶いません。日常業務的にはマークアップ言語やスタイルシートに触れることが多いため、基本的にはそれらと強く関連するテーマのセッションを中心に選択、参加しました。

本コラムでは、特に印象に残ったトピックスに的を絞り、皆さんにご紹介したいと思います。

CSS普及の過去・現在・未来

CSSのエキスパートであるEric Meyer氏によるキーノート「A Decade of Style」では、彼がCSSと出会ってから以後10年間にわたる経緯が、豊富なエピソードと共に紹介されました。Web標準の重要性が広く認知されるようになった今となっては、Webコンテンツ実装にCSSを利用することは(程度の差こそあれ)常識化しつつあると思います。しかし過去を振り返れば、それは苦難の歴史であり、また普及啓蒙に邁進してきた世界中の方々の努力の賜物でもあります。

最後にEric氏は、未来に向けて「個人が新たなアイディアを得たとき、それをコミュニティ全体で共有することが重要だ」と述べました。CSSは今なお開発の続けられている現在進行形の技術であり、何がベストプラクティスで何がバッドノウハウかも、絶え間なく議論されています。そうした中から、新しい知見を誰かが得たとして、それを積極的に共有してこそ真の前進が図られる、との力強いメッセージを受け取りました。

正式リリースの近づくIE7

Microsoft社のIEプラットフォームチームに所属しているChris Wilson氏は、「IE7 and Beyond」セッションを通じ、IE7が現行バージョンと比べ何がどれだけ改善されたのか、またIEにおけるWeb標準サポートの将来計画などについて、具体的に紹介しました。ことCSSサポートに関していえば、他のブラウザと比べるまでもなく、いまだ十分では無い事実は否めません。しかしそれでも、同じIEの旧バージョンと比べれば、バグの解消を含め遥かに向上しています。CSSサポートもさることながら、Chris氏の講演然り、IEBlog上でのコミュニケーション然り、ブラウザ開発側とWebデザイナー/開発者側の距離感、あるいはブラウザ開発プロセスの透明化につき、隔世の感を禁じ得ません。

利用は必要最小限に止めるべき「CSSハック」

「The Wonderful World of Bugs」は、ユーザー体験デザイナーにしてWeb標準開発者のAndy Budd氏が行った、スタイルシート作成時にまつわるトラブル解決処方のセッションです。CSSで視覚表現を実装した際、描画結果がブラウザ間で異なったり仮にレイアウトが崩れたからといっても、それが必ずしもブラウザのせいとは限らないことを強調。そのうえで、CSSハック(CSS仕様の解釈の相違やバグの有無を振り分けの条件とし、特定のブラウザに対しスタイルを適用あるいは非適用する手法)の使用はあくまでも最後の手段であり、可能な限り避けるべき、と訴えました。知っているCSSハックの数などではなく、正しく仕様を理解していることのほうがよほど重要であり、またそれこそがトラブルを未然に防ぐ最良の策である、という主張はまったくもってその通りだと思いました。

アクセシビリティを損ねないスタイルシート作成法

私が監修させていただいた翻訳書「Web標準デザインテクニック即戦ワークブック」の著者で、WebデザイナーのDan Cederholm氏は、「Bulletproof Web Design」というコンセプトを同タイトルのセッションで紹介しました。bulletproofという言葉は「防弾の」という意味です。文字サイズを大きく設定されていたり、CSSが無効だったり、あるいは画像が非表示の閲覧環境であっても、またコンテンツが変化した場合においても、しっかりと情報を伝えられるようCSSを活用しよう、というのがDan氏の提案です。環境要因に左右されにくい、堅牢な実装というニュアンスを汲み取るなら、彼がbulletproofという言葉を持ち出した意図も理解できるのではないでしょうか。CSSを単に見た目の制御に使用できさえすれば良いという考え方も一部にはあるかもしれませんが、情報伝達の確実さにもっと目を向けるべき時が来ているのではないか、と感じました。

microformatsが照らす意味的マークアップの重要性

Blog検索で知られるTechnorati社に勤めるエンジニア・Tantek Çelik氏は、自らが中心になって策定を進めているmicroformatsについて講演。「Microformats: Evolving the Web」というテーマでその概要、歴史的経緯、最近の実装状況に至るまでがわかりやすく解説されました。

ちなみにmicroformatsとは、既存の標準技術を活用しつつ、より便利にWeb上で特定の情報を公開・共有するために考案されたフォーマットです。たとえば人やイベントに関連する情報を、従来の(X)HTMLを使いながらその仕様が定義するよりリッチな意味的構造を提供することができます。

大手検索サービスなどは既にこのmicroformatsに注目し、またサポートを進めており、microformatsは本格的な普及に向け新たなステージを迎えつつあると思います。その過程において、これまで以上に意味的マークアップの重要性が高まるのではないかと考え、また期待もしています。

Dave Shea氏への単独インタビュー

@mediaが閉幕した翌日、Webデザイン界に世界的インパクトを与えたcss Zen Gardenを運営していることで知られる著名なデザイナー、Dave Shea氏へのインタビューを宿泊先のホテルで収録しました。

タイポグラフィに関するセッションでの講演と、スタイルシートの運用に関するパネルに参加するため、彼もカナダから@mediaに参加することを知っていたので、あらかじめインタビューを申し入れていたのです。

彼はcss Zen Gardenに投稿された秀逸なデザインの数々を題材に、CSSの使いこなしとWebデザインの原則の双方をバランスよく解説した「The Zen of CSS Design」という書籍を、Web Standards Projectのリーダー・Molly氏と共同執筆しています。

私は現在、その日本語訳の出版に向け監修作業の真っ只中なのですが、ちょうど和訳本が書店の店頭に並ぶかそれより前には、ミツエーリンクスVideocastingのサイト上でインタビューの模様をお届けできる予定です。

Dave氏の名前だけは聞いたことがあるけれど……という方にも、実は既に彼の熱烈なファンだという方にも、お楽しみいただける内容になると思います。公開まで今しばらくお待ちください。

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