2008年8月29日 インタラクションデザイン

マーケティングユニット アートディレクター
片野 範康

8月22日・23日の2日間、「DESIGN IT! Forum 2008」に参加しました。米国アダプティブ・パス社のインタラクションデザイナー Dan Saffer(ダン・サファー)氏を招き、各専門分野のパネリストとともにインタラクションデザインのあり方を考えるという内容でした。

インタラクションデザインとは

インタラクション【interaction】
  1. 相互作用、交互作用、交流、相互の影響、相互関係
  2. 対話

英語の辞書で interaction を引くと、このように書かれています。

フォーラムに参加してみて、“インタラクションデザインとは、多くのデザイナーが普段から意識して表現し続けてきた部分を、きちんと分野として確立したもの”という印象を受けました。デザインを考えるうえで、そのデザインされたものが「どこで」「どのように」「だれが」利用するのかを考えることは非常に重要かつ基礎的なことだと思います。そして、そのデザインされる媒体自体も同じように重要な要素だといえます。

テクノロジーが発達し、人間がある目的を行なうための道具も多種多様になってきました。その道具の機能と人間とを結ぶものが、「デザイン」であり、「インタラクションデザイン」であるような気がしました。

「インタラクションデザイン」は、「デザイン」という定義が多様化されて、そのデザインの核となる部分を定義するために生まれてきた言葉のように感じます。なぜかというと、道具の“使いやすさ”や“分かりやすさ”を決めるのは、道具が人間と触れる、その部分のことだと思われます。その部分が使い手にとって「良い」のか「悪い」のかということが使いやすさや分かりやすさを決めるのだと考えます。

本来、デザインという専門分野では、デザイナーが道具の機能と人間が接する部分を考えてきたのですが、現在では、他業種の方がこの接する部分の制作に参入するようになりました。テクノロジーの発達や表現方法の多様化、表現手段の発達などにより、他業種の方が「デザイン」という領域に容易に参入できる土台がつくられたからです。

本来は、この部分のことを考慮しなくてもよかった人たちが、顧客の要求や、製品の品質向上を求めて、機能自体の使いやすさを追求するようになってきたのだと思われます。この機能自体の中身ではなく、それを見せる「振る舞い」の部分を「インタラクションデザイン」という言葉で代名詞化しているのだと感じます。そしてこれらの「振る舞い」を必要としているのは、広告などといった媒体に限らず、すべての人間が利用する道具なのだと思います。

道具の「振る舞い」が必要な理由

ではなぜ、今、インタラクションデザインなのか?

フォーラムで、クラスメソッド株式会社の横田聡氏が「バックエンドのシステム設計がRIA成功の第一歩」というタイトルの講演を行ないました。

その中で、実際にクラスメソッド社で、バックエンドの構築フローが変化していっていることを解説していただきました。変化の内容は、創設当初は操作画面もエンジニアより作成されていたが、クライアントの要望により、“より使いやすく、分かりやすく”を求められるようになった。そのため現在では「見た目」の部分に携わる人達が多くなってきたということでした。

また、2日目のDan Saffer 氏の話でも、人間対機能の比率が、「many 対 one」の関係から「one 対 many」という関係に変わってきたと述べておりました。

これは、機能が多様化してあふれ出し、一人が複数の機能に触れる機会が多くなったといえます。確かに映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などに見られるように、一台のTVを町内の人たち全員が集って見ていたのが、今では一人が複数のTVを見るということも当たり前の時代です。

さらに、機能自体の発達が消極的になってきたという時代背景もあるように思われます。機能自体の発達が消極的になったとは、メーカー独自の機能というものがなくなってきていることを意味します。つまり、どのメーカーの製品にも同じような機能が搭載され、それほど目立った特徴が見られなくなっており、消費者はどのメーカーの製品を購入しても、最低限の機能は享受できているということです。

このような中で、メーカーがとれる対策として、機能そのものよりも、機能の「使いやすさ」や「分かりやすさ」「見やすさ」という内容での差別化を図り始めたという流れがあります。例えば、携帯電話ではそのことがより顕著に見えてきます。

具体的な「振る舞い」

携帯電話は、かつてハンドバッグくらいの大きさでした。それが技術の発達とともに小さくなり続け、ついには持ち運べる大きさになりました、この時点で“携帯する”という意味が明確に印象づけられました。その後、カメラ機能やインターネット、メールという、現在私たちが使用している機能が付け加えられました。

そして、今ではiPhoneを代表に「使いやすさ」、「見やすさ」「分かりやすさ」といった側面が発達しています。電話をしたりメールを見たりインターネットを利用するために、どのような方法が人間にとって最良なのかが模索されています。

特にiPhoneでは、そのコミュニケーションが指先で成り立っています。今までの概念では、機能を使うために、数字が記入されたボタンを押していましたが、iPhoneでは画面を指先で押したり、指をスライドさせることで成り立っています。これは物理的な動作を、視覚から擬似的に体感させている行為です。ユーザーはあたかも、デジタル的な機能を直接操っているような感覚を覚えると思います。このことで人は今までにない刺激を受けることになります。このようなインターフェイスは、タンジブルインターフェイスと呼ばれています。

それはまさに、機能の「振る舞い」という部分を別の視点から見せることで、“分かりやすく、使いやすい”ものにしています。

Webサイトでの機能の「振る舞い」

では、Webサイトにおいてのインタラクションデザインとは何でしょう? 「お問合わせ」のメールフォームや「資料請求」、「商品購入」などのような情報入力の使いやすさや、ユーザーが求めている情報にたどりつくための情報構造、Flashコンテンツなどの操作性。このように操作性や情報を伝える面などもWebサイトにおけるインタラクションデザインといえます。そのほかに、私はより大きな意味のインタラクションデザインがWebにはあると思います。

フォーラム1日目、株式会社アクシスの宮崎光弘氏は、「デザインニング・エモーショナル・インタラクション」の中で、フォントメーカー「モリサワ」のサイトリニューアルの事例をあげていました。 冒頭、以前のサイトは「モリサワ」らしくなかった、という指摘がありました。確かに、「フォントのモリサワ」に対して一般消費者が抱くイメージとサイトから受けるイメージの間には大きな隔たりがありました。そこを突いての鋭い発言でした。さらにその状況は消費者の期待に応えていないものである、との視点でした。私はその内容に少なからず衝撃を覚えました。デザイナーならだれでも訪れる「モリサワ」のサイトがイメージと異なることは、私自身が強く感じていたことでもあったからです。

そして講演中、宮崎氏はリニューアルに関して「ユーザーが期待していることに応えてあげる必要がある」と述べていました。サービスの本質や企業の本質からは一見かけ離れているWebサイトの見た目ではありますが、しかし、どんなことでもユーザーの期待を裏切る行為は企業にとってのマイナスにつながります。

もちろん、ユーザーが企業に持っているイメージを明確に知るためには、ユーザー調査などで正確な情報を調べる必要があり、明確な答えを割り出すのは難しいでしょう。しかし、ここでいえることは、リニューアルを担当された宮崎氏本人にとって、以前のモリサワのサイトは、“モリサワらしくない”ものだったことです。

Webサイトにおけるインタラクションデザインには、このように消費者が企業に対して持っているエモーショナルな部分を受け止め、期待どおりに伝える役割もあるのだと実感した瞬間でした。

「DESIGN IT! FORUM 2008」に参加して

2日間にわたる長いカンファレンスでしたが、大変有意義な時間が過ごせたと思います。いろいろな分野のパネラーの意見や、会場に来ていた他の参加者とも意見交換などができ勉強になりました。

今後さらに、自分自身もユーザーにとっての“使いやすさ、分かりやすさ”を、“情報を見せる”部分に取り入れ表現していきたいと思いました。

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