2009年3月27日 One Webへの思い新たに

取締役
木達 一仁

日本で3月といえば年度末ゆえの繁忙期にあたりますが、私はつい昨日まで2週間にわたりアメリカへ出張していました。まずAustinで毎年開催されているSouth by Southwest Interactive(SXSWi)に参加し、インタラクティブメディアのトレンドについて学びました。その後Los Angelesに向かい、Technology & Persons with Disabilities Conference(通称「CSUN」)に参加。同カンファレンスでは、当社として3年連続3回目となる発表を行なったほか、多くのWebアクセシビリティに関するセッションに参加しました。そして最後に、Bostonで開催されたW3Cの代表者会議に参加して帰国した次第です。

SXSWi 2009

SXSWiについては、過去に2006年と2007年に参加しており、今年が3度目となります。例年、多くのWebデザイナーや開発者が世界中から集うこともあり、ある意味においては世界最大規模のオフラインミーティングとも呼べる場となっています。今年、私が参加したセッションは以下の通りです。

  • Everything You Know About Web Design Is Wrong
  • Making Web Widgets Accessible: Tools and Techniques
  • Microformats: A Quiet Revolution
  • Connecting Interrelated Design and Development Workflows
  • Web Typography: Quit Bitchin' and Get Your Glyph On
  • Accessible Flash and Flex Applications
  • AJAX Accessibility: An ARIA Duet
  • CSS3: What's Now, What's New and What's Not?
  • Designing Our Way Through Web Forms
  • The Invisible Web and Ubiquitous Computing
  • Browser Wars III: The Platform Wins
  • Wired Antarctica: Bringing Science to the Web
  • 2009 WaSP Annual Meeting

主にはWebのフロントエンド技術やWebアクセシビリティに関するテーマを中心に選択しました。しかし最も印象に残ったセッションは、Webがさらに日常空間へと浸透したときに、どのような利便なり課題が生じるかを論じた「The Invisible Web and Ubiquitous Computing」。その冒頭で紹介されたSixSenseのプロトタイプは、非常に未来的な機能を備えつつも(是非デモ動画(英語)をご覧ください)カメラやプロジェクター、携帯電話といった既存の機器から構成されており、単体のコストが350ドルというのはやや衝撃的ですらありました。

技術の急速な低コスト化を背景に、身の周りのありとあらゆる機器がWebへの入力、ないしWebからの出力機能を備える日がそう遠からず訪れることを想像するに、期待と同じかそれ以上に恐ろしくもあります。同セッションのなかで提示された課題、たとえば個人情報をいかに守るべきかは、単純なトレードオフ以上に複雑かつ困難に感じられたがゆえに、強く印象に残ったように思います。

CSUN 2009

単にセッションに参加して発表を聞くのみならず、講師の立場としても参加したのがこのCSUNカンファレンスです。今年はFlashコンテンツのアクセシビリティをテーマに発表を行いました。既に当日の模様をアクセシビリティBlog「速報:CSUN 2009での発表終了」で紹介しているほか、アクセシビリティエンジニアの辻より詳細な参加報告を後日、掲載する予定です。私の参加したセッションは以下になります。

  • How to Use Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0 on Web Sites
  • A Collaborative Handbook of Best Practices for Web Accessibility
  • Accessible, Usable, Searchable On-line Video
  • The New WCAG 2: Web Accessibility Q and A with the Editors
  • Magic Button: Integrated Standards Validation
  • Internet Explorer 8, ARIA and new Accessibility Features
  • WCAG 2.0 and Microsoft Silverlight 2.0
  • How to Use W3C Guidelines to Achieve Legally Compliant Websites
  • Closing the Gap Between Industry IT Accessibility Standards and Competitive Productivity
  • Web Accessibility Evaluation with WAVE
  • Architecting an Accessible Web 2.0 Widget Framework
  • Mozilla, Firefox, and the Future of Web Accessibility
  • Accessible Media in the Digital Age: Jets, iPods, DTV, Blu-Ray, and More
  • Mobile Devices and Productivity
  • Windows 7: Out of Box Accessibility
  • Building Standards Compliant and Accessible Websites Using Opera
  • Towards a More Accessible Browser
  • Developing Accessible Media Applications for the Web Using Microsoft Silverlight 2.0
  • PDF and Word Accessibility: Making Documents Universally Usable

セッションでは、辻と私の発表もそうでしたが、昨年末にWCAG 2.0が勧告されたのを受けての言及を多く耳にしました。またRIAのアクセシビリティ、具体的にはWAI-ARIAを話題に取り上げたものが昨年同様の傾向として多くあったように感じました。また自分が聞いて回ったセッションのなかにはMicrosoft社による発表が複数あり、同社の取り組みをたいへん力強く感じました。

ちょうどCSUNの開催期間中にInternet Explorer 8の製品版が正式にリリースされたこともあって、力強さ以上にMicrosoft社の勢いを感じました。また、同社の発するメッセージのなかでは「Accessible by Default」というフレーズが印象的でした。特殊な操作や設定を必要とせずとも、デフォルトの状態で一定のアクセシビリティが確保できるようソフトウェアを設計することは、それがブラウザであれCMSの類であれ、今後一層求められる要件だと思います。

W3C AC MTG

W3CのAdvisory Committee Meeting、略して「AC MTG」は年に2回、開催都市を変えて催されます。今年最初のAC MTGの会場は、W3CのホストのひとつでもあるMITでした。参加者はW3C会員の各代表者に限定されているため、内容は非公開であり、本コラムでも紹介をすることはできません。ただし従来とは異なる進行によって、過去のAC MTGとは異なるコミュニケーションを他の代表者と図ることができたのは、個人的には収穫でした。

2週間のアメリカ出張を終えて

3つの都市で趣旨も規模も異なるイベントに参加し、数多くの講演や議論を目にしたり耳にしてきたなかで新たにしたのは、4月から始まる新たな年度の私の重点課題として、One Web実現に向け更に注力したいとの思いです。そもそもOne Webとは何かについては、既に昨年8月にコラム「One WebへのアプローチとR&D本部のミッション」のなかで触れていますので、そちらをご覧ください。

2月の組織改変によって、私が本部長を務めるR&D本部は4チーム体制となりました。Web標準、アクセシビリティ、ユーザビリティ、品質管理、それぞれに専門とする技術をもって全社横断的に業務や種々の活動を展開しています。過去には、R&D本部内にモバイル機器向けのWebサイト構築に特化した「モバイルチーム」の設置を検討していた時期もあったのですが、今ある体制のままでOne Webの実現を目指すことがより良い戦略であるとの確信が抱けました。

上述の4チームの緩やかな連携を通じ、今日までに流通しているモバイル機器からのアクセスはもちろんのこと、真にユビキタスな利活用に耐えうるWebコンテンツ制作やそれに求められる技術を学ぶことでOne Web、ひいてはそれと紐づくビジネス価値の提供を実現させたい、と考えています。

無論、道のりは決して平易なものではないでしょう。コンテンツ側だけでは解決不可能な、Webブラウザやそれを搭載するハードウェア側でなければ解決の難しい課題もあるかと思います。しかしその点においても、同じWorld Wide Webを取り巻くエコシステムの一翼を担う立場から積極的に働きかけ、また協力をし、Webの更なる発展に地道に貢献をしていければと思います。

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