特別寄稿:AI検索時代、日本企業はどのように人と機械の双方に、効果的に情報を届けるのか
Bowen Craggs & Co.CEOScott Payton
2027年を見据え、日本企業は、コーポレートコミュニケーションにおいてますます重要になる2つの目標を達成する必要があります。
第1に、投資家、顧客、パートナー、その他のステークホルダーがGoogleやChatGPTなどのAI検索ツールを使って自社について質問した際に、自社のコントロールが及ばない第三者の情報源ではなく、自社のコンテンツが回答の情報源となるようにすることです。
第2に、ステークホルダーにとって、Webサイトを魅力的な訪問先とし、AI検索の回答だけでは得られない、豊かで意義のある体験を提供することです。
幸いなことに、日本企業には、この2つの目標を同時に達成するために取り組める3つの戦略があります。
- 自社のストーリーを自ら発信する(Own the narrative)
- 人間らしさと信頼感を高める(Amp up authentic humanity)
- 有用なオンライン体験を提供する(Create useful online experiences)
以下に、IR(投資家向け広報)、サステナビリティ、コーポレートコミュニケーションの各分野において、これらの戦略を実践している優れた事例を紹介します。
自社のストーリーを自ら発信する
自社のWebサイトで、自社について十分かつ事実に基づいた情報を伝えなければ、AI検索プラットフォームは、自社でコントロールできない外部の情報源をつなぎ合わせ、別のストーリーを作り上げてしまいます。
そのため、自社の事業やステークホルダーに関わるあらゆるテーマについて、自社のWebサイトを信頼できる情報の中核拠点(“mothership of truth”)とすることが極めて重要です。そのための主なポイントは、次のとおりです。
- 包括的なFAQを用意する:自社についてよくある質問を幅広く取り上げ、明確で根拠に基づいた回答を提供する
- 雑誌記事のような解説コンテンツを公開する:自社の専門分野について、信頼性の高い情報を提供する解説記事を掲載する
- 情報に日付を明記する:時間の経過によって内容が変わる情報には日付を付け、AIプラットフォームと人の双方に、その情報が最新であり、現在も関連性があることを明確に示す
IR(投資家向け広報)分野の事例
Unilever社は、グローバルサイトの年次報告書ページにFAQを掲載しています。これにより、サイトを直接訪れる投資家に役立つだけでなく、AI検索の回答の情報源となる可能性も大幅に高めています。
サステナビリティ分野の事例
Nestlé社のグローバルサイトには、「Ask Nestlé」という専用カテゴリーが設けられています。このカテゴリーでは、同社のサステナビリティに関する方針や取り組みについて、幅広い質問を網羅し、明確で詳細かつ信頼性の高い回答を提供しています。「Ask Nestlé」は、AI検索での可視性を最大化するうえで大きな成果を上げています。また、投資家や顧客など、さまざまな人がWebサイトを訪れた際にも役立っています。
人間らしさと信頼感を高める
人は、組織よりも人を信頼します。ソーシャルメディアへの投稿、ショート動画、ポッドキャスト、社員のストーリーなど、どのような形式であっても、オーディエンスは匿名的な企業メッセージよりも、経営幹部や専門家本人の声を直接聞くことを求めています。
こうした要素は、AI検索においても重要性を増しています。GoogleをはじめとするAIプラットフォームは、本人ならではの視点や独自の専門知識を、より重視するようになっています。
著者名の明示、実体験、経営陣による論評、独自の知見は、人の読者とAIシステムの双方に対して、情報の信頼を得るうえで役立ちます。その結果、好循環が生まれます。つまり、より人間味のあるコンテンツほど、発見され、信頼され、情報源として引用されやすくなるということです。
IR(投資家向け広報)分野の事例
Netflix社は、決算発表に合わせて対話形式のYouTubeインタビューを公開しており、投資家が経営陣の考えや見解に直接触れられるようにしています。
CSR(企業の社会的責任)分野の事例
GSK社は、「Behind the Science」というポッドキャストを開始しました。このポッドキャストでは社内外の専門家が対話し、人々を引きつけるとともに、AI検索にも有用な情報を提供します。
有用なオンライン体験を提供する
AI検索の普及は、多くのWebサイトへの全体的なトラフィックに影響を及ぼしています。一方で、実際にサイトを訪れる人はより長く滞在し、より強い関心を持っていることを示す材料も増えています。Adobeの調査によると、AI経由の訪問者は、AI以外からのトラフィックと比べてエンゲージメントが12%高いことが分かっています。企業は、こうした新たな関心の高まりに応えるため、訪問者を真に引きつける体験を生み出す機能やツールを提供する必要があります。
出典:Adobe Digital Insights, “Quarterly AI Traffic Report,” April 2026.
IR(投資家向け広報)分野の事例
Bosch社は2026年4月、PDF形式の年次報告書を補完するものとして、グローバルWebサイト上で「デジタル年次報告書エクスペリエンス」を公開しました。
このコンテンツでは、インタラクティブなタイムラインやマルチメディア記事をはじめ、Bosch社の最近の業績や今後の戦略に関する豊富なコンテンツを提供しています。
サステナビリティ分野の事例
Eni社は、最新のサステナビリティレポートの主要なポイントを抽出し、人にも機械にも適したHTML形式の要約コンテンツとして公開しています。
これら3つの戦略に関するBowen Craggsのレポート全文は、こちらからダウンロードできます。
https://www.bowencraggs.com/the-index/index-snapshot/
- ※ 訳者注:上記は2026年版の英語でのレポートです。2022年~2025年のレポート抜粋(日本語版)は以下からダウンロード可能です。
企業サイトのコミュニケーショントレンド調査レポート ダウンロード
これらの戦略を自社で実践する方法を、東京で探る
2026年11月、ミツエーリンクスは「コーポレートデジタルコミュニケーションサミット2026」を開催します。本サミットは、Bowen Craggsの最高経営責任者である私と、同僚のCaterina Sorenti(Senior Consultant and Head of Editorial)の訪日に合わせて開催されるものです。
本サミットでは、企業のデジタルコミュニケーションに関する世界の最新トレンドやベストプラクティスをご紹介します。世界的な動向を俯瞰するとともに、日本企業にとって特に重要な以下の3つのテーマに焦点を当てたプログラムを予定しています。
- AI検索
- 投資家向けコミュニケーション(IR)
- サステナビリティに関するコミュニケーション
AI検索が情報収集の環境においてますます重要な役割を果たすようになるなか、企業Webサイトをどのように進化させていくべきかについても、実践的な観点から考察します。
また、本サミットは海外のベストプラクティスを紹介する講演会にとどまりません。参加者は、Bowen Craggsおよびミツエーリンクスの専門家と直接意見を交わし、自社が直面している課題に照らし合わせながら、得られた知見を検討することができます。
さらに、議論を深めたい参加者を対象に、私とCaterina Sorentiによる個別フィードバックセッション(1組あたり5分間)も予定しています。このセッションでは、参加者が特定のWebサイトを指定し、専門家から直接フィードバックを受けることができます。
目指すのは、世界各国の企業が何を実践しているかを理解するだけではありません。より実践的な問い、すなわち「それは自社にとって何を意味するのか、そして次に何をすべきなのか」を考えることです。
個別相談でフィードバックを希望する企業は、2026年10月31日までにお申し込みください。
サミットへの参加登録は、2026年11月10日まで受け付けています。
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