AI時代のレピュテーション:企業のデジタルコミュニケーションはなぜ進化しなければならないのか
海外担当マネージャー 兼 コンサルタントヒラノ ブラウン クリスチャンAIは、ユーザーが企業や組織をどのように見つけ、情報を解釈し、評価するかを変えつつあります。AIを活用したツールやデジタルプラットフォームが、ステークホルダーの目に触れる情報を左右するなかで、企業はどのようにしてレピュテーション(評判)を守り、信頼を維持し、自社の価値を伝えていけばよいのでしょうか。
企業のレピュテーションは、これまでも企業が何を発信し、どのような行動を取るかによって形成されてきました。しかし今日では、情報の拡散や、AIによる情報の提示、誤情報の広がり方も、企業の評判を左右します。AIを活用した検索サービスが顧客、投資家、従業員による企業理解に影響を与えることもあります。
2026年9月16日にロンドンで開催された「Reputation Management & Corporate Communications Conference (レピュテーション・マネジメント&コーポレート・コミュニケーションズ・カンファレンス)」においても、誤情報、危機管理、レピュテーションの測定、AIなどが主要な議題となり、議論を通じて共通するテーマが浮き彫りになりました。それは、レピュテーションを適切な人材・プロセス・テクノロジーに支えられた、経営上の重要課題として管理しなければならないということです。
危機対応から戦略的なレピュテーション・マネジメントへ
Ensure Accuracy By Combatting Incorrect & Malicious Actors & Adapt To The New World Of False Information (誤情報や悪意ある発信者に対抗し、正確性を確保する――偽情報が広がる新たな時代への適応)
本講演で、国際刑事警察機構(INTERPOL)のコミュニケーション部門ディレクター Samuel Heath氏は、信頼性を維持しながら、悪意をもった情報発信に組織がどのように対応すべきかを論じました。同氏は、組織の中核事業に注力し、率直なコミュニケーションを心がけ、「明確かつ簡潔な情報」を提供することが重要だと述べました。
What Makes A Crisis Worse?(危機をさらに悪化させるものとは何か)
本講演では、イギリスの法律事務所SlatefordのChris Scott氏とJess Alden氏が、沈黙や一貫性のないメッセージ、リーダーシップや説明責任の欠如が危機を深刻化させると指摘しました。ステークホルダが何を期待しているのかを把握するとともに、初期の警告サインを見逃さず、確かな根拠と適切な判断に基づいて対応することの重要性を強調しました。
AIを活用したモニタリングは、新たな脅威の兆候を早期に把握するのに役立ちます。しかし、効果的な危機管理には、依然として信頼できる情報、明確な責任分担、そして連携の取れた意思決定が不可欠です。テクノロジーは危機対応を支援できますが、人間による判断や説明責任に取って代わることはできません。
Growing Reputation To Position, Promote & Protect Your Company(企業のポジショニング、プロモーション、そして保護につながるレピュテーションの構築)
レピュテーション・マネジメントは、危機対応だけにとどまるものではありません。本講演では、イギリスの通信大手Vodafone Group Plcのレピュテーション責任者、Steven Shepperson-Smith氏が、レピュテーション・マネジメントによってコーポレート・アフェアーズ部門がいかに戦略的な影響力を高められるかを解説しました。同氏は、「レピュテーションは認識を行動へと変える」と述べています。
その中心的なメッセージは、「リスクを管理するために信頼を築く」ことでした。ステークホルダーの声に耳を傾けることで、企業は問題が深刻化する前に、自社に対する認識や評価の変化を把握できるようになります。
グローバルとローカルを両立するレピュテーション・マネジメント
海外で事業を展開する日本企業には、各国の市場、言語、ステークホルダーの多様性を踏まえたレピュテーション・マネジメントが求められます。ある国で発生したレピュテーション上の問題が、ほかの国や地域における企業への評価にも影響を及ぼす可能性があるため、グローバルで一貫したメッセージを発信すると同時に、各地域の実情に即した対応を行うことが不可欠です。
コーポレートサイトの重要性がこれまで以上に高まる理由
こうしたレピュテーション・マネジメントにおいて、企業自身が管理する信頼できる情報源として重要な役割を担うのが、公式ウェブサイトです。
オーディエンスが企業の情報に触れる経路は、AIが生成する要約や対話型検索、ソーシャルメディア、第三者の情報源などへと広がっており、企業の公式ウェブサイトを訪問する前に、その企業について一定の認識を形成するケースが増えています。AIシステムが情報へのアクセスを仲介するようになるなか、企業は自社のメッセージがどのように伝えられ、理解されるかを、これまで以上にコントロールしにくくなっています。
生成エンジン最適化(GEO)や大規模言語モデル最適化(LLMO)の登場により、企業のデジタル上の情報発信にも新たな視点が求められています。重要なのは、単にAI検索に表示されることではなく、どのような経路で企業の情報に接しても、正確で信頼性が高く、一貫した情報として伝わることです。AIが企業をどのように表現するかを、完全にコントロールすることはできませんが、公式情報を明確かつ信頼性の高い状態に整えることが重要です。
日本企業にとっては、多言語での情報発信も重要です。英語コンテンツの情報量や更新頻度が日本語版に比べて不十分であれば、海外の投資家や顧客、従業員は不完全な理解にとどまる可能性があります。さらに、AIがそれを参照することで、認識のずれが広がる可能性もあります。単なる翻訳ではなく、企業の戦略や取り組み、価値観が各市場で一貫して伝わる情報設計が求められます。
こうした課題は、カンファレンスの参加者によるディスカッション「AI As An Audience: Adapt Your Comms To Interact With The AI Tools Influencing Your Audience’s Views(オーディエンスとしてのAI:人々の認識に影響を与えるAIツールに対応したコミュニケーション戦略)」でも取り上げられました。参加者は、企業の公式ウェブサイトが「最も重要な信頼できる情報源」であると指摘しました。そのうえで、AI検索において自社に関する情報がどのように表示・引用されているかを継続的に確認し、AIが参照できる正確で信頼性の高い情報を整備することの重要性が議論されました。
企業の公式サイトを信頼できる情報源として機能させるためには、掲載する情報だけでなく、その情報をどのように構造化し、提供するかも重要です。コンテンツの構成、ナビゲーション、ページの名称やラベルは、ステークホルダーが必要な情報をどれだけ容易に見つけられるか、また、検索エンジンやAIシステムが情報をどれだけ正確に理解・解釈できるかに影響します。
したがって、企業の公式ウェブサイトは、単なるデジタル版の会社案内にとどまるものではありません。IR(投資家向け広報)、サステナビリティ、採用、ブランドコミュニケーションと連携し、組織全体について一貫性のある情報を提供することで、企業としての信頼性を高め、事業目標の達成を支える役割を果たすべきです。
企業のコミュニケーション機能の将来を見据えた強化
カンファレンスの最後を締めくくったパネルディスカッション「Future-Proof The Comms Role!(コミュニケーション職の未来に備える)」では、Maserati、Bank of England、Autotrader、Royal Mail、HSBCの担当者が、AIの活用や予算の制約があるなかで、コミュニケーション部門が戦略的な影響力を維持し、その価値をどのように示すかについて議論しました。
日本企業が将来を見据えたコミュニケーション体制を構築するには、本社や海外子会社、コミュニケーションなどの専門部門の間の連携が重要です。共通の優先事項と責任体制を明確にし、一貫性のあるデジタル情報を整備することで、レピュテーション上のリスクへの対応と、自社の価値の発信をより効果的に行えるようになります。
次のステップへ:Corporate Digital Communications Summit 2026
これらのテーマについては、2026年11月11日に東京・新宿で開催される「コーポレートデジタルコミュニケーション・サミット2026」において、さらに深く掘り下げていきます。本サミットは、当社が企業デジタルコミュニケーションの調査・評価機関である英国Bowen Craggs社と共同で開催します。
サミットでは、企業ウェブサイト、GEO / LLMO、IR、サステナビリティ、ブランドコミュニケーションなど、幅広いテーマを取り上げます。また、スイスの飲食品大手Nestlé、ドイツの技術大手Bosch、イギリスの日用品・飲食品大手Unileverをはじめとするグローバル企業の事例を通じて、企業のデジタルコミュニケーションにおけるグローバル企業の取り組みやアプローチについて理解を深める機会を提供します。
AI時代において、企業の評判は、企業が何を行い、何を発信するかだけでなく、デジタルプラットフォーム上で自社がどれだけ正確かつ一貫性をもって表現されているかにも左右されます。信頼できる情報を、さまざまな言語や市場において、誰もが信頼できる情報にアクセスできるようにすることは、もはや単なるデジタル戦略上の課題ではありません。それは、信頼を守り、ステークホルダーとの関係を強化し、事業の成長を支えるための重要な基盤です。
Corporate Digital Communications Summit 2026のプログラムをご確認のうえ、ぜひご登録ください。
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