TPAC 2015 現地レポート1

アクセシビリティ・エンジニア 黒澤

私は今、札幌で開催されているTPAC 2015に参加しています。TPACはWorld Wide Web Consortium (W3C)の年次総会にあたるイベントで、10月26日から30日まで開催されています。今年のTPACでは、日本企業も多く参加していることからか、案内の看板にデジタルサイネージが多用されていることが印象的です。

W3C TPAC 2015 Sapporo - World Wide Web Consortium w3.orgTPAC 2015のサイネージ①
ようこそ、札幌へ。Welcome to Sappro 欢迎来到札幌 Bienvenue à SapporoTPAC 2015のサイネージ②

さて、初日の10月26日は主に各Working Groupのミーティングが行われました。この記事ではAccessible Rich Internet Applications Working Group (ARIA WG)のミーティング内容の一部を紹介したいと思います。

ARIA WGは聞きなれない名前かもしれませんが、主にAccessible Rich Internet Applications (ARIA)仕様群の標準化を行うWorking Group(作業部会)です。これまでARIA仕様群はProtocols and Formats Working Group (PF WG)が標準化してきましたが、PF WGはTPAC 2015の直前にARIA WGとAccessible Platform Architectures Working Group (APA WG)に分割されました。TPAC 2015では前半(10月26日・27日)にARIA WGのミーティングが、後半(10月29日・30日)にAPA WGのミーティングが予定されています。なお、 APA WGは他のWorking Groupが検討している仕様などのレビューなどを行うWorking Groupです。

さて、ARIAの中心となる仕様群の標準化では、2016年の勧告化を目指しているARIA 1.1と関連する仕様群(Core Accessibility API Mappings (Core AAM)Accessible Name and Description: Computation and API Mappings (AccName-AAM)など)と、ARIA 1.1には含まれない機能(ARIA 2.0)の検討がなされています。この記事ではARIA 2.0に入るかもしれない提案について紹介したいと思います。

その提案とは要素間の関係をCSSセレクターで表現できるようにしようというものです。現在のARIA仕様では要素間の関係を表すのにid属性値を使っています。例えば、aria-controlsを記述する場合には、次のように、対象要素のid属性値を指定します。

<a href="#tabpanel01" role="tab"
    id="tab01" aria-controls="tabpanel01">タブ</a>
<!-- 略 -->
<div role="tabanel"
    id="tabpanel01" aria-labelldby="tab01">タブパネル</div>

これらの指定をCSSセレクターで行えるようにしようという提案です。ミーティングでは、既に標準化済の属性はid属性値を指定するので、セレクターを指定できる新たな属性が必要だろうか?その場合、標準化済の属性の数だけ新たな属性が追加するのか?(いや、追加したくない)といった話も出ましたが、私はこの提案を興味深く思いました。

というのも、id属性値を使って関連付けする場合、同じマークアップを使いまわす場合でも、数多くの要素に重複なくid属性を指定する必要があります。ですが実際にARIAが使われたページを見るとid属性値が重複していたり、id属性値の指定が誤っている(別の要素のid属性値を指定している、など)ことが見受けられます。一方、CSSセレクターが指定が可能であれば、マークアップの構造が同じ限り、id属性を指定する必要はありません。ARIAでなくとも、HTMLのlabel要素のfor属性とinput要素のid属性を考えると、違いがイメージしやすいと思います。

この提案がARIA 2.0に入るかどうかは何とも言えませんが、アクセシブルなコンテンツをよりシンプルに作れる仕様であってほしいと思います。