進化を続けるWindowsのNarrator

アクセシビリティ・エンジニア 辻

Windowsに標準で搭載されているNarratorというスクリーン・リーダーをご存じでしょうか? Narratorの歴史は古く、なんとWindows 2000が発表された頃からOSとともにインストールされるようになったスクリーン・リーダーなんです。

近年普及しているWindows 10においてはこのNarratorの機能も進化しており、簡単な作業であれば他のスクリーン・リーダーにも遜色なく利用できるものになったと思います。

特に、今年4月にリリースされたWindows 10 (1803)では、WindowsのセーフモードでもNarratorが使用できるようになり、私たちスクリーン・リーダーのユーザーがこれまで操作を諦めざるを得なかったWindowsのセーフモードの操作が可能になりました。

前置きが長くなりましたが、今回は6月14日に公開されたWindows 10 Insider Preview Build 17692で強化されたNarratorの機能についてご紹介します。

キーボードレイアウトの変更

Narratorの読み上げを制御するキーボードコマンドのレイアウトが、他のスクリーン・リーダー利用者にもなじみのあるものに変更されました。 レイアウトの詳細はIntro to New Narrator Keyboard Layout docで紹介されています。

表示されたダイアログの自動読み上げ

Narratorを使用中に新しいダイアログが前面に表示された場合に自動的に読み上げができるようになりました。 例えば、Wordで文書を保存しないで終了しようとすると『Microsoft Word ダイアログ "文書 1" に対する変更を保存しますか?』のようなメッセージが表示されますが、これが自動的に読み上げられるようになったようです。

文字列検索機能の追加

スクリーン・リーダーのユーザーはしばしば、画面上の文字列を検索してその画面に自分が探している情報があるかどうかを確認することがあります。 私はJAWSやNVDAでこの機能に頼ることが多く、Webページで自分が探している情報に素早くアクセスするために使用しています。 Narratorでも、この検索機能が使用できるようになったようです。

オブジェクト一覧の生成

アプリケーションやコンテンツ内で使用されているリンクや見出し、ランドマークの一覧を作成できるようになりました。

スキャンモード内でのテキスト選択機能の強化

スキャンモード内でShiftキーを押してテキストを選択するだけでなく、始点と終点を指定してブロック単位でテキストを選択できるようになりました。 例えば、選択したいテキストの始点でF9を押し、テキストの終点でF10を押すと、2点の間のテキストが選択されます。

スキャンモード内のコントロールで読み上げを停止する機能

スキャンモードはNarratorで画面内を簡単なキー操作で移動する機能で、Edgeではデフォルトで有効になっており、上下のカーソルキーで表示されているページを読み上げることができます。 この機能では、上下カーソルで読み上げ中に操作可能な要素がみつかると、そこで読み上げを停止します。 例えば、複数のリンクがあるパラグラフを読んでいるとき、リンクが出てくると読み上げが停止されます。

これまでは、Windowsである程度高度な作業をするためには、自分でスクリーン・リーダーをインストールする必要がありましたが、標準で搭載されているNarratorでもWindowsを便利に活用できるようになったことが素晴らしいと感じています。 今後のNarratorの進化にも期待したいですね。