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CSUN 2019 2日目レポート


アクセシビリティ・エンジニア 畠山

本日よりセッションが始まります。聴講した一部セッションの印象に残った点についてレポートしたいと思います。

Gray-Box Mobile Accessibility Testing

アプリのアクセシビリティテストをグレーボックス化しようというお話でした。

グレーボックスというのは、空港のセキュリティチェックで考えると、X線を用いて荷物のイメージを画面に映し、中身の確認をするような方法のことです。アプリの場合も、同じようにそのときのアプリのコンテンツを取得し、確認できます。さらに、そのXMLコードをHTML5に変換することで、Webと同様のテストライブラリーを適用し、テストを実施できるということでした。

アプリの検証はOSによる固有の違いなどで個別のテストを組み込む必要があったり、セキュリティの問題からサードパーティーのライブラリーを組み込むことが難しかったりと、さまざまなハードルがあるようですが、このグレーボックステストによりアプリのテストがよりシンプルになることに期待したいところです。

2019 Digital Accessibility Legal Update

本セッションは2018年度からのアップデートだそうです。2018年のサマリーは発表者であるLainey Feingoldさんのサイトに掲載されています。

セッションはまず、なぜアクセシビリティに関する法律があるのかといった内容から始まりました。アクセシビリティを確保するのは、人権を守ることにつながるためであり、人権は人々が参加すること、セキュリティ、プライバシー、情報への権利、そして安全を保障します。アクセシビリティを確保しないことは、これらの人権を損害することなのだとあらためて感じました。

今後注目すべき訴訟や示談の紹介もありました。

など

※リンク先は英語です。

今後はWebサイトのみではなく、モバイルアプリケーション、動画ストリーミング、雇用者向けのサービス、キオスクなどに関連した訴訟が増えていく可能性が高いと考えているとのことでした。Lainey Feingoldさんは訴訟を避けるには、アクセシビリティの文化を浸透させることが重要と話していました。

また、本日13日にEuropean Accessibility Actが通過したそうです。アクセシブルな社会にさらに近づく一歩となったのではないでしょうか。

How to Meet 7 New Success Criteria in WCAG 2.1: Tricks and Tips

WCAG 2.1で新しく追加された基準について、わかりやすく説明するというセッションでした。本セッションの資料は発表者であるDavid MacDonaldさんのブログから確認できます。

このセッションで最も印象に残ったのは、David MacDonaldさんのWAI-ARIAを使用する際の例がとてもわかりやすかったことです。WAI-ARIAは使い方を間違えると、コンテンツが全くアクセシブルではなくなる場合があります。これを小さい子供にお手伝いを頼んだときの様子に例えていました。以下はセッションでの例の意訳です(わかりやすさのため、一部内容を調整しています)。

小さい子供にシチューを一緒に作ろうと誘ったら、よろこんでくれました。子供にスパイスを選ぶようにお願いし、5分ほど席を外しました。その間、その子供がどうするかは想像できますね。戻ってくると、シチューにスパイスがたくさん追加され、辛くなってしまっていました。これと同じように、WAI-ARIAを覚えたばかりの開発者は、WAI-ARIAをいろんなところに使用しすぎる傾向があります。実際には、熟練のフレンチシェフのように、素材の味をうまく引き出す ― Webサイトの場合、HTMLの本来の意味を活かす ― ことが重要です。そして、必要なところにだけ、必要な味(WAI-ARIA)をつけます。そうすることで、シチューはおいしく、Webサイトはアクセシブルになります。

この例に限りませんが、説明をするときにはこのようにわかりやすい例を使うことを心がけたいと思いました。

The Real Cost of Accessibility Complaints and Lawsuits

近年増加している訴訟ですが、訴訟にたどり着く前に、ユーザーは最初にサービス提供者に問い合わせるようです。その問い合わせはクレームから単純な「このサービスを使用できないのですが」というものまでさまざまだと思いますが、内容に問わず、最初の対応がとても重要とのことでした。そのユーザーの身になり、スピード感をもって対応することが求められます。このとき十分な対応がなされないと、訴訟が起こされる場合が多いそうです。

ではどうすれば良いのでしょうか。セッションでは、以下のことが推奨されていました。

など

問い合わせの段階に比べて、訴訟が起きる段階になると、それだけその件にかかる総合的な金額が異なります。なるべく早い段階からアクセシビリティ対応を開始し、問題のないコンテンツを提供することは、ビジネスの面からもメリットがあることがわかります。

Understanding the User Experience Behind the New WCAG 2.1 Requirements

WCAGは基準を提供するため、技術に依存しない、テスト可能にする、といった基準を作成する際のルールが存在します。それにより理解しづらい状態になってしまっています。ですが、どの基準ももともとはコンテンツを使えずに困っているユーザーがいたからこそ基準として設けられています。そのユーザーエクスペリエンスを理解することで、WCAGの各基準の理解が深まります。セッションではWCAG 2.1で新しく追加された基準を取り上げていましたので、そのうちの1つを紹介したいと思います。

ユーザーの中には読字障害などで、コンテンツを読む場合にフォントを変更しているユーザーがいます。実際に調査をしたところ、60%の人はサンセリフ体、40%の人はセリフ体を好んだという結果が出たと発表者のShawn Henryさんは話していました。この時点ですでに、すべてのユーザーにとって読みやすいフォントを指定することが不可能であることがわかります。

このユーザーエクスペリエンスから生まれたのが、1.4.12 Text Spacingという基準です。最初はフォントを変える必要があるので、ユーザーがフォントを変更してもコンテンツや機能が失われないようにする基準を設ければいいと思うかもしれません。ですが、これは果たしてテストできるのでしょうか。どのフォントを指定すれば良いのでしょうか。全く見た目の異なるフォントを指定しても問題が起きない保証はあるのでしょうか。フォントを変える、というだけでは、コンテンツに問題が発生しないことを確認できません。すなわち、この基準はテスト可能とは言えません。そこで検討を重ねて作られたのが、Text Spacingという基準でした。Text Spacingで求められている文字の間隔についての基準を満たすことができれば、フォントを変えても問題ないことがわかったのです。

このように、コンテンツを使えなくて困っているユーザーの経験をもとにしているため、ユーザーエクスペリエンスを理解できれば、基準の理解につながります。

Web Accessibility Initiativeは以下のページでユーザーのさまざまな閲覧環境を動画で紹介しています。ユーザーエクスペリエンスを理解するため、Web Accessibility Perspectives: Explore the Impact and Benefits for Everyoneもあわせてご参照ください。

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