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Japan Accessibility Conference - digital information vol.2参加レポート


アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)

2019年7月20日(土)に開催されたJapan Accessibility Conference digital information vol.2について、アクセシビリティ部からは小出と中村(直)が一般参加者として、中村(精)が登壇者として(Japan Accessibility Conference - digital information vol.2に当社スタッフが登壇)参加しました。また、撮影スタッフとして、南が参加しました。

会場写真

当日の会場の様子=撮影 南

前回に引き続き、UDトークによる情報保障がされていましたが、今回は多数のUDトーク編集スタッフが動員され、より充実した体制となっていました。(前回の開催の様子はJapan Accessibility Conference vol.1 参加レポートをご覧ください)。前回とは異なる点としては、セッションが行われる部屋とは別に休憩できる部屋が設けられ、飲み物等の提供や書籍の展示・販売が行われていただけでなく、充電スペースが用意されていたのが印象的でした。

今回は14のセッションが3つの部屋で並行して行われ、前回よりもさらにセッションの数が増しました。したがいまして、そのすべてのセッションを聞くことは叶わなかったわけですが、小出の参加したセッションとあわせて、参加レポートを記します。

はじめに

運営であるJAC実行委員会から代表して、サイバーエージェントの桝田氏から開会の挨拶がありました。

軸はデジタルな情報に置きたいという意味を込めてDigital Informationというサブタイトルを付けたこと、可視化して加速させたいという思いを込めて第1回を開催したが、アクセシビリティに関わっている人やコミュニティにスポットライトを当てる場を作りたい、エンパワーメントしたい(必要な力を付けたい)と思い第2回を開催するに至ったこと、などが述べられました。

セッション B-1 アクセシビリティとAI

日本マイクロソフト大島氏によるWindows、Officeのアクセシビリティ機能と、AIを用いたアクセシビリティ対応プログラムについての紹介セッション。

Windowsのアクセシビリティ機能の中でも最近は色覚特性に力を入れているそうですが、今回のセッションでは、「簡単操作」(Windowsキー+Uのショートカットで一発オープン!)から、2017年に既にリリースされている「視線制御」をあらためて紹介されていました。

Officeでは、画面全体の中でカーソルがある行などの決まった範囲だけを表示させ、読んでいる箇所に集中できるイマーシブリーダーや、PowerPointで利用可能になったライブキャプションなどが紹介されました。残念ながらライブキャプションはまだ編集はできないとのことですが、字幕を手動で追加しなくてもよいのはなかなか魅力的です。

AIについても完全に新規機能というよりかは、Seeing AIを中心に過去年度から引き続き取り組んでいます、という内容でした(AI for a11yも参照)。Seeing AIアプリはすでにiPhoneで使用できますが、Android用はリリース未定とのことです。また、Seeing AI 2016 Prototype - A Microsoft research projectでの動画のように、Seeing AIに画像を読み上げさせる場合、レスポンスタイムはまだそれなりにかかるとのこと。さらに、サングラスタイプの機器はバッテリーの問題があるため、ハードウェア、ソフトウェアともにまだリリースは先になりそうです。

とはいえ、現在のSeeing AIの対象(文字、画像の内容、色など)を把握し読み上げる能力はなかなかよいなと感じています。いずれは動画のように、あるいはそれ以上の能力で、ユーザーの「視覚」となってくれることを強く期待しています。

セッション D-1 精神・発達障がい者の社会のアクセシビリティ

グリーの特例子会社であるグリービジネスオペレーションズ福田氏のセッション。普段は会社の人事担当者や行政の担当者の前で話すことが多いのだそうで、このような場で話すことは珍しいとのこと。発達障害にスポットライトを当てつつ、障害特性の理解、環境整備、事業貢献についての説明がありました。

環境整備は、使用者による合理的な配慮に通じると思いますが、例えばマッサージチェアが置かれたリフレッシュルームがあるそうで、特段の障害を持たない労働者にとっても、もしあればそれはそれで嬉しいだろうな、という制度も散見されました。

少し脇道にそれましたが、法定雇用率を満たすという目的のために設立されがちな特例子会社において、どうすれば障害者が十全に持っている能力を発揮できるのかと考えることは、インクルーシブであるとも言えると感じました。

セッション B-2 持続可能なアクセシビリティのために―「聞こえる選挙」の事例

ヤフー今野氏のセッション。選挙公報が印刷物をそのままPDFにしたものであったために、スクリーンリーダーで読み上げができなかったことから、サービスの開発に至ったという聞こえる選挙。先日投開票が行われた参議院選挙で2年ぶり3回目となった今回、リニューアルの舞台裏について、技術的な発表を中心に行われました。

セッションの中では、今年5月の公職選挙法改正により、選挙公報について電子データによる提出が可能となったために(総務省|執行経費基準法及び公職選挙法の一部改正についても参照)、読み上げ可能なPDFが一定数出てきているとのことでした。しかし、読み上げ順序が見た目と異なるなど、まだまだ課題があるという分析でした。

将来的には一定の基準を設けて、読み上げ対応のPDFが出そろったと見なせるところでサービスを終了したいとも述べられていましたが、PDFの読み上げ対応は技術的な困難がつきまとうだけに、すぐにはサービス終了にはならないのではないだろうかというのが個人的な感想です。

セッション B-3 サービス運営しながら小さくコツコツ始めるアクセシビリティ改善〜Backlogの事例

ヌーラボ藤田氏と中川氏のセッション。2016年に行われたBacklogのUIリニューアルにより、Webアクセシビリティの観点からは残念な状態になってしまっていたものを、どのようにしてアクセシブルにしていったか、という技術的な発表でした。

セッション中に紹介された事例については、JavaScriptを多用したユーザーインターフェイスでは「あるある」な事例が多数取り上げられており、実際にアクセシビリティ対応を考えてWeb制作を行う人にとっては、かなり参考になるセッションのように感じました。

特にWAI-ARIA対応については、やっている風が一番危ないというコメントがあり、頷くところでもありました。

セッション C-4 企業が真剣にアクセシビリティに取り組む今とその可能性 ーソニーグループの取り組みを通してー

ソニーグローバルソリューションズ須磨氏のセッション。ソニーグループ行動規範の中にアクセシビリティの単語が入っていることがセッションの序盤に取り上げられており、これはWebアクセシビリティを推進する須磨氏の立場からはものすごいこととコメントされていたのが印象に残りました。倫理的価値観としてアクセシビリティが明示されることは、アクセシビリティを推進する立場からすれば、これほど心強いものはないでしょう。

また、セッション中ではさわりだけにとどまりましたが、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』 「アクセシビリティ」動画 - YouTubeの紹介がされました。このレポートを書く前に見ましたが、ユーザーとゲーム開発者がゲームのアクセシビリティについて語っている動画です(日本語字幕あり)。全体にわたって興味深い内容ですが、特に色についての言及は、Webアクセシビリティと相通じるものがあるように見受けられます。

発注側の取り組みとしては、「ソニーグループウェブサイトアクセシビリティポリシー」を定めて、WCAG 2.0 レベルAに適合することを遵守事項として定めていることが紹介されました。このポリシーをもとに発注するものの、Web制作会社のアクセシビリティ対応のスキルに大きなバラツキがあると述べられていたことが印象的でした。

このことは、アクセシビリティ対応を進めることは品質向上につながることであり、ひいてはより多くの案件を獲得するチャンスにつながる、と言い換えることができるのではないでしょうか。また、裏を返せば、業界全体としてまだまだ技術力向上の余地があるのではないかとも感じました。

セッション D-5 Webアクセシビリティのスキルがビジネスへと繋がる時代

当社中村(精)と、コンセント秋山氏のセッション。セッション自体は、当社の取り組み、コンセントの取り組み、両社の共通項と相違点、まとめという順で進められました。

当社は10年来、コンセントは2016年の案件が契機となってWebアクセシビリティに取り組んでいることなどが紹介され、両社ともに専門の部門が組織化されているなどの共通点が挙げられました。

そして「知る」「組む」「言う」「つかむ」が4つのキーワードとして挙げられました。社内でWebアクセシビリティをやりたいのにやれないという声を聞くことがありますが、その現状が当たり前でないことを知る、社内のさまざまなロールの人と組む、社内外に対して言う、できる案件をつかむというような方法で、Webアクセシビリティをビジネスにつなげていけるのではないか、という内容でした。

最後に中村(精)からは、速効性がないからこそ、継続していくことに価値がある、というコメントがありましたが、長年Webアクセシビリティに取り組んでいる当社スタッフだからこそ、説得力のあるものだと感じました。

雑感

Webアクセシビリティに関しては、特に対となる発注側と制作側の双方の話を興味深く聞くことができました。また、広い意味でのアクセシビリティに関わるセッションも聞くことができ、個人的にはとても有意義な1日となりました。

次回も開催される見込みがあるようなので、そのときはまた何らかの形で参加できればと思っています。

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