ライトニングトーク「WCAG 2.2で追加される達成基準」のフォローアップ

取締役 木達

去る5月14日、TechFeed Conference 2022において、「WCAG 2.2で追加される達成基準」と題したライトニングトークを行いました。スライド(PDFファイル)は、以前からアクセシビリティ部で運用していたSlideShareのアカウントにアップロードのうえ共有したのですが、SlideShareの特徴であった内容のテキスト表示機能が、いつの間にか利用できなくなっていました。

別のWebサービスにアップロードし直すことも考えましたが、そもそもPDFのタグ付けがアクセシブルでなかった(なおかつ、その修正のための時間が直近で確保できない)こともあり、以下にスライド内容のテキストを当日の発言内容を一部補いながら記載し、フォローアップとさせていただきます。SlideShareのサービス上や、そこでダウンロードしたPDFにおいて、うまく情報を取得できなかった方は、こちらをご利用いただけたらと思います。

なお講演中も触れましたが、今回ご紹介したWCAG 2.2の内容は、今から1年ほど前に発行された草案に基づきます。今後、勧告候補のステータスに向け、達成基準の数が大幅に増えるといったことは考えにくいですが、細かいところで変更の加わる可能性はありますので、ご注意ください。

  1. WCAG 2.2で追加される達成基準
    • 2022年5月14日 TechFeed Conference 2022
    • 株式会社ミツエーリンクス 木達 一仁
  2. 木達 一仁
  3. Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)
    • W3Cのサブグループ、Web Accessibility Initiative(WAI)が策定
    • アクセシブルなWebコンテンツの要件をまとめたガイドライン
    • 広く利用されているのはWCAG2(WCAG 1.0は廃止済み)
    • 現在、WCAG 2.2を策定中(2022年9月までに勧告予定?)
  4. What We're Working On | Web Accessibility Initiative (WAI) | W3C
    • 2022年9月までに勧告予定、というのが記載されていたページ
  5. Why WCAG 2.2 is still in the oven | Deque
    • 策定動向に詳しいWilco Fiers氏のBlog記事では、既に予定よりも勧告が遅れる可能性が示唆されている
  6. WCAG2の概要
    • 土台となる4原則:知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢
    • 基本的な目標となるのがガイドライン
      • 例:ガイドライン 2.1 キーボード操作可能:すべての機能をキーボードから利用できるようにすること
    • ガイドラインごとに検証可能な達成基準を定義
      • 達成基準ごとに適合レベル(A / AA / AAA)を定義
    • 技術非依存ゆえ付属文書の参照が不可欠な点に注意
      • Understanding WCAG / Techniques for WCAG
  7. WCAG 2.1
    • 2018年6月に勧告
      • 最初の草案は2017年2月に公開
      • 草案→勧告候補→勧告案→勧告まで1年半
    • WCAG 2.0では不十分だった領域をカバー
      • モバイル / 弱視 / 認知・学習障害の各分野を強化
      • 17の達成基準が追加(A:5、AA:7、AAA:5)
    • WCAG 2.0にあった既存の達成基準はそのまま維持
  8. Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1
    • WCAG 2.1は、日本語訳をウェブアクセシビリティ基盤委員会が作成・公開しており、日本語で読むことができる
  9. WCAG 2.2
    • WCAG 2.1に9つの達成基準を新規追加
      • ガイドライン 2.4 ナビゲーション可能に3つ(A:1、AA:1、AAA:1)
      • ガイドライン 2.5 入力モダリティに2つ(AA:2)
      • ガイドライン 3.2 予測可能に2つ(A:1、AA:1)
      • ガイドライン 3.3 入力支援に2つ(A:2)
    • 既存の達成基準の1つにつき適合レベルを変更(AA→A)
  10. Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2
    • WCAG 2.2全文の日本語訳は、まだ草案段階ということもあり、筆者の知る限りは存在しない
  11. What's New in WCAG 2.2 Working Draft
    • WCAG 2.1からの変更点、特に新たに追加される達成基準については、このページがわかりやすい
  12. 新しい達成基準(1)ガイドライン 2.4 ナビゲーション可能
    • 2.4.11 フォーカスの外観(最低限)(適合レベルAA)
      2.4.12 フォーカスの外観(高度)(適合レベルAAA)
      • UIコンポーネントがキーボードフォーカスを受け取った際の要件
        • 色のコントラストや最小サイズなど
    • 2.4.13 改ページのナビゲーション(適合レベルA)
      • ページごとに分割されたコンテンツは、行き来できる機能が必要
  13. 新しい達成基準(2)ガイドライン 2.5 入力モダリティ
    • 2.5.7 ドラッグ操作(適合レベルAA)
      • ドラッグ操作が前提の機能はすべて、ドラッグせずにシングルポインタで完遂できることが必要
    • 2.5.8 ターゲットサイズ(最小)(適合レベルAA)
      • コントロールのタッチ/クリック可能領域は少なくとも 24×24 CSSピクセル以上であることが必要
  14. 新しい達成基準(3)ガイドライン 3.2 予測可能
    • 3.2.6 一貫したヘルプ(適合レベルA)
      • ヘルプ機能を提供する一連のWebページにおいて、ヘルプにアクセスする形式のうち1つは、各Webページで同じ相対的な順序で含まれることが必要
    • 3.2.7 可視コントロール(適合レベルAA)
      • ポインターのホバーやキーボードフォーカスを受け取ることで表示されるUIコンポーネントが満たすべき要件
  15. 新しい達成基準(4)ガイドライン 3.3 入力支援
    • 3.3.7 アクセシブルな認証(適合レベルA)
      • 認知機能テストに依存する認証プロセスの各ステップは、同テストに依存しない認証方法が利用可能か、同テストの完遂を支援するメカニズムが利用可能であることが必要
    • 3.3.8 冗長な入力(適合レベルA)
      • 同一プロセス・同一セッションにおいて、ユーザーが入力または提供済みの情報で、再入力を求める際の要件
  16. WCAG2の達成基準
    WCAG 2.0WCAG 2.1WCAG 2.2
    レベルA253035
    レベルAA132023
    レベルAAA232829
    617887
    • ※1 WCAG 2.2は2021年5月21日付の作業草案に基づく
    • ※2 WCAG 2.2では達成基準2.4.7の適合レベルがAAからAに変更の予定
  17. Issues · w3c/wcag
    • WCAG 2.2については、まだオープンなイシューが多く残されており、遅くとも年内の勧告予定とはいえ予断を許さない
  18. AGWG-2022-05-03 - 03 May 2022
    • 5月3日のAGWGの議事録において、WCAG 2.2のISO標準化に向けた道筋が示された
  19. ISO標準化されるWCAG 2.2 W3C標準(WCAG)、国際標準(ISO/IEC 40500)、国内標準(JIS X 8341-3)それぞれの開発動向と相関を1枚の図にまとめたもの。2008年12月に勧告されたWCAG 2.0は、その後2012年10月にISO/IEC 40500としてISO標準になった。それに対する一致規格として改定されたのが2016年版のJIS規格であることから、今後WCAG 2.2がISO標準化されれば、その内容はいずれJIS規格となる可能性がある
    • WCAG 2.2が先々はJIS規格の内容となるかもしれないので、ぜひ今後にご注目いただきたい
  20. ご静聴ありがとうございました

[ 2022-05-26 追記 ] 【ブクマ推奨】TechFeed Conference「後夜祭」開始!LT動画6本公開!(Web標準・CSS・Webアクセシビリティ) - TechFeedという記事が公開され、そのなかで私のセッション個別の動画が公開されていました。

[ 2022-05-31 追記 ] TechFeed Conference後夜祭と称された活動において、講演書き起こし記事(WCAG 2.2で追加される達成基準(木達 一仁) -- TechFeed Conference 2022講演より - TechFeed)が公開されました。